T)ねぇみんな、クリスマスケーキ買わない?
K)へ?
クリスマスが近付いてきた
ある日のランチで
Tさんが突然そんなことを言い出した。
♡)どういうこと?
T)実はさ、うちの妹がケーキ屋なんだけど…
♡)あ、そういえば!
前にケーキくれたもんね!
K)ああ、思い出した!
M)あのケーキすっごく
美味しかったですよぉー!♡
T)ありがとうw
で、今年のケーキの予約数が
イマイチらしくて…
K)あらら。
T)俺に10個くらい買えって
言ってきやがって…
♡)10個!!
J)あはははw
T)だからこうして周りに
聞いてみてるんだけど…
K)うちは…、すげぇ大量に頼むから
いつも決まったとこに発注してんだよなー
♡)そっか!Kちゃんの教会は
大パーティーだもんね!
海)……。
そういえば私も…
小さい頃に近くの教会のクリスマスに
一度だけ参加したことがあるけど…
ケーキもお料理も美味しかったなぁ…。
♡)私、頼もうかなぁ。
T)マジで!?
♡)うん!今年はみんなで
パーティーしようって話してたから…
2つくらいお願いしたいなっ♡
T)うおおお〜〜!
ありがとうございます!!!
♡)2つじゃ足りないかな…?
3つにしようかな…
T)なんなら4つでも…
M)あはははw
♡)ちょっとみんなに聞いてみるね!
T)ありがとう!!
♡さんは三代目の皆さんと
パーティーするのかな。
楽しそう。
海)私も…家族で食べるから…
1つお願いしてもいいですか?
T)マジで!?
助かる!サンキューー!!
M)え、海璃ちゃん…
クリスマスは家族と、なの?
海)……はい。
実は、うちの両親の30年目の
結婚記念日なんです。
♡)わぁ!すごい!
M)そうなんだ!おめでとう!
♡)30年ってなんだっけ?金婚式??
J)それは50年だよw
♡)あれ…//
J)30年は「真珠婚式」じゃないかな。
M)真珠婚式…??初めて聞いたぁ…
海)Jさんよくご存知ですね!
私も姉に教えてもらって
初めて知ったんですけど…
♡)そっか!美花ちゃんなら知ってるよね!
海)はい。
それで…両親へのプレゼントに
家族みんなで一泊二日の
旅行に行こうってことになって。
K)えー!素敵じゃん!
海)最初は両親二人で行ってもらおうと
思ったんですけど…
一緒に行きたいって言われて。
M)そっかぁ、親孝行だね♡
♡)素敵素敵ーー♡
あ、でも…
美花ちゃんクリスマス休めたの??
海)はい!なんとか休めたそうです!
クリスマスに挙式するカップルも
たくさんいるから
いつもは休めないんだけど
今年はお父さんとお母さんのために
無理して休んだお姉ちゃん。
♡)あ、じゃあ…
瞬はひとりぼっちのクリスマスなのかなw
海)あ、瞬さんも一緒に行きます。
♡)えええっ!!
家族旅行なのに!?
海)はい。
もう家族みたいなものだから、って。
♡)えええ!!
海)うちの両親がぜひ一緒に、って。
♡)……大丈夫?図々しくないかな?汗
海)全然です!大勢の方が楽しいですもん♡
♡)なんか迷惑かけたらごめんね?
K)あははは、瞬なら大丈夫でしょw
M)ということは…、、
Tさんはひとりぼっちですか…?
T)ああ、俺は…高校の同窓会w
M)同窓会ですか?!クリスマスに!?
T)うんw
独り身同士、集まって騒ごうぜーって。
M)独り身…ねぇ…。
J)独り身…ねぇ…。
T)……なんすか!///
MさんとJさんが
Tさんにじとーーーっと視線を送って
Tさんは私をちらっと見て目を逸らした。
海)……///
Tさんと一緒にクリスマスを過ごすなんて…
私には夢のまた夢だもん…。
……でも。
プレゼントだけは渡したくて…
こっそり用意してるんだ。
イブイブの23日に…
どうか無事に渡せますように…!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♡たちは14人でパーティーするらしくて…
いろんな種類を食べたいから、って
結局7号のデカいホールケーキを
3つも頼んでくれた。
海璃は6号を1つ頼んでくれて。
J)Tくーん。
T)はい!
J)俺もケーキ頼んでいい?
4号のやつ。
T)!!!
実はさっきのランチで…
JさんがこそっとMちゃんに耳打ちしてて
その時「ケーキ食べたい?」って
口が動いた気がしたんだよな…。
T)4号ですか?
J)うん。
完全に二人用だよな。
T)誰と食べるんですか?
J)えー、そんなの興味ある?w
T)めっちゃあります!!
J)んー、可愛い女の子w
T)…っ
誰だよ!!
…まさか、まさか、Mちゃんなのか?!
いや、まさかな。
俺の気のせいだろ。
鬼)Tくん、私もケーキ頼んでもいいかしら?
T)えっ!加奈子さんもですか?
鬼)さっき給湯室で♡ちゃんに
ケーキの話を聞いて。
T)おおお…っ
♡、ナイス!ありがとう!!
鬼)甥っ子に買って行ってあげたいのよね。
6号のケーキ、お願いしてもいい?
T)もちろんです!
ありがとうございます!
猿)あらTくん。
ケーキの販売なんて始めたの?
T)あっ、はい…実は。
猿)じゃあ私もお願いしようかしら。
T)えっ!ほんとですか!?
なんてやってるうちに、
どんどん話が広がって。
営業部の女たちもちらほら買ってくれたり
他の部署の人もわざわざ来てくれたり。
一番遠いところだと
システム開発部からわざわざ降りてきて
多田さんが2つも注文してくれた。
T)めっちゃありがたい…。
気付けば注文数は30を超えてて、
俺はすぐに妹に連絡した。
妹『マジで!?兄ちゃんすっげぇ!!
もっと早く頼めば良かった!!』
T『ははははw』
妹『で、兄ちゃんは?食べないの?』
T『ああ、俺は…
同窓会だからいいやー。』
妹『同窓会!?クリスマスに?!』
T『うん。』
妹『一緒にケーキ食べてくれる彼女の
一人や二人、いないわけ?
さみしーー……。』
T『うるせーよ!w』
妹『ま、いーや!
ご注文ありがとうございまーす!
ほんとに感謝!w』
T『おう。』
妹『兄ちゃんも来年までには彼女作って
うちのケーキ注文してよねー♡』
T『はいはい。じゃーな!』
……ったく。
余計なお世話だっつーの。
T)……。
実は…、、
俺はまだ海璃に気持ちを伝えてなくて。
というのも、今月は仕事が忙しすぎて
晩飯もあまり一緒に食えてないんだ。
だって今月は遂に初めて
Jさんを抜けるかもしれないっていう
勝負の月だから!!
多少無理してでも最後までやり抜きたい。
『Tさん、今日も残業ですか?🕖』
あ。海璃からLINEが来た。
……今日は…、、大丈夫かな。
明日の準備も全部終わったし…
久々に一緒に飯食うか。
『今日は帰れるよ。』
そう返事を返して、
海璃のところまで迎えに行った。
海)わっ、来てくれたんですか!?
すみません!///
先)ひゅーひゅーー♡
優しい彼氏だこと〜〜♡
先)仲良く二人で帰るのぉ〜〜?
いや〜〜ん♡
T)……///
周りはもう俺らが付き合ってると思ってるから
割と容赦無く冷やかしてきて
いつも若干気まずい。
海)お、お待たせしましたっ!///
T)おう、じゃあ行くか。
海)お先に失礼します!
先)はーい♡
お疲れさまぁ〜〜♡
先輩たちはニヤニヤしながら
俺たちに手を振ってきた。
T)何作ろっかー。
海)Tさん何が食べたいですか?
T)うーん…、悩む。お前は?
海)久々に一緒に食べれるので
Tさんが食べたいものがいいですっ♡
T)ああ、ごめんな、今月ほんと忙しくて…。
海)あっ、そういう意味じゃありません!///
お仕事が一番大事ですからいいんです!
T)……。
でもきっと、寂しい思いさせてるよなぁ。
海)どうして…撫で撫でですか…?///
T)……はっ
また無意識に海璃の頭を撫でてた!
海)……あ、失敗…、///
T)え…?
海)言わなきゃ良かった、です…///
T)…っ
俺が手を引っ込めたら
海璃は残念そうに小さく俯いた。
……撫で撫で…してほしかったのかな?
T)……///
……家帰ったらもう少ししてやろう。
海)あ、Tさん!
今日はトマトが安いですよ!
T)お!ほんとだ!
海)鶏肉も安いです!
T)じゃあチキンのトマト煮込みとかにする?
海)いいですねっ!♡
それから二人でささっと買い物を済ませて
俺の家に帰ってきて。
こうして並んでキッチンに立つの
久々だなーなんて、しみじみ。
海)やっぱり12月はどこの部署も
忙しそうですよね。
T)そうだなー。
海)Tさんも…身体壊さないでくださいね?
T)大丈夫だよw
サラダを作りながら
心配そうに俺を見上げてくる海璃。
T)今月はさ、ちょっと特別。
海)え?
T)やっとJさんを抜けるかもしれないから。
海)ええっ!すごい!!
T)だろーー?w
海)紅くんが言ってました。
TさんとJさんは雲の上で戦ってるから
地上で戦ってる自分たちは
死んでも追いつけない、って…。
T)あははは、なんだそれw
海)それくらいすごすぎる、って。
T)そっか…w
まぁあいつも一年目にしては
頑張ってるけどなー。
T)俺さ、ずっと前から…
なんとなく感じてるんだけど…
海)はい。
T)Jさんは俺が抜くのを待ってる気が
するんだよね。
海)え…?
T)あの人、ずっと管理職の話断ってて…
それって俺のせいかなーって。
海)どういうことですか?
T)今のままJさんが現場退いたら、
俺は結局抜けないままで。
勝ち逃げみたいで嫌だって
思ってるんじゃないかなーって。
海)……なるほど…!
T)だから実は俺が抜くのを
待ってる気がするんだけど…
でもだからといって
手を抜くような人じゃないからさ。
海)…っ
T)俺が実力で抜かなきゃなんないんだよ。
なんとしても。
そしたらJさんも安心して
上に行けるじゃん?
海)…そんな風に…思ってたんですね…。
T)いや、単純に勝ちたいって気持ちも
強いけどな?w
海)あははは♡
今月、勝てるといいですねっ!
私、応援してますっ!
T)ありがとw
拳をぎゅっと握る海璃が可愛くて
頭を撫でると…
海)はっ、撫で撫でだ…///
って言われて、
また無意識で撫でてることに気付いた。
海)はっ、また言っちゃった…///
T)……///
今度は言われてもやめねぇもん。
海)……///
T)……///
しばらく頭を撫でてると…
……むぎゅ…っ!!
T)どっ!えっ!?はっ!?///
何してんだよお前!///
いきなり海璃が抱きついてきた。
海)……大好きが、爆発しました///
T)だからって抱きつくな///
海)……や、です///
T)////
ほんとにこいつはもう…///
海)ほんとにほんとに…
頑張ってくださいね…。
T)……ん、ありがとう。
海)ほんとにほんとに…
応援してます…。
T)うん…。
海)私は何もできないけど…
T)……そんなことないよ。
海)え…?
……ぎゅ。
今度は俺から抱きしめた。
海)はわぁ……っ///
海璃が変な声を出すから、顔を覗いたら…
赤かった海璃の顔はさらに真っ赤になってて…
海)////
T)////
そんなウルウルした目で見るな!///
T)なんなんだよお前は…///
俺は海璃をグイッと離して
料理を再開した。
海璃は自分からは大胆に近寄って来るのに
俺からいくと真っ赤になって固まるんだよ。
海)もう少し…してほしかったです///
T)どわぁっ!///
後ろからいきなり抱きつくな!
危ねぇだろ!///
海)……Tさん、大好きです///
T)////
ああ、もう、ほんと色々限界。
今月に入ってから仕事のバタバタで
海璃との時間が減ったってのもあるけど…
仕事の状況が状況だから…
海璃に気持ちを伝える余裕もなくて…
仕事が落ち着いたら…
無事結果を出せたら…
その時にちゃんと海璃にも
好きだって言おうかな、なんて
思ってるんだけど…
海)大好き……///
こんな風に可愛く気持ちをぶつけられると、
俺も俺で、色々大変なんだよ。
T)わかったから!離れろ!///
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Tさんが優しい。
なんだか私に心を許してくれてる気がする、
というか…
前より距離が縮まってる気がする、
というか…
最近私は、Tさんのことが大好きすぎて
本当にどうにかなっちゃいそう。
Tさんからスキンシップしてもらえると
それだけで死ぬほど嬉しくて
死ぬほどドキドキして、
もういてもたってもいられなくなっちゃう。
……なんて、浮かれてた私に
バチが当たった。
わかってたのに。
Tさんが好きなのは♡さんだって。
でも…
それを目の当たりにすると、
やっぱり胸が張り裂けそうになるんだ…。
それはいつものランチから戻ってきて
TさんとJさんと別れて
オフィスのドアを開けようとした時だった。
女)♡ちゃんが倒れた…!!
女)誰か…!!
後ろから慌てたような声が聞こえて
振り返ると…
外回りから帰ってきた様子の蒼くんが
倒れた♡さんを抱きかかえてて…
そこにすぐにTさんが駆けつけた。
海)…っ
T)どうした!?
蒼)わかりません。
でも今日ずっと顔色悪かったんで
とりあえず医務室に運びます。
T)…っ、大丈夫か?
蒼)僕が付いてるんで大丈夫ですよ。
T)……わかった、頼む…。
蒼)はい。
Tさんは♡さんを心配そうに見つめてて…
出来ることなら蒼くんと代わりたそうに
見えたんだ。
やっぱりTさんは♡さんが好きなんだ。
いつだってどこだって…
Tさんの「一番」は♡さんなの。
そんなことばかり考えてたら
なんだか泣きたくなって
仕事もはかどらなくて…
海)私、ちょっと♡さん見てきますね。
M)うん、お願い。
少しデスクを離れることにした。
何か買っていこうかなと思ったけど
一旦は♡さんの様子を
見てからにしようと思って
静かに医務室のドアを開けると、
そこには心配そうに寄り添う
蒼くんの姿があった。
海)大丈夫…?
蒼)ああ、海璃…。
うん、ぐっすり眠ってるよ。
寝不足だったのかな?わかんないけど。
海)そっか…。
前から…
もしかして、って思ってたけど…
海)蒼くんって…♡さんのこと、好きなの?
蒼)…っ
私の言葉に、
蒼くんは弾かれたように顔を上げて…
蒼)好きだよ。
なんの迷いもなく、真っ直ぐにそう言った。
蒼)もう何回もフラれてるけどなw
海)えっ…
知らなかった…!
蒼)それでも好き。
海)そう…なんだ…。
蒼)彼氏がいても好き。
海)…っ
蒼)この気持ち、お前ならわかるだろ?w
海)……。
好きな人に好きな人がいても…
いくら自分を見てくれなくても…
そんなんじゃ消せない、強い想いがある。
海)うん…。
蒼)まぁお前の場合は成就したもんなぁ…。
海)…っ
蒼くんは私とTさんが
上手くいったと思ってるんだよね…。
蒼)ちゃんと幸せにしてもらえよー?w
海)……うん。
ごめんね、蒼くん。嘘をついて。
私はまだ、片思いのままなんだよ…。
Tさんが好きなのは…やっぱり♡さんなの。
ずっとずっと、♡さんなの。
海)…っ
どうしたら…
この想いは届くんだろう。
私は綺麗でもないし
スタイルがいいわけでもないし…
♡さんみたいにはなれないってわかってる。
だからせめていつも笑顔でいようとか
仕事を一生懸命やろうとか…
私に出来るなりで頑張ってるつもりだけど…
そんなんじゃダメなんだよね…。
どんなに好きでも…どんなに想っても
叶わない恋があることくらい
わかってるけど…
それでも願ってしまうの。
いつか…
いつか少しでもこの想いが
ほんの少しでもTさんに届いたら…って。
そう願わずにはいられないの。
……私、馬鹿だよね…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ついにJさんを抜けるかと思ったのも束の間。
やっぱりあの人は想定外のところからも
数字を積んできて…
営業の最終日。
Jさんは今日はもうアポは入ってない。
俺は午前中に1件、商談を済ませてきて…
これが決まれば、俺が勝つ。
取れなかったら俺の負け。
即決が欲しくて粘ったけど
どうしても少し考えさせてほしいって言われて
今日の16時まで待つことになった。
T)はぁぁぁ…。
YESかNOか。
答えが出るまでハラハラするけど…
やれることは全部やったし、
とりあえず飯食いに行こう。
M)あれぇ、Tさんだー。
T)あれ、Mちゃん!
遅めの食堂に向かったら
ちょうどMちゃんと遭遇した。
M)今からランチですかぁ?
T)うん。商談長引いちゃって。
Mちゃんは?
M)私は今日の忘年会の準備で
こんな時間になっちゃいましたw
T)じゃあ一緒に食おうよw
M)はい♡
Mちゃんとはいつも一緒だけど
二人でこんな風にランチするのは
初めてだな。
M)Tさんはいつ海璃ちゃんに
告白するんですかぁ?
T)ぶっ…!
席について一口目でいきなりぶっこまれた。
M)あ、トマト落ちましたよ。
T)……///
M)で、いつ告白するんですかぁ?♡
T)……///
今日、無事に1位になれたら。
……って自分の中では決めてるけど。
もしなれなかったらどうすんだ俺。
M)海璃ちゃんのこと好きですよね?
T)…っ
M)大好きですよねぇ?
T)……うん、///
M)早く言ってあげればいいのにぃ〜〜
T)色々あんの、俺も!///
M)まだ先輩が忘れられないとかー?
T)ああ、それはないよ、もう。
M)そうなんだぁ…
T)……でも、それも自分で不思議でw
M)え?
T)あんなにさ、好きだったのに…♡のこと。
ほんと死ぬほど好きだったのに。
M)でもTさん、
先輩のこと好きな時も
海璃ちゃんに頭なでなでしてましたよ。
T)えっ…
M)無意識、って感じで。
そういえば…
たまにそんなこともあったかも…
M)俺は♡にしかしない、とか言いながら
海璃ちゃんにもしてるから
あれぇ?って思ってたんですけど…
きっとあの頃から
Tさんと海璃ちゃんは
結ばれる運命だったんだなぁー♡
T)何それ…///
M)好きならちゃんと好きって
言わないとですよ!
海璃ちゃんのこと
よろしくお願いしますねっ!
T)……ハイ///
M)…って、私も人のこと
言えないんですけど…
T)え?なんて?
M)いえ、なんでもないです!///
そっか…
言われてみると確かに…
俺は♡のこと好きな時から
海璃の事はなんかほっとけなかったもんなぁ…
T)Mちゃんはどうなの?恋愛事情。
M)私は何もないですよぉーー
T)とか言いつつ、ちょっとくらい
なんかはあるでしょ。
M)ないですってー。あはははw
このサラリとしたかわし方、
Jさんにそっくり…!
T)じゃあクリスマスは?
M)一人寂しいクリスマスですよきっとー。
T)ふーん。
いつもの俺ならそうなんだと思ったろうけど…
この間見たあの光景が
なんか頭に残ってんだよなー。
M)Tさん、ご一緒してくれて
ありがとうございましたー♡
T)こちらこそ。ありがとね。
M)ではではー♡
フロアに戻ってきて、別れ際…
T)あ、そーだMちゃん。
ケーキ注文ありがとね。
俺はカマをかけてみた。
M)え、ケーキ…?
T)Jさんと食べるんでしょ?w
M)!!!
俺の言葉に、Mちゃんの顔は
一気に赤くなって…
M)な、えっ…、ど、どうし…っ
えっ…、ど…っ///
もう喋れてないww
T)じゃーねw
俺はそのまま自分の島に帰ってきたけど…
そっか、そうなのか。
俺の「まさか」説は…
現実だったみたい。
でもあのMちゃんがあんなに動揺するとは…
可愛いとこあるじゃんw
T)さて。
うちの会社は明日からもう年末年始休みに入る。
いろいろ整理整頓しておかないと。
J)あ、Tくんおかえりー
T)あ、戻りました。お疲れさまです。
J)遅かったね。
T)そのままランチ行ってました。
J)あ、そうなんだ。
T)可愛い女の子と。
J)可愛い女の子?w
T)Jさんの可愛い女の子です。
J)え?……ああ、Mちゃん?
誰かと思ったよw
あっさり認めたーー!!
T)…っ
J)ん?なに?
T)……いえ。
Mちゃんとは対称的に
全く動じないこの感じ、一体なんだ!?
まぁJさんが慌てるとことか
見たことないけど…
T)付き合って…るんですか…?
J)さぁねーw
あああ〜〜〜
あっさりかわされた〜〜〜
くそーーー!!
J)それより商談どうだったの?
T)……。
J)入りそう?
T)夕方までに返事もらえることに
なってます。
J)ヨミとしては?
T)……五分五分です。
J)えーー、俺までドキドキするなーw
T)俺の方がドキドキですよ!
俺らがそんな話をしてたら
周りも会話に入ってきて…
男)TがここまでJさんと接近戦するの
初めてじゃない?
男)あ、前にもあったじゃん。
一回だけ惜しかった月。
T)あった!抜けると思ったのに
結局抜き返されて!
J)あはははw
男)Jさんはもう人じゃないっすもん。
J)えー?w
男)神の領域っすね。
男)俺からしたらTも神の領域だよw
男)言えてるw
その時だった。
俺の携帯が鳴って…
相手は今朝商談した会社の専務。
T)はい!もしもし!
慌てて電話に出ると、
『Tさん。
お時間いただいてすみませんでした。
Tさんがご提案してくださった内容で
ぜひ、契約させてください。
よろしくお願いします。』
それは飛び上がりたくなるほど嬉しい
YESの返事だった。
T)ありがとうございます!!
こちらこそよろしくお願いします!!
俺の返事で周りが一気に立ち上がって。
電話を終える頃には
俺は営業部の仲間みんなに
周りを囲まれてた。
男)すげぇじゃん!おめでとう!
男)ほんとにおめでとう!!
次々にそんな言葉をもらって…
部)今月はTが1位か。
よくやったな、おめでとう。
部長に肩を叩かれて、
実感が湧いてきて泣きそうになった。
まだ契約書ももらってないし
必死に堪えたけど…
J)あーあ、負けちゃったなーーw
こんな最後の最後に入れてくるなんて
さすがTくんだよw
Jさんは清々しい表情で笑ってて…
J)ほんとによく頑張ったね。
お疲れ様。
その言葉に、堪えてた涙が
ぽろっとこぼれ落ちた。
T)ありがとうございます…っ
契約書、もらってきます!!
俺は急いで鞄を持って、
オフィスを飛び出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
定時になって仕事納めの挨拶をして
みんなで忘年会の会場に向かった。
うちの会社は周りから羨ましがられるくらい
年末年始の休みが長くて。
みんなどことなく浮かれた様子で楽しそう。
Tさんは…
どこにいるのかな。
さっきから探してるけど、姿が見当たらない。
紅)あ、海璃じゃん。お疲れ。
海)紅くん!お疲れさま。
紅)……聞いた?
海)何を??
紅)Tさん。今月1位。
海)…っ、うそ…っ!!
紅)マジ。
ついさっき最後の一件積んで
Jさん抜いた。
海)!!!
すごい!すごい!すごいっ!!
Tさんってば…遂に…!!
紅)今、契約書回収に行ってるから
少し遅れるかもよ。
海)あ、そうなんだ!
どうしよう。
自分のことみたいに嬉しい。
ううん、自分のことより嬉しい!!
だってTさん、すごく頑張ってたもん!
いっぱい練習もして
今月なんていっぱい残業もして…
ほんとにほんとに頑張ってたもん!!
蒼)彼氏すげーじゃんw
海)あ、蒼くん!
蒼)お前と付き合い始めて
仕事も張り切ってんじゃない?
海)……。
それは全然違います…。
私なんて何の力にもなれてないもん。
蒼)いいなぁ、海璃は。
幸せ絶頂期じゃん。
海)……。
蒼)俺にも幸せお裾分けしてよ…w
海)え?
蒼)なんか協力してくんない?
海)え?
蒼)♡さん。ガード固すぎてお手上げ。
海)あ…っ
それは私は何も協力してあげられない。
だって♡さんと登坂さんは
本当にラブラブだもん。
蒼)どんな人なんだろ、彼氏。
会ったことある?
海)……うん。
蒼)え、あんの?!どんな男だった!?
海)すっっっっっごく素敵な人。
蒼)お前……追い討ちかけんなよ。
俺のこと応援する気ねぇだろ…。
海)うん…、ごめん。
蒼)おい!!w
蒼くんは笑いながら
私の頭をコツンと叩いた。
それから時間になって忘年会が始まって
スタートからみんな大盛り上がりで。
出し物は男性陣が先だったんだけど、
内容はこの間のスマスマの完コピだった。
SMAPと三代目の怒涛のサビメドレー。
でも別にモノマネとかじゃないから似てないし
誰が誰役なのかも全然わからなくて、
それでもこれだけ盛り上がれちゃうのが
うちの会社のいいところだよね、なんて
先輩たちが楽しそうに笑ってた。
そのメドレーが終わると
次はいよいよ、Mさんたちの番!!
今回は何をするんだろうって
ドキドキ見守ってたら…
浴衣姿のMさんと♡さんとKさんの3人が
ステージに上がって…
もう会場は大歓声。
みんなカメラを構えて、撮るのに必死で。
司会の人のアナウンスの後、
津軽海峡のイントロが流れると
また大歓声が上がった。
♡さんがこれを歌ってるのは
前にも施設で見たことがあるけど
浴衣を着てるとさらに雰囲気が出て
とっても素敵!!
KさんもMさんも浴衣が似合ってるし、
最後まで歌い終えると
男性陣の盛り上がりは最高潮だった。
海)あっ……
今度は天城越えのイントロがかかった。
二曲やるのかな??
海)!!!
「えええええええ!!!!!!」
今度は会場中にみんなの驚きの声が
響き渡って…
ステージに現れたのは
鬼山さん、猿田さん、多田さんの3人だった!
Mさんたちはもういなくなってて…
浴衣を着た3人があでやかに動きながら
歌い始めて…
その歌の上手さに、
その場は一気に静まり返って。
私ももちろん、ステージに釘付けだった。
浴衣は…
Mさんたちは「可愛い」って感じだったけど…
この3人は本当に大人っぽくてつややかで
色っぽくて深みがあって…
こんなに素敵に演歌を歌い上げるなんて…
すごいっっっ!!!!!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
曲が終わると、会場は割れんばかりの大歓声。
拍手喝采。
女)めっちゃカッコ良かった…///
女)なんかイメージ変わっちゃった…
女)うん!怖い人たちだと思ってたけど…
素敵だったね!
女)うん!すごかった!!
同期の子たちもみんな大興奮してる。
蒼)まさかの3人だったなーーw
紅)な、w
猿田さんなんて…
ただの鬼ババだと思ってたのに…
海)こら!紅くん!
紅)だってまじで怖ぇじゃん、あの人!w
蒼)浴衣マジックだなw
紅)それだなw
ステージに出てた6人は
みんなに囲まれて写真撮影に応じてる。
紅)海璃も出てみれば?こーゆーのw
海)えっ!私は無理だよ!
蒼)なんで。別に音痴じゃないじゃん。
海)そういう問題じゃないよ!
出るなら二人が出ればいいのに。
蒼)はぁ?俺たちー?w
海)うん。歌上手いでしょ。
紅)まぁ上手いけど。
蒼)お前は謙遜しろよw
海)あはははw
同期でよく行くカラオケも
二人が三代目を歌うと
女の子たちが喜んで盛り上がるんだよね。
海)私は人前に出るの苦手だから。
蒼)Tさんが見たいって言ったら?
海)えっ…
蒼)ステージで頑張る海璃見てみたいなー
って。
海)……それは、頑張る///
蒼)あははは!可愛いなw
紅)どんだけ彼氏大好きなんだよw
……彼氏では…ありません。
でも大好きです///
海)私ちょっと外出るね。
蒼)んー。
Tさんの姿を探しながら会場を出たけど
やっぱり見当たらなくて。
まだクライアントのところにいるのかな?
それからトイレを済ませて
リップを塗り直してると、
営業の女の人たちが入ってきて…
鏡越しに目が合うと、きつく睨まれた。
女)化粧直ししたってブスはブスだっつーのw
女)ほんと調子乗んなよ…
海)…っ
女)Tくんってさぁ、
絶対まだ姫のこと好きだよねーw
女)身代わりにされてかわいそーにねー
御愁傷様ーw
海)…っ
女)あ、でもTくんが誰を好きでも
好きだとか言ってたもんねぇ?w
女)言ってた言ってた、ストーカー発言w
女)全然似てないのに必死に姫の真似して
Tくんと付き合えて、良かったねぇ?
おめでと〜〜w
女)あはははw
海)…っ
どうしよう…。
身体が固まって、動けない。
女)姫の身代わりにされてる気分って
どんな感じぃー?w
女)姫とならお似合いだけど
あんたとだったらTくんが勿体無いわw
女)ほんとほんとw
恥ずかしくて一緒に歩けなくない?
女)一緒に歩いてても
カップルに見えないでしょw
女)あははは!兄妹!?ww
海)…っ
私とTさんが釣り合わないことくらい…
私が一番わかってる…。
ぼーっと…
鏡の中の自分を見つめて、
どれくらい経ったろう。
どうして私、泣いてるの?
あの人たちに言われたことに
何一つ言い返せないのは、
自分に自信がないから。
だって…
自信なんて持てるはずがない。
私、何もないもん…。
何も持ってない…。
あるのはTさんを好きな気持ちだけ。
海)…っ
こんなところで一人で泣いて、情けないな。
ハンカチで涙を拭いて、目を閉じて…
静かに深呼吸をして、顔を上げた。
そろそろ戻らなくちゃ…
女)遅かったねーー待ってたのに〜〜!
女)そうだよ〜〜〜
トイレのドアを開けようとしたら、
さっきの人たちの声が聞こえてきた。
女)ねぇねぇ、彼女浮気してたよーw
T)は?
女)Tくんがいない隙に
他の男とベタベタして、ねぇ?
女)そうそう、色目使ってたよ〜〜
T)……。
女)男なら誰でもいいんじゃない?w
女)やめときなよあんな子〜〜w
私はまた心臓がぎゅっと苦しくなって、
ドアを押せなくなった。
T)うるせぇな。
女)え?
T)いちいちうるせぇって言ってんだよ!
女)え、やだー、こわーい…
なんで怒るのぉ?
女)そうだよーー
あの子Tくんの前ではいい子ちゃんだけど
Tくんがいないと他の男と…
T)だからさ、うるせぇって言ってんの。
しつけぇな。
女)…っ
T)お前らにあいつの何がわかんの?
女)……何よ!
Tくんだってほんとはまだ
姫のことが好きなくせに…!
T)は…?
女)姫と似てるからあの子にしただけでしょ?
女)そうだよ!
女)姫にフラれた人たちが
最近あの子に告白してるの、知ってる?w
女)バッカみたいだよねw
あの子なんて所詮、姫のレプリカじゃん。
女)そうだよw
ダンッッ!!
大きな音がして、身体がビクッと震えた。
T)俺があいつを好きで付き合ってんのに
なんか文句あるわけ?
お前らに関係ねぇだろ!
女)…っ、好きじゃないくせに…
女)そうだよ!姫の代わりでしょ!
T)代わりじゃねぇよ!!
女)…っ
T)代わりなんかじゃない。
海璃は海璃だろ。ふざけんな。
これ以上何か言ったらぶっ飛ばすぞ。
女)……やだ…怖い…。
女)ひどいTくん…。
T)俺は海璃が好きなんだよ。
いちいち口出ししてくんな。ほっとけ。
……それから会話は聞こえなくなって…
みんな会場に入ったんだってわかった。
海)…っ
私…ほんとに情けない…最低だよ…。
Tさんにあんな嘘までつかせて…。
海)…ぐす…っ
情けなくて、悔しくて、悲しくて、
また涙が出てきた。
あんな風に庇ってもらって…
Tさんに迷惑かけて。
私の気持ちって、何なんだろう。
誰のプラスにもなってない。
不快に思われて、迷惑をかけて、
……私、何してるのかな…。
暗くて重たい気持ちのまま、
トイレを出て会場に戻ると…
そこにはみんなに囲まれて笑ってる
Tさんがいた。
K)おめでとう!すげぇじゃん!
♡)Tくん本当にお疲れさま!
T)ありがとうw
先)まさかあのJくんを抜いちゃうなんて!
先)ほんとすごいわよTくん!
T)ありがとうございます!
♡)いっぱい頑張ったんだねぇ♡
T)うんw
♡さんと話して…本当に嬉しそう。
だってTさんが欲しいものは
♡さんからの「おめでとう」。
♡さんの笑顔。
私があげられるものなんて、何もない。
ー続ー
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医務室にいるときの海璃ちゃんがランペのoverっていう曲の感じに似てる!「どんなに好きでも想っても叶わないそれでも願ってしまう」みたいなところが歌詞がまったく一緒過ぎてヤバイ!!
ランペの曲まったくわからんけど…(´⊙ω⊙`)そんなのがあるのね!