今日は月イチの土曜出社の日。
午前中に◇ちゃんからLINEが来て
折角のランチのお誘いだったのに、
私はアポで会社にいなくて。
◇ちゃんとはずっと話したいなって
思ってたんだけど…
フロアを覗きに行っても
最近ずっと忙しそうにしてるから
声をかけられなくて、
ランチに誘っても断られるし…
もしかしたら
私と話したくないのかもしれないって
ちょっと遠慮してた。
ほんとは…
「◇ちゃん…
岩ちゃんと別れたいって。」
臣くんにそう言われたあの夜から
ずっと気になってたんだけど…
…もうっ!
どうしてこんな日に私はアポなのー!
折角◇ちゃんから誘ってくれたのに!!
今日の夜は仮歌の仕事があるから
時間取れないし…
うううっ!!
とりあえず会社に戻って
すぐに◇ちゃんのフロアを覗きに行くと…
♡)…っ
またサングラスをかけてる◇ちゃんを見て、
やっぱり何かあったんだって心配になる。
男)あれ、姫ちゃん!!
男)ほんとだ!姫がいる!!
はっ!見つかってしまった!!
慌ててUターンしようとすると、
私に気付いた◇ちゃんが
追いかけてきてくれて…
♡)仕事中にごめんねっ
◇)ううん。
サングラスで目が見えないけど、
元気がない◇ちゃん。
♡)ランチも…行けなくてごめんね。
◇)ううん、全然いいの。
♡)…えっと、今日…っ
夜もお仕事なんだけど…
終わったら、電話してもいい?
◇)…っ
♡)ちょっと遅くなっちゃうかもだけど…
◇)うん…、ありがとう。
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男)次のCMも
登坂くんにお願いしたいと思ってるから!
臣)ありがとうございます。
男)期待してるよ!よろしくね!
臣)はい、よろしくお願いします。
最近増えてきた会食。
今日もスポンサーを見送って
帰りのタクシーに乗り込んだ。
臣)はぁ…疲れた。
接待は気を遣うし好きじゃないけど
ここの寿司は美味かったから
今度♡を連れてきてやろう♪
とか考えながら携帯を開くと、
♡はまだ仕事中っぽい。
結局先に家に着いた俺は
♡のために風呂の準備をして。
臣)仕事すっかーー。
引っ越してからもう一週間。
俺の仕事部屋も無事完成して
結構立派なスタジオが出来上がった。
Nickにもらった音源を開いて
ソロでやりたいイメージを思い浮かべてみる。
Happyな曲もいいけど…
俺は割と切ない世界観の方が好きで。
……あーー、
ここもっと盛り上がり欲しいな。
ここもっと引きずる感じにしたら
どうなるんだろ。
そんなことを頭の中で
あれこれイメージしてると…
コンコン。
ノック音が聞こえて、振り返った。
♡)臣くん…?
臣)ああ、お帰り。
音を止めて立ち上がると
♡が慌てたようにそれを止めた。
♡)いいよいいよ!
お仕事中にごめんね!
臣)何が?
♡)お仕事続けて!
ただいまって言いに来ただけ。
臣)……
何それ。
………むぎゅっ。
俺はすぐに立ち上がって
♡を抱き寄せた。
臣)ぎゅーの方が大事。
♡)ええっ!
当たり前じゃん。
臣)おかえり。
♡)……ただいま…//
臣)レコーディングどうだった?
♡)あ、今日はね、アニメの歌だった!
臣)ふーん。
相変わらず幅広いな。
♡)臣くんもお仕事お疲れさま♡
臣)うん…。
今日会食で行った店、
すげぇ美味かったから今度一緒に行こ。
♡)なんのお店ー?
臣)寿司。
♡)わぁ!食べたいっ!!
臣)うんw
最近デートしてないしな。
臣)風呂できてるから入ってきたら?
♡)えっ!ありがとう!
あ、でも…っ
臣)ん?
♡)私ちょっと約束あるから
臣くん先入っていいよ!
臣)……
約束…?
♡)私、臣くんのあとで入るね♡
臣)……わかった。
じゃあ先に入っちゃおうと思って
部屋を出たけど、
なんか気になって。
リビングに戻ると、
少し開いてる♡の部屋から
話し声が聞こえてきた。
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◇『電話…ありがとう。』
♡『ううん!遅くなってごめんね!』
コールを鳴らすと
すぐに出てくれた◇ちゃん。
◇『…♡ちゃんに…相談…したくて…。』
♡『うんっ!!』
やっぱり声に元気がない。
もしかして…
また一人で泣いてたのかな…?
そんなのやだよっ…
♡『なんでも聞くよっ!!』
そう言ったけど、
電話の向こうで鼻をすする音が聞こえて
やっぱり◇ちゃんは泣いてて。
♡『◇ちゃん…、泣かないで…っ』
私まで泣きそうになる。
◇『ごめん…ね…。』
♡『ううんっ…』
どうしたの…?
何があったの…?
◇『……あたし…ね、』
♡『うん…。』
◇『…剛典…と…
別れるつもりだったの…。』
♡『…っ』
◇ちゃんの悲しそうな声に
胸が痛くなる。
◇『そう決めて…
剛典にも…別れたいって
言ったんだけど…』
♡『うん…。』
◇『やっぱり…全然ダメで…っ』
♡『……』
◇『……好き…なの…っ』
♡『……』
◇ちゃんの声が、掠れてる。
◇『どうして…なのかな…っ』
♡『……』
◇『…優助は…あんなに優しくて…
そばにいてくれて…』
♡『……』
◇『一緒にいたら
大事にしてくれるって、
幸せになれるって、
そう…思ったのに…』
♡『……』
◇『どうして…優助じゃダメなのかな…っ』
♡『……』
◇ちゃん…泣かないで…。
◇『だって…』
♡『……』
◇『剛典と戻ったらって考えたら
すごく苦しかったのっ…』
♡『……』
◇『イメージ…できなかったし…
今でもできない…っ。』
♡『……』
◇『でも優助との未来は想像できたの…。』
♡『……』
◇『だから…あたしは…
優助のことが…好きなんだって…
そう…思ったのに…』
♡『……』
私はただ黙って、
◇ちゃんの話に耳を寄せた。
◇『なんでこんな苦しいのに…
あたしが好きなのは…剛典なの…っ』
♡『…っ』
その言葉に胸がぎゅってなったのは…
私も同じ経験をしたから。
◇『理屈じゃ…ないの…っ』
♡『……』
◇『剛典の顔を見たら…声を聞いたら…
…抱きしめ…られたら…』
♡『…っ』
◇『それだけで、気持ちが…溢れるの…っ』
♡『……』
……私もそうだった。
どうしてこんなに苦しいのに
臣くんじゃなきゃダメなんだろうって
そう思ったけど…
私の身体が、本能が…
臣くんが好きって叫んでた。
◇『なんで…なの…っ、…ひっく…っ』
♡『…っ』
泣いても逃げても、消えない気持ち。
♡『それだけ…好きだから…。』
◇『…っ』
♡『それだけ、好きになっちゃったから…』
◇『……』
♡『嫌いになんて、なれなかった。』
◇『……』
♡『私もそうだったよ。』
◇『…っ』
思い出す、家出してたあの時のこと。
♡『臣くんのこと…最低って思って…
心がぐちゃぐちゃになって…
気持ちに蓋をして、逃げてたけど…』
◇『…っ』
♡『好きな気持ちは、消えなくて。』
◇『……』
だから、苦しかった。
♡『臣くんの過去が許せないなら
Tくんを選んだらいいのにって
そう言われたりもした…。』
◇『……』
♡『◇ちゃんにとっての優助くんとは
少し違うかもしれないけど…』
◇『……』
♡『私も…Tくんと一緒にいると
すごくほっとしたし、安心したし…
元気になれたの。』
◇『……うん。』
♡『Tくんの気持ちがすごく真剣だったから
私もちゃんと考えたし…
Tくんと付き合ったら
過去に嫌な思いしたりすることもないし
きっとすごく幸せなんだろうなって
今の◇ちゃんみたいに
リアルに想像してみたりもしたの。』
◇『うん…。』
♡『でも…何回考えても…
やっぱり答えは一緒で…
臣くんが好きって…』
◇『……』
♡『その気持ちは変わらなかった。』
◇『……』
♡『でも、好きなのに…やっぱり苦しくて…
こんなままで戻れるのかなって…
自信がなくて、不安になった。』
◇『……』
どうしたらいいのか、見えなくなって。
♡『でもね、みんなが教えてくれて
わかったの。』
◇『……』
♡『大事なのは二人で一緒に作っていく
「これから」だって。』
◇『……これ…から…?』
♡『うん。
岩ちゃんが◇ちゃんと出逢って付き合って
変わったように、
◇ちゃんも岩ちゃんと出逢って付き合って
変わったこと、あるでしょ…?』
◇『……』
♡『大切な人と一緒に過ごす大切な時間が
人を成長させるんだ…って。
一緒に笑って、一緒に泣いて
一緒に成長していけばいいんだよ、って。
友達が教えてくれたの。』
◇『…一緒に…?』
♡『うん。』
◇『…っ』
♡『◇ちゃんが今、
岩ちゃんと戻る自信がなくても…
一人で頑張らなきゃいけない
わけじゃなくて…
二人で一緒に頑張って…
二人で一緒に、二人のこれからを
作っていけばいいんじゃないかな。』
◇『……』
♡『一人じゃないから…
好きな人と一緒なら…
頑張れる気がしない?』
◇『…っ』
♡『一緒にまた新しい時間を
積み重ねていって…
二人の未来を作っていくの。』
◇『……』
♡『出来るかどうかじゃなくて、
自分がしたいと思えるかどうか…。
もう一度岩ちゃんのこと、
信じられるかどうかじゃなくて、
信じたいと思えるかどうか…。』
◇『…っ』
♡『私は自信なんてないままだったけど…
臣くんと一緒に頑張りたいって…
臣くんのそばにいたいって、思ったの。』
◇『……』
だから…
だからもし、◇ちゃんもそう思うなら…
岩ちゃんともう一度、寄り添ってほしい。
◇『剛典と一緒に…
頑張ればいいのかな…』
♡『……うんっ』
◇『あたしも…自信なんてないけど…』
♡『……』
◇『剛典が…また側で笑ってくれるなら…
そう思えるかもしれない…っ』
♡『…っ』
◇『…苦しくても…
会いたいって…思うの…っ
……そばに、…いたいって…』
♡『うん…っ』
◇『剛典が泣いてるところなんて…
もう…見たくないから…っ』
♡『うん…っ』
◇『笑ってて…ほしいから…っ』
♡『うん…っ』
◇ちゃんの気持ちを聞きながら、
涙が滲んできた。
いっぱい傷ついて、迷って、立ち止まって。
でもやっぱり、岩ちゃんが好きなんだって
痛いくらいに伝わるから。
◇『なんでこんな…
好きになっちゃったんだろ…っ』
♡『ふふ…っ
ほんとだよね…。』
◇『イイ男なんて…腐るほどいるのに…』
♡『うん。』
◇『剛典なんて…
ただのド変態なのに…っ』
♡『うん。』
◇『…ヤキモチ妬きで…わがままで…
自分勝手で…ガサツで…
おっちょこちょいで…』
♡『うん。』
◇『どうしようもないヤツなのに…
…こんなに…好き…っ』
♡『うん…っ』
それを全部、
岩ちゃんに伝えてあげてほしい。
◇ちゃんの素直な気持ちが…
全部全部…
岩ちゃんに伝わりますように…。
◇『♡ちゃん…
聞いてくれてありがとう…。』
♡『ううんっ!』
◇『なんかすごく…スッキリした…。』
♡『…うん、良かった…。』
◇『ほんとにほんとにありがとう…。』
♡『うんっ…。』
また楽しそうに、幸せそうに
仲良く笑い合う二人が見たいな。
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聞こえて来る内容で
電話の相手が◇ちゃんだってすぐにわかった。
こんなん盗み聞きじゃんって思ったけど…
話が気になって、
ドアの前から動けなくて…
最後、電話が終わりそうな気配に気付いて
俺は慌てて風呂に向かった。
臣)…っ
服を脱いで、シャワーを浴びながらも…
「臣くんの過去が許せないなら
Tくんを選んだらいいのにって
そう言われたりもした…。」
さっきの電話の会話が、頭を離れない。
臣)……
……そりゃ…そうだよな。
そんな風に言う奴がいたって、当たり前で。
でもやっぱり………、凹む。
誰かわかんねぇけど、♡の周りに
俺より他の男の方が♡に相応しいって
そう思った奴がいるわけで…。
臣)……
そんなの俺だってわかってる。
俺なんてほんとどうしようもない
クソ野郎だったわけだし…
あんなピュアな♡と付き合うには
汚れすぎてるって…。
「私も…Tくんと一緒にいると
すごくほっとしたし、安心したし…
元気になれたの。」
♡はそう言ってた。
「Tくんと付き合ったら
過去に嫌な思いしたりすることもないし
きっとすごく幸せなんだろうなって
今の◇ちゃんみたいに
リアルに想像してみたりもしたの。」
あの言葉も、結構刺さった。
臣)……
俺と離れてる間に…
そんなことも考えたりしてたんだ、って…。
自業自得なんだけど…
それはわかってるんだけど…
♡が一瞬でも、他の男との未来を
想像したりしたんだって思ったら…
すげぇショックで。
臣)……はぁ…。
俺だって…
ハルくんみたいに小さい時から
♡に出会えてたら…
アホなこと繰り返したりしないで…
ずっと♡だけを大事にしたのに。
そしたら♡を泣かせるような過去だって
なかったはずなのに。
……って、俺何言ってんだろ。
他力本願かよ…情けねぇ。
臣)はぁ…。
「まぁせいぜい捨てられないようにね〜」
ふと薔薇男の言葉が、頭をよぎった。
「あの姫の相手がこんな男かよ〜
とか思われないように、男磨いてね?
姫のイメージ落とさないでよね。」
臣)…っ
思い出してもムカつく。
ムカつくけど……、でも…
あいつが言ってることは正しい。
臣)……
こんな考え、傲慢かもしれないけど…
いつか♡と結婚する時に
俺は♡の周りの人たちみんなに
認めてもらいたいし、祝福されたい。
あんな奴を選んだのかよとか…
ほんとに幸せになれんのかよとか…
誰にもそんな風に思われたくない。
胸を張って、♡の隣に立ちたいし
♡には俺しかいないんだって…
全員からそんな風に思ってもらえるくらい、
あいつに相応しい男になりたい。
臣)……っ
♡が俺を好きだって言ってくれてるんだから…
俺を選んでくれたんだから…
俺、絶対もっとイイ男になるから。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◇ちゃんとの電話を切って
リビングに戻ると
お風呂上がりの臣くんが戻ってきた。
♡)臣くんっ!!
臣)ん…?
♡)あのねっ!聞いてっ!!
早く報告したかった。◇ちゃんのこと。
♡)◇ちゃんねっ、
やっぱり岩ちゃんのことが好きって!
臣)……
♡)良かったよぉぉぉ!!
臣)……うん。
臣くんは優しく笑って
私の頭を撫でてくれたけど…
なんだかリアクションが薄い。
♡)嬉しくないの…?
臣)嬉しいよ…?
♡)……
じゃあどうして元気ないのかな…。
♡)どうか…したの…?
臣)いや…?
♡)……
なんか…
臣くんが変だ…っ!!
むぎゅぅぅっ!!
臣)ぐえっっ
お風呂上がりのほかほか臣くんに
めいっぱい抱きついた。
臣)なに!!
♡)…っ
離れないもんっ。
臣)どーした…?
♡)……
わかんないけど…
ぎゅってしたくなった。
♡)……臣くん…、好きだよ?
臣)……
♡)大好き…。
臣)…ありがと…。
◇ちゃんと色々話してたら…
改めて思ったの。
♡)臣くんが今そばにいてくれて…
いつも笑ってくれてて…
臣)……
♡)一緒にいると楽しくて…
私、いっぱい幸せ。
臣)……
もう何度も伝えてるけど…
しつこいかもしれないけど…
でも、何度だって言いたい。
♡)本当にね、大大大好きなのっ♡
臣)…っ
そっと離れて背伸びをして、
臣くんにチュッてキスをしたら
やっと臣くんが笑ってくれた。
臣)ふは…っw
♡)えへへ♡
ほら、臣くんが笑ってくれるだけで
こんなに嬉しくなる。
♡)大好き…♡
臣くんの腰に腕を回したら
臣くんも私を抱き寄せてくれて…
チュッ。
重なる唇から、幸せな音。
♡)えへへ、もっかい♡
臣)ん…♡
チュッ。
♡)えへへへ♡
やっぱり、幸せ。
臣)……大好き。
♡)…っ
ぎゅって抱きしめられて、
臣)ほんとに大好きだよ…。
臣くんの優しい声が、耳元に落ちてくる。
♡)////
胸がきゅぅってなって、
好きな気持ちがまたあふれてくる。
♡)…イノシシになりそう…///
臣)あはっw
いいよ?いくらでもどうぞ。
♡)ううう〜〜っ///
臣くんっ!!!///
臣)はいはい♡
ほんとにほんとに大好きなの。
これからもいっぱい…
ぎゅってしてチュッてしてね。
ずっとずっと…そばにいてね。
ーendー
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♡ちゃん成長した!!!
なんともいいアシスト
それにしても2人とも
ほんとに辛すぎる恋愛を。。。笑
三代目だから、あのビジュアルで
この物語の中のキャラだから
やり直そうと思えるやつですね(笑)
現実のそこらへんの男どもがしてたら
秒で捨てますねw
その通り!!!!。゚(゚^∀^゚)゚。
私も即ポイ捨てする!!ww
二人でこれからを作って行けばいい。
♡ちゃんがすごく頼もしく感じてしまった。♡ちゃんはふわふわしたお姫様ってイメージが強いけど、ちゃんと芯のある子なんだなぁ〜。臣君、♡ちゃんを大事にしてあげてね(≧∇≦*)
ちゃんと自分の経験を糧にしてる♡ちゃんであった(❁´ω`❁)