「まぁ元気やって言うてんねやったら
少し様子見てもええと思うけど…」
「一週間ぐらい経っても同じ感じなら
会いに行ってみれば?」
みんなにそう言われて。
別に連絡が全く取れないわけじゃないから
そうすることにした。
でも…
LINEは返事が来るのに
電話に出てくれないっていうのが
全然わかんなくて…
川で会えることも全くなくなって…
寂しくて、会いたくて。
俺の気持ちは募るばかりだった。
強引なことして嫌われたくないから
忙しいって言うなら俺は待つけど…
せめて声を聞きたい。
元気な姿を見たい。
そう思って、こっそり会いに行こうか
迷い始めて…
臣)明日現地行く前に
一緒に買いにいく?
隆)あーー……、えっと…
臣)あ、都合悪ぃんなら俺買っとくけど。
隆)うーん……
臣)なんだよ、どっちだよw
隆)えっと……、うーん……
臣)ああ、もういいわ、俺一人で行くw
隆)……
土曜日、サマンサのイベント前。
少し時間があるから
俺は思いきって会いに行くことにした。
会いに行くっていうか、
こっそり見に行こうかなって。
隆)……
♧が働いてる保育園は
土曜日もやってるみたいで…
親子が次々に登園してくる。
子)じゃあねっ、ママばいばーい♡
母)行ってらっしゃい♡
子)ママぁっ!
かえったらあそんでね♡
母)はいはい。
へへ、可愛いな…♡
いろんな子供がいる。
子)じんせいっいちどきりっ
どりっ!つかみたいからいまっ!
ふぅっ!ふぅっ!
隆)!!!
今の…俺たちの歌だよな…?
そういえば…
子供たちがこれで踊ってるって
♧が言ってたっけ…
母)まーくん、どりっ、じゃなくて
Dream!でしょ!
子)どりっ!
母)Dream!
子)どり……
隆)……
お母さん…発音良すぎでしょ…。
母)あ、こら!
こんなところで踊らないの!
子)ふぅっ!ふぅっ!
母)ほら、行くわよ!
子)ふぅっ!ふぅっ!
ぷぷ…可愛い……ww
女)ちょっと…何あの人…
女)さっきからあそこにいるのよ…
ん…?
子)ママぁ!りゅーじがいるよっ!
母)は?!!
隆)!!!
バレた!??
りゅうじって、俺!??
子)ほらぁ、みてぇ!
隆)!!!
小さな女の子が、間違いなく俺を指差してる。
ヤバい!!!
母)葵?何言ってるの?
毎日、本物の隆二見せてるでしょ?
葵)りゅーじぃ!
母)あれはただのおじさん。
ただのおじさん!??
母)ヒゲが生えてたら
誰でも隆二って言うんだから、もうっ。
あの…、ええと…、
葵)りゅーじだよぉ!!
母)指差すのやめなさい!
葵)りゅーじ……
母)本物の隆二はもっとカッコイイの!
葵)…っ
母)いーい?葵。
ああいうおじさんにお菓子もらったり
ついていっちゃダメだからね?
葵)……あい。
あの…
全部聞こえてるんですが……
子)…りゅーじ……
うん…俺…隆二だよ。
本物だよ…。
でも…お母さんに…
変なおじさんだと思われちゃったみたい…
ごめんね、あおいちゃん…。
女の子は名残惜しそうに俺を見ながら
手を引かれて保育園に入っていった。
女)ほら、まだ見てる…!
女)怪しすぎるわ…!!
ん…?
女)やだ!こっち見た!!
女)ひっ……
まさか…俺のこと…?
女)園長先生呼んできて!
女)はいっ!!
どええ?!!
隆)…っ
不審者扱いされた俺は
慌ててその場を立ち去った。
……しょぼん…。
怪しすぎないように
帽子とサングラスだけにして…
マスクはしないで行ったのにな…。
肝心の♧は見つけられなかったし。
俺はその日は諦めて、
そのまま仕事に向かった。
___それから三日後。
久しぶりのオフ。
今度こそ♧を見つけるぞ!!
俺は意気込んで家を出た。
前回怪しまれたから、
今回はサングラスなし!
帽子とマスクだけ!
一目見るだけでもいいんだ。
心配で心配で…仕方ないから…
元気に働いてる姿が見られれば、それで。
母)じゃあよろしくお願いします。
子)ママばいばーい!
今日も子供たちがいっぱい。
葵)ママぁ!きょうはおうちかえったら
ぶるーいんぱくとみようねっ♡
母)見る見る!隆二〜〜♡
はっ!!
あの親子は前回の…!!
葵)でもパパがまたもんくいうね。
母)いいのよ、ほっときゃ。
葵)パパ、やきもちかなぁ?
母)しかたないの。
ママが一番好きなのは隆二だから。
葵)そうだよねっ!
パパよりすきなんだもんねっ!
母)そうよ〜〜〜♡♡
隆)……
俺の…ファンだったんすか…。
葵)あっ!またりゅーじっ!!
母)え?
隆)!!!
やべっ!!
母)こんなとこにいるわけないでしょw
葵)いたもんっ!!
母)どうせまた変なおじさんよ。
気をつけなさいよ、葵。
隆)……
変な…おじさんです、ハイ。
そのまま木の陰から
登園してくる親子達の姿を覗き見て…
保育園の先生をチェックしてみるけど
今日も♧はいない。
隆)なんでだろ…。
中にいるのかな?
出てきてくれないかな…。
しばらくすると、登園時間も過ぎたみたいで
通りは静かになった。
隆)……
今度は保育園の周りを
ぐるりと一周してみて。
中を覗いてみるけど、♧っぽい人はいない。
……うーん。
女)あっ!!
ん?
女)またあの男!!
女)ほんとだ!!
隆)えっ…
振り向くと
女の先生が二人、俺のことを見てて…
一人なんて箒を頭の上にあげて戦闘体制!
隆)ちょ、ちょっ……
女)なんなんですかあなた!この間から!!
隆)待ってください!
女)子供たちに何かしようなんて
許しませんよ!!
隆)違います!!
とりあえずその箒を下ろしてくれ!汗
女)どこから見ても怪しい!!
園長先生呼んできて!
女)はいっ!!
隆)怪しい者じゃないです!!
俺は慌てて帽子とマスクを外した。
隆)ええと…
女)!!!
女)!!!
隆)不審者とか…変態じゃなくて…
女)今市隆二!!!!
二人の声が、重なった。
隆)ええと…、ハイ。
俺が頭を下げると
さっきまで殺気立ってた二人は
いきなり抱き合って黄色い声をあげた。
女)うそっ!!なに?!///
女)何かのドッキリですか!?///
女)どうしよう!本物?!///
女)本物ですよぉ!!///
隆)あの……
ウロウロしててすみませんでした。
俺がもう一度頭を下げると、
女)いくらでもウロウロしてください!///
女)なんなら中へどうぞ!///
女)きゃーー!///
園長先生!!///
隆)いやっ!あのっ!!!
園長先生は呼ばないで!!汗
隆)えっと、あの、
♧先生は今日…いますか?
女)えっ…
女)♧先生は…今日は施設の方ですよ?
隆)あっ!そうなんだ!!
そうか!
こっちじゃないんだ!
隆)ええと…ありがとうございました。
女)……
女)……
また、見られてる…。
そうだよな、怪しいよな。
隆)ええと…友達なんです。
取り繕うようにそう言ったのが、失敗だった。
女)友達?!!
女)♧先生と!??///
女)ちょ、どういうこと?!
女)♧先生ってばそんなこと一言も…!!
隆)あの…、ええと…
どうしよう。
でも…
早くこの場を去りたい。
隆)内緒にしておいてください♡
誤魔化すように笑ってそう言うと、
女)……ハイ///
女)内緒に…します…///
二人がそう言ってくれたから
俺はそのまま隣の施設に向かった。
隆)……ふぅ…。
そうか。
今日は保育園じゃなかったんだ。
そうだよな。
半々で働いてるって前に言ってたもんな。
盲点だった。
エプロンをした保母さん姿の♧、
ちょっとだけ楽しみにしてたんだけどな。
隆)……
ここか。
玄関はオープンで…
中が少し見えるけど…
人の姿は見えない。
隆)うーん……
外にいたり、しないかな?
そう思って、建物の横をチラッと見てみた。
隆)あ、こっちは庭なのかな。
少し歩いて進むと、
花壇の間から降り注ぐ、眩しい水のシャワー。
陽の光を受けて、キラキラ綺麗で。
花に水やりをしていたのは…
隆)あ!!!
♧だった。
♧)…っ
♧は、俺の声に驚いて
ホースをその手から落として…
思わず声を出しちゃった俺は
今更隠れられない。
仕方なく声をかけようと近付くと…
♧)いやぁっ!!!
……え!?
♧)…っ
♧は怯えたような目で俺を見て、
後ずさりした。
なん…で…
♧)いやっ!来ないで…っ!!
♧は泣きそうな声でそう叫んで、
俺に背を向けて走り出した。
隆)え、ちょ…っ
慌ててその背中を追いかけるけど…
♧)来ないで!!いやぁぁっ!!!
♧の悲鳴に、他の職員さんが
慌てたように集まってきて。
男)どうした♧ちゃん!!!
女)何があったの!?!
♧)はぁっ、はぁっ…
隆)…っ
なんで…
なんでそんなに怯えんの…?
女)なんなのあなた!!!
この子に何したの!!
隆)えっ……
男)変質者だ!警察を呼ぼう!!
隆)ちょっと待ってください!!!
その言葉に
俺は今の自分の姿を思い出して
また慌てて帽子とマスクに手をかけた。
でも…
♧)……りゅ…じ…くん…?
それより前に、
♧のか細い声が…俺を呼んでくれた。
♧)りゅー…じ…くん…
隆)うん。
♧)…っ
隆)こんな格好で…驚かせてごめん…。
俺が帽子とマスクを外すと、
♧は目に溜まっていた涙を
ポロポロと地面に落として。
そのままふらっとよろめいたから、
隆)♧…っ!!
俺は慌てて駆け寄って、
♧の身体を支えた。
隆)大丈夫…?!
♧)…っ
隆)♧…?
♧)…っ
隆)♧…?
♧)…りゅ…じ…くっ……
ふぇ…ぇ…っ
隆)…っ
♧はそのまま俺にしがみついて
ひとしきり泣いて…
その理由もわからない俺は
ただただ、♧をぎゅっと抱き締めた。
俺の腕の中で震えながら…
何度も「隆二くん」って…俺の名前を呼ぶ♧。
大丈夫だよって言いながら
しっかりと抱きとめて
頭を撫でて、背中をさすって…
そうしてるうちに、
♧は泣き疲れて俺の腕の中で意識を失った。
隆)…っ
よく見ると…
♧の顔色は青くて…
身体だって…痩せた気がする。
なんか…すごく弱ってて……
隆)なん…で…
何が…あった…?
俺の知らない間に…何が……
男)ええと…今市…さん…?
隆)…はいっ
男)こっちに運んでもらえるかな?
隆)はい!!
俺は♧を抱き上げて、建物の中に入った。
職員さんが案内してくれた部屋のベッドに
そっと♧を寝かせて…
隆)……
涙の跡を、綺麗に拭いてやった。
♧は今はただ静かに、寝息を立ててる。
男)ええと…
先ほどは失礼しました。
隆)え…?
女)顔がわからなかったもので…
隆)あっ!いえ!!
こちらこそ…すみませんでした!!
俺は慌てて頭を下げた。
あんな格好してたら
不審者扱いされても仕方ない。
現に♧のことも怖がらせちゃったし…
男)♧ちゃんとは…どういう…?
隆)…っ
そう…だよな。
隆)ご挨拶遅くなりすみません。
今市隆二です。
立ち上がってもう一度頭を下げると、
女)いや、それは知ってるんですけどね…//
年配の職員さんが
慌てて俺を椅子に座らせた。
男)最近、♧ちゃんの様子が変で…。
隆)…っ
女)そうなんです。
そこへいきなり今市さんが現れたから…
私たちもびっくりしちゃって…
女)ええ。
隆)すみませんでした。
男)いえ、全然いいんですけど…
…彼女とは…お知り合いですか?
隆)……
知り合い…?
隆)彼女は…自分の大事な人です。
俺はキッパリそう答えた。
隆)彼女に…何があったんですか…?
女)……それが…
私たちにもわからなくて…
隆)…っ
男)様子がおかしくなって
もう一週間以上経つんだけど…
隆)……
それは…
俺が異変を感じ始めた時と、同じだ。
女)どうしたの?って聞いても
何も言わないんです。
男)誰が話しかけても
「大丈夫です」って…
そう言うだけで…
女)でも…明らかに衰弱してて…
女)そうなんです。
ご飯もあまり食べないし…
本当に心配で…心配で…
そう話してくれる職員さんたちは
みんな本当に心配そうで
♧の姿に胸を痛めてる。
隆)……
なんで…
何があった…?
ー続ー
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保育園で変装してたら、不審者に間違えられるわなぁ(笑)♧ちゃんも、あんな気持ち悪い目にあってたんだね。ビックリだよ!(◎_◎;)早く隆二くん助けてあげて。
隆二くんが不審者扱いされてておもしろい笑笑
そりゃ変装してるからね笑笑
♧ちゃんの身に何があったんだろう~
めっちゃ気になります❗
大丈夫なのかなー(´;ω;`)
心配だよぉー。・゚゚ ”゜(*/□\*) ”゜゚゚・。 ウワァーン!!
誰なの?隆二くんの大事な人虐めてる人は
もうお願いだからやめてーm(_ _)m
だいじょぶなん?!!!
え、ほんまにだいじょぶなん?!!!
え、なんで?って思って遡ってみたらなんも書いてない。どーして!何が起こってるんだろ、気になる。。。
隆二くん不審者扱いされてるwそりゃそうだよw変装して保育園うろついてたらただの変態やんw
意識無くしちゃった…。