[50]彼女の好きな人(隆二Side)

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♧)じゃあ…嬉し恥ずかし…
  私の片思いの相談、始めます///
隆)……


俺は全然嬉しくも恥ずかしくもないけどね!
聞いてやろうじゃん!


♧)この人は、歌をやってる人なんです。
隆)歌???


え、え、芸能人!??

え…でも…
芸能人好きじゃないって言ってたじゃん!!

てゆーか誰?!

見たことないんだけど!!


一人で勝手に脳内パニックになってる俺に
気付くわけもない♧は、そのまま続けた。


♧)メジャーデビューしてるとかじゃ
  ないんですけど…
  LIVEとかもしたりしてて…
  たまにチャリティー活動もしてて…
隆)…っ


だからか!!


あの時…

「チャリティーとかしてる人は
 素敵だなって、尊敬してます…
 芸能人じゃ…ないけど…///」


なんか急にもじもじ話すなって思ったら
あれは好きな人のことだったんだ!!


♧)私より全然年下なんですけど…
  すごくしっかりしてて…
隆)……
♧)優しくて…いつも明るくて笑顔で…
  すごく眩しい人なんです…///
隆)……


ベタ褒めだな…


♧)それで、何年か前から
  私がいた施設に、
  寄付を届けてくれるようになって…
隆)え…?その人が…?
♧)はい。
隆)……


チャリティーやってる人だから??


♧)若いのに…不思議だなって…
  思ってたんです。
隆)うん。
♧)それで…ある日、私…聞いたんです。
  どうしてここに寄付してくれるんですか?
  …って…
隆)うん。
♧)そしたら…
隆)……
♧)……恥ずかしい///
隆)は??


いきなり、何?


もしかして…
その人が♧のことを好きだから、とか?

あれ?
でも…それだと片思いにならない。

ん???


♧)私、運命だって思ったんです。
隆)…っ
♧)ううう…///
隆)……


全然意味がわからないけど…

そう言って両手で顔を隠す♧を見て
その先を聞きたいような聞きたくないような…


♧)彼が言ったんです。
  ここは、父が育った施設だから
  少しでも力になりたいんです、って。
隆)……え?
♧)だから…、本当に運命みたいなんですけど
  私が憧れてたおじさんの、
  息子さんだったんです///
隆)……


おじさんって…
あの素敵な…
武勇伝がたくさんあるあのおじさんの…

息子!!!???


♧)それを知った時、本当に
  身体に電気が走ったみたいで…
隆)…っ
♧)もうずっと…大好きなんです…
隆)……
♧)好きで好きで…大好きなんです///
隆)……


何度も繰り返されるその言葉が
俺の心を抉っていく。


なんだよそれ……


そんなおじさんの息子だなんて…

なんかもう、どう足掻いたって
勝てそうにないじゃん。


あんなイケメンで…
チャリティー活動もしてて…

♧にとったらまさに理想の男みたいな奴。

そりゃー運命感じるよな…


隆)……


なんかもう…
言葉も出ないや。


♧)はぁ…
  話してるだけでドキドキしちゃう///
隆)……


こんな♧、初めて見たし。


いつも落ち着いてて大人な雰囲気なのに
まるで別人。

恋する女の子みたいに
そんな可愛くなっちゃうの?


その男が♧を、こんな風にさせんの?


隆)…なんで…片思いなの?
♧)…っ
隆)……


そんな好きなら…
運命だって思うなら

もう付き合えばいいじゃんっ


気持ち、伝えればいいじゃん…っ


♧)……彼女が、いるんです。
隆)え…っ
♧)私、4年前から片思いしてるんですけど…
隆)えっ?


4年前…??

あれ??


隆)彼氏いないの、2年って言ってなかった?
♧)あっ…///
隆)……


何その、バレちゃった、みたいな顔。


♧)えっと…ごめんなさい…///
隆)はい?
♧)それ、嘘なんです。
隆)嘘??


どれがどう嘘なの??


♧)本当は私…、えっと…
  お付き合い、したことなくて…///
隆)ええっ!!!


うそっ!!!


♧)でも…この歳でそんなの…
  今市さんびっくりしちゃうかなって思って
  適当に嘘ついちゃいました…
  ごめんなさい///
隆)……


マジか。

いや、おかしいと思ったんだよ。


男に免疫ないって言うし
ほんとに免疫なさそうだし

なのに付き合ってる男はいたって、

じゃあなんでこんなに免疫ないんだ?
…って


おかしいとは思ってたけど…


隆)全く、ないの?
♧)……ハイ///
隆)……


え、もしかして…
そーゆーことも、経験ナシ???


♧)ほんとに…周りに男の人がいなくて…
  この人が、初めてちゃんと
  好きになった人なんです…///
隆)……
♧)だから…本当に好きだから…
  彼女がいるってわかっても…
  ずっと好きで…
隆)……
♧)……はぁ…///
隆)……


こんなに♧に思われてるそいつが
羨ましくて、仕方ない。


彼女がいても…4年間も好きだなんて…

いつまでそんな報われない片思い、
続けんの?


隆)…告白、……すれば?
♧)…っ
隆)……
♧)望み、ないのにですか?
隆)わかんないじゃん。
  気持ち、変わるかもよ?
♧)……絶対ないです。
隆)……


本当は…
そいつを振り向かせるために告白しろなんて
言ってない。


告白して、フラれて
気持ちにキッパリ区切りをつけたら
いいのにって…

すげぇ勝手だけど、そう思ってる。


♧)絶対フラれるのに…
  好きなんて言えないです……
隆)……4年も付き合ってるから?
♧)あ、いえ…、付き合ってるのは
  まだ多分、1年ちょっと?
  とかじゃないかな…
隆)え?
♧)私が出会った頃は彼女がいて、
  その後別れたって知って、
  頑張ろうと思った時には
  もう次の彼女が……
隆)……


なんだよそれ。
割と取っ替え引っ替えタイプなんじゃん?

そんなチャラい男なら
♧が告白したりしたら
ちゃっかり手を出すかも…


♧)でも、今の彼女は
  本当に大事にしてるみたいで…
  結婚したいと思ってるって
  言ってたらしいんです…
隆)……


だったらとっとと結婚してくれ。


♧)だから…望みゼロです。
隆)……


だったらやめればいいじゃん。


隆)…告白、しなよ。
♧)え…っ
  私の話、聞いてました?
隆)うん。
♧)……
隆)気持ちちゃんと伝えなよ。
♧)…っ
隆)別に告白ってさ、
  両想いになるためにするだけじゃ
  ないと思うよ。
♧)……え?


♧が俺の目をじっと見つめる。


隆)恋愛なんて特に…叶わないこともある。
  でも…それだけ好きになったなら
  自分が恋した証として、
  想いを伝えるくらい…
  してもいいんじゃないの?
♧)……っ


俺がそう言うと
♧の目が、少し潤み始めた。


♧)……
隆)……
♧)…迷惑に…ならないですかね?
隆)……どうしてそう思うの?
♧)だって…彼女が…いるのに…
隆)……


♧が泣きそうな顔で俯いた。


隆)じゃあ、♧だったら?
♧)え…?
隆)♧だったら…、♧と同じように
  ずっと一途に♧を想ってくれてる人が
  いたとして…
  その人に好きだって言われて
  迷惑だって思う?
♧)…っ
隆)こんなに一生懸命、
  一途に想ってくれてるのに…
♧)…っ


俺がそう言うと、
♧の瞳から、ぽろっと涙がこぼれた。


♧)思わ…ないです…っ
隆)……ん。


俺が♧の頭の上に
手のひらを置くと

それがスイッチになったように
またぽろぽろと♧の頬を伝う涙。


♧)…っ
隆)……


どんだけ好きなんだよ…


俺はそんな♧を見ていられなくて
その小さな肩を、そっと抱き寄せた。


♧)今市…さん…?
隆)いいから。
♧)…っ


肩をトントンと叩くと
俺の腕の中で小さく震えながら
泣いてる♧。


しばらくずっと、トントンしながら


♧が泣き止むまで、抱きしめてると…


♧)…今市さん…ありがとう……


涙声で♧が呟いた。


♧)ちょっと…ゆっくり考えてみます。
隆)……うん。
♧)……
隆)……


少しは前に…進めるのかな?


隆)頑張れ。
♧)……はいっ


最後にポンッと背中を叩いて
腕を緩めると

俺をそっと見上げた♧のまつ毛が
涙でキラキラ光ってて…


俺をじっと見つめるその瞳に
吸い込まれそうになって

思わずキスしそうになるのを
必死で堪えた。


♧)……ふふっ
隆)?!


なんで笑う??

俺の心、読んだの??


♧)今市さんって
  本当に優しいなぁ……
隆)……


ただの優しい男だと思われるのも
なんだか癪で

何かないかと、無駄に意地悪を探す。


隆)俺、別に優しくないよ?
♧)えーー
  優しいですよ、もうっ、ふふっ
隆)……


そんな無邪気に笑ってさ。


隆)……お代、ちょうだい。
♧)えっ…
隆)……
♧)相談に乗ってもらったお代ですか?
隆)ううん。
♧)え?
隆)ゼリーのお代。
♧)えっ!!


そのお代にこの話をしたのに、って
不思議そうな顔。


隆)昨日教えたでしょ?
♧)え…?
隆)昨日みたいなご飯じゃないけど…
  ご馳走になったら
  女の子がどうするのか。
♧)………、!!!


思い出したようにハッとした様子。


だから言ったでしょ。
俺、優しくなんかないって。

意地悪だってするんだから。


隆)はい…♡
♧)…っ


頬を近付ける俺に
少し戸惑って、仰け反る♧。


隆)……
♧)……///


♧がクイッと俺の服を引いた。


♧)ゼリーでも…ほっぺにキスですか?///
隆)……
♧)……
隆)こんな安もんで何言ってんだって?
♧)いえっ、そういうわけじゃ…っ
隆)じゃあ、して。
♧)……///


ほっぺをずずいと近付ける。


♧)あ、あの…じゃあ…
  ゼリー代、払います…っ///
隆)はー??


何それ!


♧)ちゃんと払いますから。
隆)後出しはダメです。
♧)ええっ!そういう決まりなんですか?
隆)そうだよ。知らないの?
♧)……


ガーン…って顔してる。


隆)てゆーかさ、そんなに嫌?
♧)え…?
隆)俺にキスすんの。
♧)…っ


昨日は2回もしてくれたのに…


♧)えっと、そうじゃなくて…
  むしろ嫌じゃないので
  それもどうなのかなって不思議で…
隆)え…?


♧からこぼれた本音に
俺の胸が期待の音を立てる。


♧)だから、払います。
隆)ダメ!!!
♧)…っ


財布を出そうとする♧の手を
昨日と同じように阻止した。


隆)嫌じゃないならいいじゃん!
  ほっぺにちゅーして!
♧)…っ


もうここまで来ると
俺、ただの駄々っ子みたい。


隆)してくんなきゃ帰んないから。
♧)///


♧の手をぎゅっと握った。


♧)ううう…///




……チュッ




頬に感じた柔らかい感触は
昨夜よりもハッキリしていて…


隆)……///


ほんとにしてくれた。

じーーーん♡


♧)あ、あの…っ///
隆)はぁ…、///


俺はたまらずまた、♧を抱きしめる。


♧)あのっ!今市さんっ!///
隆)なーに。
♧)…っ///


腕の中で暴れる♧を無視。

無視してぎゅーーー。


♧)あの…///
隆)……
♧)私たち、仲良しすぎないですか?///
隆)……


仲良し…すぎ…?


隆)ぶっww
  あははははっww


そんな彼女の言葉に
さすがに吹き出す。


♧)何がおかしいんですか?///
隆)いや…、ぶくくくww


仲良しすぎって…

ああ、ダメだ、おかしいwww


隆)ほんと可愛いね?w


俺がそう言って頭の上に手を乗せると


♧)またそのクセ…///


そう言って頬を膨らませた。


だから…
クセじゃないって言ったじゃん。

誰にでも言うわけじゃなくて
♧が可愛いから「可愛い」って言ってんのに…


隆)仲良しすぎちゃ、何か困るの?
♧)え…?
隆)……
♧)…困ら…ないです…ね?
隆)でしょ?
  じゃあいいじゃん、仲良しで。
♧)そっか……
隆)……


ねぇ。

この人、ちょっとおバカなのかな?

可愛すぎない…?


こんな素直で…
よく今まで騙されたりしなかったね?

もしかして家に
変なツボとか変な布団とか
いっぱいあるんじゃないの?

心配になってきたよ。


♧)じゃあ…私、そろそろ帰ります。
隆)……


そっか、もうそんな時間か。


♧)今市さん。


♧が帰る準備をして
最後に俺の方を振り向いた。


♧)あの…いっぱい聞いてくれて
  本当にありがとうございました!
隆)……
♧)なんか…すごく嬉しかったです。
隆)……
♧)私、頑張りますね♡
隆)……
♧)今市さんが…応援してくれたから…
隆)……
♧)本当にありがとうございました♡
  今市さん、大好きです♡
  おやすみなさい。


そう言って♧はいつものように
風を切って、帰って行った。


俺、頑張れとは言ったけど
応援してるわけじゃないよ?

♧の人生は応援してるけど
♧の恋は応援してない。


なのに…
俺のこと優しいとか言って
大好きとか言って…


隆)……


でも、告白しろって言ったのは
意地悪で言ったんじゃない。


♧の不幸を願ってるんじゃなくて…

ちゃんとキレイさっぱりフラれてきたら

どんなに泣いたって
俺が死ぬ気で幸せにしてやるのに、って…

そう思ってるから。


だから…

早くケリつけて
俺のところに来い。


俺はちゃんと…待っててやるから。



ーendー

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