♧)じゃあ…嬉し恥ずかし…
私の片思いの相談、始めます///
隆)……
俺は全然嬉しくも恥ずかしくもないけどね!
聞いてやろうじゃん!
♧)この人は、歌をやってる人なんです。
隆)歌???
え、え、芸能人!??
え…でも…
芸能人好きじゃないって言ってたじゃん!!
てゆーか誰?!
見たことないんだけど!!
一人で勝手に脳内パニックになってる俺に
気付くわけもない♧は、そのまま続けた。
♧)メジャーデビューしてるとかじゃ
ないんですけど…
LIVEとかもしたりしてて…
たまにチャリティー活動もしてて…
隆)…っ
だからか!!
あの時…
「チャリティーとかしてる人は
素敵だなって、尊敬してます…
芸能人じゃ…ないけど…///」
なんか急にもじもじ話すなって思ったら
あれは好きな人のことだったんだ!!
♧)私より全然年下なんですけど…
すごくしっかりしてて…
隆)……
♧)優しくて…いつも明るくて笑顔で…
すごく眩しい人なんです…///
隆)……
ベタ褒めだな…
♧)それで、何年か前から
私がいた施設に、
寄付を届けてくれるようになって…
隆)え…?その人が…?
♧)はい。
隆)……
チャリティーやってる人だから??
♧)若いのに…不思議だなって…
思ってたんです。
隆)うん。
♧)それで…ある日、私…聞いたんです。
どうしてここに寄付してくれるんですか?
…って…
隆)うん。
♧)そしたら…
隆)……
♧)……恥ずかしい///
隆)は??
いきなり、何?
もしかして…
その人が♧のことを好きだから、とか?
あれ?
でも…それだと片思いにならない。
ん???
♧)私、運命だって思ったんです。
隆)…っ
♧)ううう…///
隆)……
全然意味がわからないけど…
そう言って両手で顔を隠す♧を見て
その先を聞きたいような聞きたくないような…
♧)彼が言ったんです。
ここは、父が育った施設だから
少しでも力になりたいんです、って。
隆)……え?
♧)だから…、本当に運命みたいなんですけど
私が憧れてたおじさんの、
息子さんだったんです///
隆)……
おじさんって…
あの素敵な…
武勇伝がたくさんあるあのおじさんの…
息子!!!???
♧)それを知った時、本当に
身体に電気が走ったみたいで…
隆)…っ
♧)もうずっと…大好きなんです…
隆)……
♧)好きで好きで…大好きなんです///
隆)……
何度も繰り返されるその言葉が
俺の心を抉っていく。
なんだよそれ……
そんなおじさんの息子だなんて…
なんかもう、どう足掻いたって
勝てそうにないじゃん。
あんなイケメンで…
チャリティー活動もしてて…
♧にとったらまさに理想の男みたいな奴。
そりゃー運命感じるよな…
隆)……
なんかもう…
言葉も出ないや。
♧)はぁ…
話してるだけでドキドキしちゃう///
隆)……
こんな♧、初めて見たし。
いつも落ち着いてて大人な雰囲気なのに
まるで別人。
恋する女の子みたいに
そんな可愛くなっちゃうの?
その男が♧を、こんな風にさせんの?
隆)…なんで…片思いなの?
♧)…っ
隆)……
そんな好きなら…
運命だって思うなら
もう付き合えばいいじゃんっ
気持ち、伝えればいいじゃん…っ
♧)……彼女が、いるんです。
隆)え…っ
♧)私、4年前から片思いしてるんですけど…
隆)えっ?
4年前…??
あれ??
隆)彼氏いないの、2年って言ってなかった?
♧)あっ…///
隆)……
何その、バレちゃった、みたいな顔。
♧)えっと…ごめんなさい…///
隆)はい?
♧)それ、嘘なんです。
隆)嘘??
どれがどう嘘なの??
♧)本当は私…、えっと…
お付き合い、したことなくて…///
隆)ええっ!!!
うそっ!!!
♧)でも…この歳でそんなの…
今市さんびっくりしちゃうかなって思って
適当に嘘ついちゃいました…
ごめんなさい///
隆)……
マジか。
いや、おかしいと思ったんだよ。
男に免疫ないって言うし
ほんとに免疫なさそうだし
なのに付き合ってる男はいたって、
じゃあなんでこんなに免疫ないんだ?
…って
おかしいとは思ってたけど…
隆)全く、ないの?
♧)……ハイ///
隆)……
え、もしかして…
そーゆーことも、経験ナシ???
♧)ほんとに…周りに男の人がいなくて…
この人が、初めてちゃんと
好きになった人なんです…///
隆)……
♧)だから…本当に好きだから…
彼女がいるってわかっても…
ずっと好きで…
隆)……
♧)……はぁ…///
隆)……
こんなに♧に思われてるそいつが
羨ましくて、仕方ない。
彼女がいても…4年間も好きだなんて…
いつまでそんな報われない片思い、
続けんの?
隆)…告白、……すれば?
♧)…っ
隆)……
♧)望み、ないのにですか?
隆)わかんないじゃん。
気持ち、変わるかもよ?
♧)……絶対ないです。
隆)……
本当は…
そいつを振り向かせるために告白しろなんて
言ってない。
告白して、フラれて
気持ちにキッパリ区切りをつけたら
いいのにって…
すげぇ勝手だけど、そう思ってる。
♧)絶対フラれるのに…
好きなんて言えないです……
隆)……4年も付き合ってるから?
♧)あ、いえ…、付き合ってるのは
まだ多分、1年ちょっと?
とかじゃないかな…
隆)え?
♧)私が出会った頃は彼女がいて、
その後別れたって知って、
頑張ろうと思った時には
もう次の彼女が……
隆)……
なんだよそれ。
割と取っ替え引っ替えタイプなんじゃん?
そんなチャラい男なら
♧が告白したりしたら
ちゃっかり手を出すかも…
♧)でも、今の彼女は
本当に大事にしてるみたいで…
結婚したいと思ってるって
言ってたらしいんです…
隆)……
だったらとっとと結婚してくれ。
♧)だから…望みゼロです。
隆)……
だったらやめればいいじゃん。
隆)…告白、しなよ。
♧)え…っ
私の話、聞いてました?
隆)うん。
♧)……
隆)気持ちちゃんと伝えなよ。
♧)…っ
隆)別に告白ってさ、
両想いになるためにするだけじゃ
ないと思うよ。
♧)……え?
♧が俺の目をじっと見つめる。
隆)恋愛なんて特に…叶わないこともある。
でも…それだけ好きになったなら
自分が恋した証として、
想いを伝えるくらい…
してもいいんじゃないの?
♧)……っ
俺がそう言うと
♧の目が、少し潤み始めた。
♧)……
隆)……
♧)…迷惑に…ならないですかね?
隆)……どうしてそう思うの?
♧)だって…彼女が…いるのに…
隆)……
♧が泣きそうな顔で俯いた。
隆)じゃあ、♧だったら?
♧)え…?
隆)♧だったら…、♧と同じように
ずっと一途に♧を想ってくれてる人が
いたとして…
その人に好きだって言われて
迷惑だって思う?
♧)…っ
隆)こんなに一生懸命、
一途に想ってくれてるのに…
♧)…っ
俺がそう言うと、
♧の瞳から、ぽろっと涙がこぼれた。
♧)思わ…ないです…っ
隆)……ん。
俺が♧の頭の上に
手のひらを置くと
それがスイッチになったように
またぽろぽろと♧の頬を伝う涙。
♧)…っ
隆)……
どんだけ好きなんだよ…
俺はそんな♧を見ていられなくて
その小さな肩を、そっと抱き寄せた。
♧)今市…さん…?
隆)いいから。
♧)…っ
肩をトントンと叩くと
俺の腕の中で小さく震えながら
泣いてる♧。
しばらくずっと、トントンしながら
♧が泣き止むまで、抱きしめてると…
♧)…今市さん…ありがとう……
涙声で♧が呟いた。
♧)ちょっと…ゆっくり考えてみます。
隆)……うん。
♧)……
隆)……
少しは前に…進めるのかな?
隆)頑張れ。
♧)……はいっ
最後にポンッと背中を叩いて
腕を緩めると
俺をそっと見上げた♧のまつ毛が
涙でキラキラ光ってて…
俺をじっと見つめるその瞳に
吸い込まれそうになって
思わずキスしそうになるのを
必死で堪えた。
♧)……ふふっ
隆)?!
なんで笑う??
俺の心、読んだの??
♧)今市さんって
本当に優しいなぁ……
隆)……
ただの優しい男だと思われるのも
なんだか癪で
何かないかと、無駄に意地悪を探す。
隆)俺、別に優しくないよ?
♧)えーー
優しいですよ、もうっ、ふふっ
隆)……
そんな無邪気に笑ってさ。
隆)……お代、ちょうだい。
♧)えっ…
隆)……
♧)相談に乗ってもらったお代ですか?
隆)ううん。
♧)え?
隆)ゼリーのお代。
♧)えっ!!
そのお代にこの話をしたのに、って
不思議そうな顔。
隆)昨日教えたでしょ?
♧)え…?
隆)昨日みたいなご飯じゃないけど…
ご馳走になったら
女の子がどうするのか。
♧)………、!!!
思い出したようにハッとした様子。
だから言ったでしょ。
俺、優しくなんかないって。
意地悪だってするんだから。
隆)はい…♡
♧)…っ
頬を近付ける俺に
少し戸惑って、仰け反る♧。
隆)……
♧)……///
♧がクイッと俺の服を引いた。
♧)ゼリーでも…ほっぺにキスですか?///
隆)……
♧)……
隆)こんな安もんで何言ってんだって?
♧)いえっ、そういうわけじゃ…っ
隆)じゃあ、して。
♧)……///
ほっぺをずずいと近付ける。
♧)あ、あの…じゃあ…
ゼリー代、払います…っ///
隆)はー??
何それ!
♧)ちゃんと払いますから。
隆)後出しはダメです。
♧)ええっ!そういう決まりなんですか?
隆)そうだよ。知らないの?
♧)……
ガーン…って顔してる。
隆)てゆーかさ、そんなに嫌?
♧)え…?
隆)俺にキスすんの。
♧)…っ
昨日は2回もしてくれたのに…
♧)えっと、そうじゃなくて…
むしろ嫌じゃないので
それもどうなのかなって不思議で…
隆)え…?
♧からこぼれた本音に
俺の胸が期待の音を立てる。
♧)だから、払います。
隆)ダメ!!!
♧)…っ
財布を出そうとする♧の手を
昨日と同じように阻止した。
隆)嫌じゃないならいいじゃん!
ほっぺにちゅーして!
♧)…っ
もうここまで来ると
俺、ただの駄々っ子みたい。
隆)してくんなきゃ帰んないから。
♧)///
♧の手をぎゅっと握った。
♧)ううう…///
……チュッ
頬に感じた柔らかい感触は
昨夜よりもハッキリしていて…
隆)……///
ほんとにしてくれた。
じーーーん♡
♧)あ、あの…っ///
隆)はぁ…、///
俺はたまらずまた、♧を抱きしめる。
♧)あのっ!今市さんっ!///
隆)なーに。
♧)…っ///
腕の中で暴れる♧を無視。
無視してぎゅーーー。
♧)あの…///
隆)……
♧)私たち、仲良しすぎないですか?///
隆)……
仲良し…すぎ…?
隆)ぶっww
あははははっww
そんな彼女の言葉に
さすがに吹き出す。
♧)何がおかしいんですか?///
隆)いや…、ぶくくくww
仲良しすぎって…
ああ、ダメだ、おかしいwww
隆)ほんと可愛いね?w
俺がそう言って頭の上に手を乗せると
♧)またそのクセ…///
そう言って頬を膨らませた。
だから…
クセじゃないって言ったじゃん。
誰にでも言うわけじゃなくて
♧が可愛いから「可愛い」って言ってんのに…
隆)仲良しすぎちゃ、何か困るの?
♧)え…?
隆)……
♧)…困ら…ないです…ね?
隆)でしょ?
じゃあいいじゃん、仲良しで。
♧)そっか……
隆)……
ねぇ。
この人、ちょっとおバカなのかな?
可愛すぎない…?
こんな素直で…
よく今まで騙されたりしなかったね?
もしかして家に
変なツボとか変な布団とか
いっぱいあるんじゃないの?
心配になってきたよ。
♧)じゃあ…私、そろそろ帰ります。
隆)……
そっか、もうそんな時間か。
♧)今市さん。
♧が帰る準備をして
最後に俺の方を振り向いた。
♧)あの…いっぱい聞いてくれて
本当にありがとうございました!
隆)……
♧)なんか…すごく嬉しかったです。
隆)……
♧)私、頑張りますね♡
隆)……
♧)今市さんが…応援してくれたから…
隆)……
♧)本当にありがとうございました♡
今市さん、大好きです♡
おやすみなさい。
そう言って♧はいつものように
風を切って、帰って行った。
俺、頑張れとは言ったけど
応援してるわけじゃないよ?
♧の人生は応援してるけど
♧の恋は応援してない。
なのに…
俺のこと優しいとか言って
大好きとか言って…
隆)……
でも、告白しろって言ったのは
意地悪で言ったんじゃない。
♧の不幸を願ってるんじゃなくて…
ちゃんとキレイさっぱりフラれてきたら
どんなに泣いたって
俺が死ぬ気で幸せにしてやるのに、って…
そう思ってるから。
だから…
早くケリつけて
俺のところに来い。
俺はちゃんと…待っててやるから。
ーendー
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