健)隆二ーーー
今日も行くかー?♪
隆)……
今日もリハ終わりに
健ちゃんが声をかけてきた。
隆)行かない。
健)何やーー
昨日の女、良くなかったん?
隆)……
そうじゃなくて…
隆)俺、行きたいとこあるから!
お疲れ!
健)ああ、うん、お疲れーー
俺は家に帰って荷物を置いて
またいつもの場所へ走った。
隆)はぁ…っ
聴こえてきた、彼女の音色。
見つけた。
今日もいた。
昨日も…いたのかな?
来れば良かった。
会いたかった。
隆)こんばんは…っ
♧)あ、今市さん!こんばんは。
……どうして…息切れてるんですか?
隆)…っ
君に少しでも早く会いたくて
走ってきたなんて
なんか恥ずかしくて…
隆)トレーニング…帰り。
♧)え?
隆)このへん、走ってたの。
♧)へぇ、そうなんですねー。
彼女がふわりと笑った。
♧)座りますかー?
隆)////
いつも俺が勝手に隣に座ってるけど
今日は彼女からそう言ってくれて
すごく嬉しい。
隆)座るっ///
♧)どうぞー♡
荷物をよけてくれて
空いた隣のスペースに腰をおろした。
隆)……
♧)……
彼女は何も喋らずに今日も裁縫に夢中。
俺はそんな彼女の横顔を見つめてる。
言葉なんて、なくていい。
なんか…
こうして隣にいるだけで、癒されるんだ。
不思議だな……
♧)今日はお手伝い、してくれないんですか?
隆)え…っ
彼女がくすっと笑った。
♧)じっと見てるから…
隆)……///
手伝ってあげたいけど…
手伝ったら、君の顔…見れないじゃん。
隆)今日はお手伝いナシです。
♧)ふふっ、残念ーw
隆)……///
ねぇ…
その笑い方、ほんと好きなんだけど…
抱きしめたく…なるんだけど…
♧)でももう少しで完成だから
大丈夫です♡
隆)え…っ
……完成って…
完成しちゃったら、もうここには
来なくなる!?
隆)やだっ…
咄嗟に口から出た言葉。
♧)え…?
隆)…っ
きょとんとする彼女。
そりゃそーだ。
隆)…邪魔して…いい?
♧)……はい??
隆)それ。
♧)……何言ってるんですか?
隆)……
だよね。
♧)子供たちに意地悪する人は
ほっぺむにむにの刑ですよ?
隆)ぶっ…ww
彼女の口から出た、
「刑」とは思えないような可愛い名前に
思わず吹き出す。
隆)それ、どんな刑なの?w
♧)知らないんですかー?
誰でも知ってて当然くらいの温度で
そう返す彼女。
♧)ほっぺむにむにの刑は、
これですよーー
隆)!!!
アップリケを膝に置いた彼女の両手が
俺の頬にスッと伸びてきて…
♧)むにむにーーっ
隆)////
な、な、何これ!!!
♧)これがほっぺむにむにの刑です♡
隆)////
わ、わ、わかったから離して!
俺、絶対今、顔真っ赤だから!///
♧)知らなかったですかー?
隆)////
彼女にほっぺを摘まれてて
喋れない俺。
俺のほっぺを引っ張る、彼女の手を
そっと掴んだ。
隆)今知った///
♧)……
隆)覚えて…おきます///
♧)そうしてください♡
隆)////
ドキン…ドキン…
掴んでた彼女の手は
するりと抜けていって
また器用に、裁縫を始める。
隆)……
♧)……
ねぇ…
俺がこんなにドキドキしてるって、
絶対わかってない。
隆)……♧さん。
♧)はい…?
隆)……
♧)……
隆)今の、誰にでもすんの…?
♧)え…?
隆)……
♧)……
こんな至近距離で…
あんなの、キスされたって
文句言えないと思う。
♧)悪い子にはみんなにします。
隆)はぁ?!みんな!?
そんなん…
絶対男、勘違いするから!!!
隆)ダメだって!!
♧)そんなに痛くはしないですよー?
隆)そうじゃなくて!
♧)だって…
これってちゃんと目を見て話せるから。
隆)…っ
♧)子供と話すのには丁度いいんです。
隆)……こ、子供?
♧)はい。
はい???
もしかして…
俺の質問、わかってなかった?
隆)いや、子供にはいくらでも
していいんだけどさ、
大人の男にするなよって言ってんの。
♧)……
ちょっと強めになった俺の口調に
彼女がふと、顔を上げた。
♧)しないですよ??
隆)……
だって…
俺にしたじゃん!!
♧)大人の人は悪さしないですもん。
隆)へ??
♧)今は、今市さんが悪いこと言うからー。
隆)悪いこと?
♧)アップリケ邪魔するーなんて、意地悪。
隆)それは…
意地悪で言ったんじゃ…
♧)子供たちに意地悪する人は
お仕置きですっ
隆)……///
可愛いな…なんだそれ。
隆)俺、子供好きだってば。
♧)……
隆)ほんとに!昔から!
小さい子、大好き!!
♧)……ほんとですかー?
隆)うん。
彼女が俺の目をじっと見つめて
ふにゃんと笑った。
♧)じゃあ信じてあげます♡
隆)////
バクバク…心臓がうるさくなる。
♧)子供たち…見たいですか?♡
隆)…っ
ドクドク…心臓が暴れだす。
♧)今市さんになら
特別に見せてあげてもいいですよー♡
隆)…っ
子供って…
彼女の子供だよな?
俺…そこまで覚悟出来てる?
どうしよう。
でも…、見たい。
隆)うん、見せて。
♧)ふふっ、いいですよー♡
嬉しそうに笑う彼女の顔は
やっぱり「お母さん」の顔。
♧)ちょっと待ってくださいねー♡
隆)……
彼女がスマホを取り出して…
俺は気持ちを落ち着かせるために
川の流れに視線を落とした。
……ふぅ。
よし!
♧)これです♡うちの子たちー♡
隆)……
♧)お遊戯会の練習してるところー♡
隆)……
え、え、これって…
隆)どれが♧さんの子供?
♧)はい?
隆)これの、どれ?
♧)どれって…全部ですけど…
隆)は?!!
だって…
何人いるんだよ!!!
こんなん、どっかの幼稚園の教室じゃん!
隆)いや、おかしいでしょ!
どの子?
♧)だから、全部私の子ですって。
隆)はぁ??
♧)……何言ってるんですか…?
隆)これ、全部産んだの?!!
♧)……はい????
お互い「?」だらけで
思わず顔を見合わせる。
隆)……
♧)……
あれ…?
隆)♧さんの、子供でしょ?
♧)はい。
私が担当してる子供たちです。
隆)……担…当…?
♧)はい。
隆)……
♧)……
ええと…
落ち着け、俺。
俺はどうやら…
とんでもない勘違いをしてた?
隆)子供、何人いるの…?
♧)えっと…24人ですけど…
隆)♧さんの子供は…?
♧)私、子供いないですけど…
母親に見えました?
隆)……
だって…
そう言ったじゃん!!
隆)シングルマザーじゃ…ないの…?
♧)?!!!
お互いしばらくぼーっと
見つめ合って
ゆっくりと、噛み合ってなかった会話の謎が
解けていく。
♧)私、結婚してないです。
隆)……そう…みたいだね……
♧)子供もいないです。
隆)うん。
♧)だから…
隆)……
彼女が笑い始めた。
♧)だから…あんなこと
言ってくれたんですね…
隆)え…?
♧)大変だね、とか…
生活困ってない?とか
隆)……うん///
改めて振り返ると
俺、相当とんちんかんな質問してたんだな。
すげぇ恥ずかしい///
♧)私、彼氏もいなくて大変だねって
意味だと思って…
隆)え、それ…めっちゃ嫌味じゃん!
♧)はい。だから…何言ってるんだろうって
思ったんですけど…
今市さんは全然悪気なさそうだったから…
変な人っ、って思ってましたww
隆)……それは…大変失礼しました///
♧)あははは♡
彼女は無邪気に笑って
俺を見つめた。
♧)でもやっぱり、いい人♡
隆)え…?
♧)今市さんは、変な人じゃなくて、いい人♡
隆)…な…んで…
♧)だって…全然知らない私のこと
そんな風に心配してくれて…
隆)…っ
♧)本当に優しい人ですね♡
隆)////
無邪気すぎる彼女の笑顔に
クラクラしてくる。
♧)ふふっ…、でも…そっかw
ふふふ…っ
彼女は一人で楽しそうに笑いながら
また裁縫を再開した。
隆)……
そうか、俺の勘違い。
そうか。
……
ん??
ちょっと、待てよ?
じゃあ…
じゃあ!!!
彼女は旦那も彼氏も子供もいなくて
ただのフリーってこと?!!
え、俺…っ
諦めなくていいってこと!!??
いきなり目の前に現れた希望に
頭が追いつかなくて…
隆)…っ
え、俺…間違ってないよね?
いいんだよね?
フリーなんだよね?
どうしよう!!!
めちゃくちゃガッツポーズしたい!!!!
っしゃーーーー!!!!!!
♧)…どうしたんですかー?
隆)えっ…
♧)なんか…鼻息荒いから…
隆)えっ!!///
俺、そんなフガフガしてた!?
恥ずかしっっ///
隆)いや、もうちょっとで
完成だって言うから…
♧)え、それで喜んでくれてたんですか?
隆)……
こんな言い訳、苦しい?
♧)今市さんって…本当にいい人♡
隆)……////
ああーーーー
あのー…
ごめんなさい、嘘です。
本当は君が独身だってわかって
浮かれてました。
心の中で、ジャンプしまくってます。
♧)よし、できたーー!!
隆)おめでとう!!!
♧)ふふっ、ありがとうございます。
隆)ほんとにおめでとう!!!
独身バンザイ!!!!
♧)わ、もうこんな時間。
帰らなくっちゃー。
隆)……
ってことは、
彼女は普通に一人暮らしってことか。
ずっと家で子供が寝て待ってるんだと
思ってたけど…
荷物をカゴに詰め始める彼女の腕を
俺は思わず掴んだ。
♧)どう…したんですか?
隆)…っ
子供、いないなら…
もうちょっといいじゃん!
隆)まだ…っ、話したいっ!
♧)……
彼女はきょとんとした顔で
俺を見つめる。
隆)えっと…
どうしよう。
えっと…えっと…
そーだ!!!!
隆)名前、教えて!!!
♧)え……
隆)……
♧)♧ですけど……
隆)そうじゃなくて!下の名前!
♧)♧です。
隆)…っ
こんなあっさり教えてくれるなら
早く聞けば良かった。
隆)♧……
♧)…っ
「さん」も「ちゃん」も付けなかったのは
その分、早く距離を縮めたかったから。
♧)呼び捨て…ですか…?//
隆)うん。いや…?
♧)嫌じゃ…ないですけど…//
隆)じゃあ♧。
♧)……//
隆)♧。
♧)////
何度だって呼びたい、彼女の名前。
隆)……いい名前だね。
♧)ありがとう…ございます…///
隆)ふふっw
♧)……///
俺は嬉しくて
彼女の肩を掴んだまま、話を続けた。
隆)俺も名前で呼んでほしい。
♧)え…?
隆)苗字じゃなくて。
♧)……
隆)……
♧)名前、なんていうんですか?
隆)……隆二。
♧)ルイージ…?
隆)ぶっwww
俺は思わず吹き出した。
隆)あはははっwww
♧)……?
隆)なんで…マーチとか…ルイージとか…
俺いっつも外人にされんの…ww
♧)あれ、違いました?//
隆)ぶはははww
しゃがみこんで散々笑い転げて…
隆)隆二!w
彼女を見上げてもう一度そう言うと、
♧)リュウイチ??
隆)……ww
もう、天然かよ!w
俺、臣ほど滑舌悪くないよね?
俺は立ち上がって
また彼女の肩を掴んだ。
隆)りゅ・う・じ!
♧)りゅうじ!
隆)手、貸して。
♧)…っ
彼女の手を取って、その手のひらに
あの日と同じように指で文字をなぞる。
「隆二」
♧)隆二……
隆)うん。隆二。
♧)隆二さん。
隆)えっ
♧)じゃあ隆二さんって呼びますね。
隆)え、いらない!「さん」いらない!
隆二!
♧)え…っ
隆)隆二!
♧)…隆二……
隆)そ!隆二!
♧)隆二……
隆)うん。
彼女の唇が繰り返す、自分の名前が
すごく、くすぐったくて
嬉しくてたまらない。
♧)呼び捨て…ですか…?
隆)うん。隆二って呼んで。
♧)……それは…ちょっと…
えっと…隆二くん……
隆)……
♧)でも、いいですか?
隆)やだ。
♧)えっ!!
俺の我儘に、彼女は困ったように俯いて
小さな声で言った。
♧)呼び捨てとか…慣れてないので…///
隆)……
もじもじしてる姿がすごく可愛くて
なんだか困らせたくなる。
隆)♧……
♧)…っ///
彼女の手を取って、名前を呼んだ。
隆)隆二って、呼んで?
♧)////
すると彼女は
俺の手をパシパシ振り払って
一歩、下がった。
♧)こーゆーの、やめてください///
隆)え…っ
触るな、ってこと…?
俺、嬉しすぎて…やりすぎた?
♧)私、男性に免疫ないんです!///
隆)……へ?
♧)だから…あまり近い距離は、困ります///
隆)……
♧)男友達とかも…いないので…
呼び捨ても…ハードルが高いです///
隆)……
♧)「隆二くん」で…勘弁してください///
隆)……
……はぁ。
すっげぇ抱きしめたい////
疼く身体と、今にも動きそうな俺の腕。
でも、「困る」って言われたから
必死にそれを抑えてる。
隆)じゃあ…もっかい呼んで?
俺が一歩前に出ると、一歩下がる彼女。
♧)……隆二…くん///
隆)////
俺の大好きな声が、優しく呼ぶ、俺の名前。
隆)もっかい…///
また一歩前に出ると、彼女も一歩逃げる。
♧)……隆二くん、///
隆)////
俺がまた一歩近づこうとすると、
タイムリミット。
彼女が慌てて自転車に駆け寄った。
♧)それじゃ、帰ります!!
隆)…っ
♧)おやすみなさい、隆二くん///
隆)……おやすみ////
その日も俺は、
彼女の背中が見えなくなるまで、見送った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
隆)へへへ…///
N)何一人でニヤけてんだよ。
気持ちわりーな。
隆)!!!
無意識だった!
いや…でも…
そりゃーニヤけるでしょ。
隆)へへへ…///
N)だから気持ちわりーって!w
E)今市くんがご機嫌だーー
隆)////
だって…
♧がフリーだった。
だって
♧が俺のこと、隆二くんって呼んでくれた。
俺、好きな子とか出来ても
いつもそんなガツガツいけなくて
慎重タイプなんだけど
シングルマザーだと思ってた子が
そうじゃなかったなんて
そんな嬉しさのおかげで、
ちょっとストッパーも外れてて
どうやって攻めようか
わくわくして仕方ない。
だって、好きになってもいい相手。
旦那も子供もいない。
彼氏もいない。
隆)へへへ…///
まずは、連絡先を聞きたい。
そう。
一番大事なところ。
で、デートに誘って
ご飯でも食べに行って
♧ともっと、話がしたい。
♧のことをもっと知りたい。
隆)////
考えただけで、わくわくが止まらない。
隆)あーーーっ
早く帰りたいっ!!!
N)ちょ、そんな大きな声で
やる気ない宣言すんなw
隆)え、あっ…w
やる気ないわけじゃなく…
N)なんだよ。
隆)早く帰りたいだけです。
N)一緒だろ!!!w
隆)違いますって!!w
だって早く帰って
あそこに行きたいんだもん。
……
打ち合わせを終えて
マネージャーに送ってもらって
俺は今日もまっしぐら。
隆)はぁっ、は…ぁっ
いた!!!♡♡
♧)あ、今市さん。こんばんはー。
隆)こんばんはっ♡
…って、あれ?
♧)今日も走ってたんですかー?
隆)うん。
♧)トレーニング、お疲れさまです♡
隆)うん。
ちょっと待って。
今、さ…
♧)…座らないんですかー?
隆)……
♧)今市さん…?
隆)……
やっぱり。
……ドサッ
俺は定位置に座って
♧の顔を覗き込んだ。
隆)なんで「今市さん」?
♧)……あっ、ほんとだー!
隆)……
♧)もう今市さんに慣れちゃっててw
隆)じゃあ、呼び直し。
♧)え??
隆)はい。
♧)……
隆)……
♧)……
隆)…呼んでよ!!w
♧)……やですー//
隆)えっ!!
なんで!!!
♧)なんかそう言われると
恥ずかしくなってきました…//
隆)えっ…
♧)今市さんは今市さんなんで
私はそう呼びます。
隆)!!!
ガーーン!!!!
隆)俺は♧って呼ぶよ!!!
♧)ああ、はい。
隆)……
何この一方通行感。
♧)ふふっ…怖い顔してるーー
彼女が俺を見てふわっと笑う。
隆)怖い顔ならなんで笑うの。
♧)え…?
そんな顔してるつもりないし
ちょっと拗ねてるだけだけど…
♧)だって今市さんは優しい人だから。
隆)……///
♧)怖くないですよー♡
隆)////
ああ…なんか…
もうなんだって…いいや…///
彼女はまた髪をかきあげて
そのうなじにドキッとする俺を無視して
今日も裁縫をしてる。
隆)今日は何作ってるの?
♧)お道具箱です。
隆)ふーーん……
作るものはいくらでもあるのかな。
隆)仕事って何時までなの?
♧)え?
隆)毎日。
デートに誘いたいんです、俺。
♧)バラバラですけど
いつもこんな時間です。
隆)休みないの?
♧)あ、今日お休みでしたよー。
隆)え!!
休みでもここ来るの?
♧)……
隆)……
♧)えっと…
隆)……
口ごもる彼女に
勝手な期待をする。
もしかして…
俺が来るって思って、来てくれた?
休みなのに…
わざわざ自転車に乗って
ここまで、会いに来てくれた?
隆)ねぇ!!
♧)は、はいっ
隆)連絡先、交換しよ!!
♧)…っ
そしたら、今日はいるの?とか
今日は仕事遅いから行けないんだ、とか
連絡できるじゃん?
会うのが当たり前になってるわけじゃ
ないけど…
隆)教えて?
♧)……はい。
お互いに交換すると、
彼女はスマホを見つめて
不思議そうに呟いた。
♧)今市隆二……
隆)うん。
♧)……
隆)…なんか…変?
♧)あ、いえ…っ
私…男友達がいないから
こうして男性の連絡先が
携帯に入ってるって
なんだか不思議で…
隆)……
そんな彼女の言葉が
俺に特別感を与えて
また俺を調子に乗らせる。
隆)いつでも連絡してね♡
♧)……え??
隆)せっかく交換したんだし。
♧)あ、ええと…はい。
……一体…どういう時に…
隆)俺の声が聞きたくなった時?
♧)……それは…
どういう時でしょうか?
隆)ぶっww
半分冗談だったのに
そこ、普通に聞き返す?w
隆)どんな時でもいいよ。
♧)……
隆)……
♧)あの…私、本当に男友達いないんで
あまりそういうの、わからなくて。
隆)……
何度も「男友達」って繰り返されるのが
ちょっと気になるけど
まぁ今はまだ、それでもいいや。
隆)なんでもいいってw
ほら、仕事で嫌なことがあった時〜、とか
なんか一人で寂しい時〜、とか
♧)……なるほど。
隆)だから…
♧)……
隆)俺も、電話していい?
♧)え?
隆)♧の声が聞きたくなった時。
♧)……
隆)……
そんなこと言ったら
毎日電話しちゃいそうなくらい
俺は♧の声が好きなんだけど…
♧)私の声が聞きたくなることなんて
ありますかー?
隆)あるよ。
♧)……私でお力になれれば…
隆)ぶっww
なんでそんな固いんだよw
隆)じゃあ電話する。
♧)はい。
隆)LINEもする。
♧)はい。すぐお返事できるか
わかりませんが、頑張ります。
隆)……
うーん…
なんか…脈なし?
隆)なんでそんな業務的なの…w
♧)えっ!そうですか?すみません!
なんか…本当に慣れてなくて…///
隆)……
そっか。
慣れてないからか。
隆)迷惑…とかではない?
♧)え、何がですか?
隆)俺のこと。
♧)え、迷惑って何がですか?
隆)……
何がと言われると…
♧)えっと…よくわからないですけど…
お友達になったってことですよね?
隆)……うん。
♧)私、今市さんのこと大好きだから
嬉しいですよー♡
隆)!!!!
なんて!???
さっきまで脈なしかって
ちょっと凹みそうだったのに
今度はいきなりそんな爆弾、
落としてくる!??
隆)だ、大好き…なの?俺のこと…
♧)はい♡
隆)/////
え、え、これって…
一気に、脈あり?!!
誰か教えて!!!
♧)私なんかとお友達になってもらって
楽しいかわかりませんが…
どうぞよろしくお願いします♡
隆)…っ
そう言って差し出された小さな手。
そのまま掴んで引き寄せて、抱きしめたい。
でも…
隆)……うん。
そんなこと出来るはずもなくて
ただぎゅっと、握っただけ。
♧)今市さん…腕に傷あるんですね。
隆)え?ああ、暗いのによく見えたね。
♧)……
隆)……
♧)お仕事ですかー?
隆)……
ええっと…
そういうのも込み込みで
俺は君とゆっくり話したいんだけど…
隆)うん、まぁ、そう。
♧)わぁ…
♧が俺の腕をそっと撫でた。
隆)…っ////
ヤバい。
…すげぇドキドキする。
え、ちょ、何してんの?///
なぜに俺の腕を、撫で撫で!??
♧)じゃあこれは今市さんが
頑張ってる証ですねー♡
隆)////
そんな風に優しく笑って
俺の腕を撫でる彼女を
もう抱きしめたい気持ちが、爆発寸前。
隆)…っ
♧)……
もう、ダメだ!!
隆)次の休み!!!いつ!!!
俺の大きな声に、
彼女が驚いたように顔を上げた。
♧)お休み…ですか?
隆)う、うん…////
はぁ…、落ち着け、俺。
♧)来週の火曜日です。
隆)火曜日…??
土日休みなわけじゃないのか?
隆)予定、ある?
♧)ないですよー?
隆)……ご飯、行こ。
♧)ご飯??
隆)うん。
♧)昼ですか?夜ですか?
隆)……
俺は普通に仕事だから…
隆)夜。
♧)わかりましたー。
隆)……
すんなりOKしてくれた彼女に
少し戸惑う。
意味、わかってる?
デートだよ?
♧)初めての男友達とおでかけ。
なんだか楽しみです♡
隆)……
ああ、やっぱりわかってない。
でもいいや。
火曜日、ガッツリ本気出します。
ー続ー
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