【12】冬の帰り道

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仕事も終わって
マネージャーに家の前まで送ってもらったけど

急にコーヒーが飲みたくなった俺は
すぐ近くのコンビニまで歩いた。


男)お前、行けって!
男)いや、やっぱ無理だ、どうしよう。


店の前で男3人が
すったもんだやってる。


男)話かけなきゃ始まんねぇって!
男)そうだよ!俺行ってくるか?
男)いや、待って、いや…でも…
男)早くしねーとまたタイミング逃すぞ!
男)だよな…よし…あ~でも…


なんだ?
この辺の高校生?いや大学生か…。


「いらっしゃいませ〜」


俺はそのまま店に入った。


甘い缶コーヒーを一本だけ取って
レジに並びながら、ふと外を見ると

さっきの男たちの前に
女の子が一人。

暗くてよく見えないけど
多分女の子。


男)あの、ずっと好きでした!!
  連絡先教えてもらえませんか?


ドアが開いて外に出た俺の耳に
飛び込んできたのは

周りなんて見えていなそうな
男の告白。


青春だねぇ〜♪
こんなとこですげーな…
頑張れ男子。


女)すみません…私、
  お付き合いしている人が
  いるので…。
男)じゃあ友達からでもいいです!!
  本当に好きなんです。
  お願いします!!


すげ~。
彼氏がいるって聞いても諦めねぇ。
よっぽど好きなんだな…

そんないい女なんか?

と、俺は興味本位で
女の顔が見える位置まで移動する。


臣)!!!!


は?!!!

♡だし!!!!!!

びっくりしすぎて二度見したわ!


頑張れとか
応援してる場合じゃなかった、俺。


♡)ごめんなさい。
男)どうしてもダメですか?
♡)あの…


でもなんか…おもしれ~かも…

缶コーヒーを開けて
ちょっと様子を観察。


男)こいつ、本当にイイ奴なんで。
男)連絡先だけでも
  教えてやってくれませんか?


側にいた友達も、助太刀し始める。


♡)いや…でも…
男)俺、こんなに誰かに
  心惹かれたの…初めてなんです。
♡)えっ…でも私のこと何も…
  名前も知らないですよね?


ははっ!w
冷静なツッコミしてるし!


男)そうですけど…
  いつも駅で見かけてて…
  ずっと気になってて…
♡)ごめんなさい。
  私、彼氏の事が本当に好きなんです。

臣)……


その彼氏って…
俺だよな?


♡)彼氏以外…
  絶対考えられないんで
  ごめんなさいっ!


♡が勢いよく頭を下げて
そのまま言い逃げしようとすると
男が♡の腕を掴んで引き止めた。


男)待って下さいっ…俺…俺…!!


あ、やべーな。
なんかヒートアップしてる。

つーか触るな!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


もうなんなの~??
何回も断ってるのにしつこいよぉ!!
やだ~!!誰か助けて…泣


♡)離してください!


私が掴まれた腕を
ふりほどこうとした瞬間、
いきなり横から片手で抱きしめられた。


えっ??


この匂い…


臣)はいはい、終わり~。


この声…


臣)ごめんね?
  これ俺のなんだ。

♡)臣くん?!!


振り返るとやっぱり臣くんで…

びっくりした!!
なんでいるの??

え?
え???


男の子達もびっくりしてる。


臣)いくら好きでも
  手は出しちゃダメっしょー。
  じゃーね。


男の子たちにそう言うと
臣くんは私の肩をそのまま抱き寄せて
歩き始めた。


♡)え?えっ!?なんで…
臣)うっせ。行くぞ。
♡)な、なんでいるの???
臣)コーヒー買ってた。
♡)え!えっ?!
  いつからいたの!??
臣)「ずっと好きでした。」から。
♡)え!!


そんな前から?!


♡)何…してたの?
臣)何って…
  コーヒー飲みながら見てた。
♡)えええ!!!
臣)♡さん、モテモテですね~
♡)ちょっと~信じらんない!
  見てたんならもっと早く来てよ~!
臣)なんか面白そうだったからw
♡)何それっ!!//
臣)ちゃんと助けてやったろ。


むぅぅ…

気付いてたのに見てたとか…
臣くんの意地悪…//


♡)もぉ~きらいっ
臣)ふーん?
♡)なに…


ニヤッと笑って
顔を近付けてくる臣くん。


臣)俺以外考えらんないんでしょ?♪
♡)~~っ!!!//


聞いてたんだ!


♡)盗み聞きとかずるいもんっ!!
臣)あはははっw


今度は無邪気な顔して笑い出した。
ほんとずるい…

そんな笑顔見たら
なんだって許しちゃうもん…
ばかぁ…//


臣)でも…
♡)え?
臣)…お前さ~、結構あんの?
  こーゆーこと。
♡)…え。な、ないよっ!
臣)ほんとに?
♡)…た…まに…知らない人に
  声かけられるけど…
臣)今みたいに?
♡)うーん…
  あんなしつこくはないけど…
  たまに変な人もいる…かも。
臣)は?マジかよ…


さっきまで
ふざけて笑ってた臣くんが
急に真剣な顔になった。


臣)…はぁ~~~~~
  お前さ…
♡)うん。
臣)変な奴いたら
  とりあえず逃げろ。
  近付くな。
♡)近付かないよっ!!
臣)そんで何かされそうになったら
  頭突きするか急所蹴って逃げろ。
♡)えっ?!!!
  きゅ、急所?!!
臣)そ。そしたら絶対
  男は動けねぇから。
♡)そんなことしたら捕まらない…?
臣)なんでだよ!w
  正当防衛だろ!
♡)そ、そうかな…
  わかった。
  よっぽど変な人いたらそうする…!
臣)あ~~~
  心配だな、もう。
♡)その割に見てたでしょっ!w
臣)いや…だって…
  そんな変な奴らじゃ
  なさそうだったし…
♡)むー
臣)いや、でもあれだよな。
  見た目だけじゃわかんねぇよな。
  いつ何されっかわかんねぇし…
♡)そだね…。
臣)ほんと気ぃつけて…。
♡)わかった。
臣)なんかされそうになったら、蹴んだぞ!
♡)あはははっw
  何かされそうになったらって…
  それ臣くんにも使えるの?
臣)は??
♡)臣くんに何か
  されそうになった時…
臣)なんでだよ!あほ!w
  お前は俺を
  再起不能にする気かっ!!w
♡)あはははっ!!w
  ごめん!うそうそ~!!


臣くんがこのやろ~って
片手で羽交い締めにしてきた。


♡)ごめんなさい~ww
  離して~!!
臣)ったく。


臣くんは腕を放すと
そのまま手を繋いでくれた。


臣)でもさ…ほんと。
  男にはぜってー力じゃ
  敵わねんだから。
  心配…。


繋いでる手が
ぎゅっと、強くなる。


臣)俺がいたら助けてやれっけど
  いつも一緒に…
  いてやれるわけじゃねーし…
♡)うん…
  …大丈夫だよ、ありがとう♡


そんな心配そうな顔、しないで。


♡)大丈夫だよっ!
  あ、そーだ!
  私…、空手でも習おっかな!
臣)空手ぇ?!
♡)うんっ♪
臣)はははっ 似合わねぇw
♡)EXILEみたいに
  ムキムキになっちゃうよ♪
臣)そんなお前やーだー
♡)あはははっw


きゅっと握り返すと
あったかい臣くんの手。

あったかい臣くんの温度…。


風はまだ冷たい、冬の帰り道。



ーendー

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