[6]涙にKiss

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明日から福岡だから
今日は早めに帰ってきたけど

玄関のドアを開けると
家の中は暗くて

一瞬ドキッとした。


♡がいなかった日々を思い出して。


でも…
今日遅くなるとか言ってなかったし

そーだ!
今日はクッキー焼くとか言ってたじゃん!

やっぱりいないのはおかしい!!


俺は荷物を置いて
すぐに♡に電話した。


プルルルル…、プルルルル…


臣)出ない……


え、どうしよう…
すげぇ心配なんだけど…


ガチャッ


臣)!!!!


俺が玄関へ走ると


♡)あ!臣くんが先だったぁ♡
臣)…っ


ぎゅっっ


♡)えっ??
臣)…っ
♡)どう…したの…?


良かった。帰ってきた。

良かった。


♡)臣くん…?
臣)おかえり…
♡)うん、ただいま♡
臣)……


そうだ。
♡はもういなくなったりしない。

なのに…


臣)あ…甘い匂いする。
♡)うんっ♡
  友達の家でクッキー作ってきたの♡


ああ…そうだったのか…
良かった。


♡)臣くんの分もいっぱい焼いてきたよー♡
臣)やったぁw
♡)臣くんも今帰ってきたの?
臣)ああ、うん。
♡)じゃあお風呂洗っちゃうねっ
臣)ああ、いいよ!俺やる!
♡)えっ
臣)お前は荷物置いてきな。
♡)あり…がとう…
臣)ん!

ぽんぽん♡


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


臣くんがお風呂を洗って戻ってきて…


♡)あのね、これが健二郎くんのー♡
臣)おおっ
♡)明日渡してね♡
臣)はーーいw
♡)それで、これは臣くんの♡
臣)ありがとうございます♡
  

臣くんが一つ摘んで食べた。


臣)今回はマーブルなんだ?w
♡)うんっ♡
臣)ん、相変わらず美味いw
♡)わーい♡良かったーー♡


臣くんがにっこり笑って
頭をなでなでしてくれた♡


臣)でもなんで友達の家??
♡)あ、あのね、
  友達の…、あっ、友達って
  昨日話した子ね、会社の。
臣)ああ!
♡)その子の好きな人がね、
  明日から出張なんだって!
臣)ほ〜〜〜
♡)で、差し入れ的な感じで
  一緒に作ろーってなったの♡
臣)へ〜〜〜女子ですなぁw
♡)その人の家に届けに行ってたよ。
臣)おおっ可愛いじゃんw
♡)嬉しいかなぁ?♡
臣)自分のためにクッキー焼いてくれて
  サプライズで届けてくれんでしょ?
  絶対嬉しいんじゃん?w
♡)だよねーー♡


◇ちゃん一生懸命作ってたしなぁ♡


臣)お前もいろいろ作ってくれたもんなぁ…
♡)え??
臣)付き合う前。
♡)あっ…


そういえば…
臣くんがいつもごちそうしてくれるから
そのお礼に…


臣)すげぇ嬉しかったもん。
♡)…ほんと?
臣)うん。
♡)……//


きゅっ…


臣)お、懐いてきたw
♡)……//


臣くんがクッキーを置いて
私を抱きしめてくれた。


臣)付き合ってから作ってくれたのも
  全部覚えてるよ?
♡)ほんと…?//
臣)ん♡
♡)……//


はぁ…
大好き…//


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺が風呂から上がると
♡は部屋でキーボードを弾いて歌ってた。

俺がドアを開けてもまた気付いてない。


♡)〜♪億千万通りの愛を
  この詩に込めて贈るよ♪〜


聞いたことない歌だな…


♡)〜♪何度でも君に恋してる
  君も同じだといいな♪〜


あ、気付かれた。


♡)臣くん!おかえり♡
臣)ただいま。
  いいよ?歌ってて。
♡)ううん、もういい〜〜


ぎゅっっ


♡が立ち上がって抱きついてきた。


臣)もういいの?
♡)うんっ♡
臣)……


続きちょっと聴きたかったんだけどな…


♡)お風呂あがりのほこほこ臣くん♡
臣)ん♡


ぎゅ……


♡)はぁ♡
臣)……


ああ…癒されるなぁ…
こうしてくっついてるだけで…

♡を抱きしめられるだけで…

ほんとに俺…幸せ。


臣)好き…
♡)……//


しばらく抱きしめて
そっと腕をゆるめると

♡が背伸びをして
俺の頬にキスしてきた。

チュッ…


♡)大好きだよ///
臣)……//


ぎゅっっっ


♡)わわっっ//


そんな可愛くキスされたら
そんな可愛いこと言われたら

また…離せなくなる。


♡)臣くん…//
臣)……


ああもう…
なんでこんな愛しいんだろ…

ダメだ。
やっぱり俺…一昨日から壊れてる。

♡が…好きすぎる。


チュ…ッ


首筋に小さくキスをして身体を離すと…


♡)////
臣)…っ


なんで…

そんなリアクションされたら…
俺が照れる…///


♡)あ、えっと…えっと…//
  土曜日の…動画…来たよっ//
臣)ああ、うん…見せて//
♡)うんっ//


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


どうしよう…
なんか…

臣くんのことが好きすぎるよぉ…//


ぎゅってしたくなって
チュッてしたくなって

もうずっと…くっついてたくなっちゃう///


♡)えっと…これだよ。
臣)おお!ほんとにピアノだ!
♡)うんっ


動画を再生すると
臣くんはじーーっと見てる。


臣)なんか…
♡)ん?
臣)お前って…
♡)??
臣)ほんと…すごいな。
♡)え??
臣)……
♡)??

ピッ

♡)あっ
臣)もーらいっw
♡)もらわれた…//


臣くんが私の動画を携帯に保存した。


臣)さくちゃんの結婚式も
  もう再来週だな。
♡)うんっ
臣)もう完璧?
♡)うん!もうバッチリ弾けるよ〜♡
臣)おおっ、楽しみじゃん。
♡)うん♡


それからパソコンを閉じると
臣くんが思い出したように立ち上がった。


臣)そーだ!さっきもらったんだ!
♡)え??
臣)明日発売のさ、あれ。
♡)あれ??
臣)俺らの雑誌。
♡)あーーーーっ!!


臣くんがバッグから雑誌を取り出した。


臣)これこれ!
♡)わぁ!臣くん表紙だ〜〜!!
臣)一緒に見ようと思って
  まだ中は見てませんw
♡)わぁっ!一緒に見よ〜〜っ♡
臣)うんw


二人でソファーに並んで
雑誌をめくった。


『あなたの知らない登坂広臣がここにいる。
 
 ーもしも彼女がいたらー

 初めて見せる素顔。
 優しい横顔。
 あどけない笑顔。
 
 愛しさが詰まった
 完全OFF、プライベートな1日ーー』


♡)わわわっ//
臣)いきなりこれか…//


最初のページは二人で笑い合ってる写真。
光のバランスが…すごく綺麗。

2ページ目からは
撮った順番に写真が並んでた。


♡)あれっ


臣くんが
ベッドで寝てる私の前髪を触ってる写真。


♡)こんなのあったの??
臣)お前、寝てたからねーw
♡)……//


臣くんが…すごく優しい顔してる//


♡)こうやって見ると
  臣くんの寝癖かわいい♡
臣)そうかー??w
♡)お水飲んでるのもすっごく綺麗だね!
臣)光加減がね〜〜
♡)臣くんの横顔が素晴らしいです♡
臣)ありがとうございますw


それから一緒に歯を磨いたり
朝ごはんを作ったり
洗い物をしたり


♡)なんか懐かしいねw
臣)うんw


この日の撮影…
すっごく楽しかったな♡


♡)臣くんがメガネかけてるの
  やっぱりカッコイイ♡
臣)お前も似合ってるじゃんw
♡)えへへ…//


臣くんにメガネをかけられて
頭なでなでされてるところが使われてて
ちょっと恥ずかしい…//


♡)わわわっ♡
  このへんいいねっ♡
臣)んー?


臣くんが靴を履いて
車に乗るところ。

キュンキュン♡


臣)サッカーしてる写真も
  綺麗に撮れてるなーーすげーーー
♡)ね!残像拳になってないね!
臣)うんww


二人で洗濯物を取り込んで
部屋のお掃除をして


♡)あ!臣くんが歌ってるー!!
臣)うわ…写真だけだと
  ギター弾いてるっぽい!w
♡)うん!
臣)詐欺だな…w
♡)あははは♡


ページをめくると
お風呂に入ってる臣くんが飛び出した。


♡)きゃーー//
臣)きゃーって何やねんw
♡)なんかエッチ…//
臣)いつも見てんじゃん!
♡)それとはまた別なのー!//
臣)ふーーんw


お風呂上がりに髪を拭いてもらったり
ドライヤーで髪を乾かし合ってるところも
なんかすごく楽しそうに撮れてる。


臣)俺、笑いすぎじゃない?w
♡)えーーだめ?
臣)いや、オフ感ありすぎないかと…w
♡)ふふーー♡
  これがいいんだよーー♡


最後のページは…


♡)わ…っ///
臣)……//


ベッドの写真。
こうして見ると…なんか恥ずかしい//


♡)おでこ…くっついてる…//
臣)うん…


私を見つめる臣くんの表情が
すごく優しくて…


♡)この写真…好き…//
臣)え…?
♡)なんか…キュンてする…//
臣)……//


この雑誌…
私の宝物にしよう♡

こんな風に
写真撮ってもらえることなんてないし…

キュンキュンな臣くんがいっぱいだから…


♡)あ、そうだっ
臣)ん?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


♡が立ち上がって持ってきたのは
♡が作ってくれたアルバムだった。

♡がいない間…
一人で泣きながら…めくったアルバム。


♡)これね、もう一回一緒に見たいの…
臣)……


今度は一人じゃない。
また俺の隣に座った♡を抱き寄せて
一緒にページをめくる。


♡)ふふ♡懐かしいね♡
臣)うんw


二人の笑顔と思い出が
いっぱい詰まったアルバム。



「ずっと…好きだったって…
 言ってくれたの…嘘だったの…?」

「嘘じゃない!!!」


臣)……


「好きなのはお前だったし
 お前に言った気持ちは何一つ嘘じゃない。」

「そんなの信じられないよっ!!」


あの日…そう言われた。

あんなに泣かせた。

信じられなくさせたのは、俺だ。


パラッ…


臣)この時さ、せっかく隣に座ってんのに
  子供にお前取られて
  賢司とさくちゃんに笑われたw
♡)え…?
臣)それから…
  お前が何の迷いもなく子供を庇って
  手に火傷して…
  ほんと危なっかしくて
  ほっとけねぇ奴だなって思った。
♡)…っ
臣)なのにそのあと元気に
  子供たちとサッカー始めるし…
  ほんと無邪気だなぁって思って…
♡)……
臣)その後、居酒屋でさ、
  恋愛話になって…お前が…
  今度は自分から好きになりたいとか
  言い出して…
  どうやったら俺のこと
  好きになってくれるかなぁって…
  必死でデートに誘った。
♡)あ…っ
臣)帰りの公園で。
♡)……


ずっと…好きだった。


臣)あ、これ、初デートw
♡)…っ
臣)お前がテラハの話で泣いてさ、
  料理長にすげぇ睨まれて
  めっちゃ怖かったw
♡)え、そうだったの?!
臣)うんw
♡)知らなかった…
臣)念願の初デートだったからさ、
  二軒目とか行きたかったんだけど
  あっさり帰るとかお前に言われて…
♡)えっ…
臣)でもやっぱり帰りたくなくて…
  屋上行ったじゃん?
♡)…うん。
臣)でもお前はスヤスヤ寝ちゃうし…
  俺全然男として見られてねぇじゃんってw
♡)はっ…


でも…一緒にいれるだけで嬉しくて…


臣)ああ、これ、海w
♡)……
臣)すげぇ楽しかった。
♡)……
臣)なんかさ、お前…
  いっつもニコニコ笑ってて元気なのに
  あの時…泣いてたのが
  頭から離れなくて…


無意識に思ったんだ。
♡が泣いてるのは嫌だって。

いつも…笑っててほしいって…


臣)……


旅行先でこのアルバムをもらった時は
二人で単に思い出を振り返ったけど…

今はアルバムをめくりながら
二人の思い出をなぞるように

俺がその時、♡をどれだけ好きだったか
一つ一つ話す。


二人で見た打ち上げ花火…
公園でした…線香花火…


豪雨の日に
暗闇に怯える♡も…

屋上で…涙を流した♡も…

守りたいって…何度も思った。


臣)Xmasプレゼントも…すげぇ迷って…
  隙間見つけて買いに行って…
  喜んでくれるかドキドキしてた。
♡)……
臣)全然時間なくて…
  それでもなんとか会いに行きたくて
  お前に電話したら
  俺に会えるのがすごく嬉しいとか
  言ってくれて…
♡)……
臣)俺も死ぬほど嬉しかった。
♡)……//


やっと会えて…ほんと嬉しくて…


臣)プレゼントもすげぇ喜んでくれたし
  お守りまでくれるし
  なんかもう…ほんと嬉しくて…
♡)……
臣)もしかしたら俺のこと
  好きなんじゃないかなとか
  そんな期待したりして…
  想像して嬉しくて死にそうになってたw
♡)……//


懐かしいな…

ほんとに俺…お前のことで
頭がいっぱいだった。


バレンタインもすげぇ凹んで…
♡に看病してもらって…

俺の風邪がうつった♡を
今度は俺が看病して…


俺の誕生日ーー


そこでやっと…
気持ちを全部伝えた。


臣)この日、お前に言った気持ちは
  何一つ嘘じゃないし
  今でも何も変わってない。
♡)……
臣)変わってないし…
  ここから一緒にいた分も
  もっと好きになってる。
♡)…っ
臣)口でいくら言っても…
  信じられないかもしれないけど
  俺は…
♡)……
臣)本当にお前が好きで…
  本当にお前が大事。
♡)…っ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そう言い終えた臣くんの目が
真っ直ぐに私を見つめた。


あんなにいっぱいお手紙書いてくれて
臣くんの気持ちはいっぱい伝わってたのに

それでもこうしてちゃんと言葉にして
伝えてくれる。


そんな臣くんの優しさに涙がこぼれた。


♡)あり…がとう…っ


ぐいっ

ぎゅ……っ


臣くんに抱き上げられて
ぎゅって抱っこされた。


臣)いっぱい泣かせて…ほんとにごめんな。
♡)(ふるふるっ)
臣)ごめん…
♡)ごめんじゃ…ないよっ

ぎゅっ…


臣くんに抱きついた。


♡)好きっ…
臣)…っ
♡)臣くんが大好き…っ
臣)……


ぎゅ…っ


♡)信じられないなんて言って…
  ごめんね?
臣)…謝ん…ないで…っ
♡)…っ
臣)お前はなんも悪くない。
  悪いのは俺。
♡)…っ


今ならちゃんとわかる。


臣くんはいつだって優しくて
いつだって私を想ってくれてて
大事にしてくれてた。


何一つ嘘じゃないし

私が見てきた臣くんが…
一緒にいた臣くんが…

私の「真実」なの。


なのに…あの時はいっぱいいっぱいで…


「そんなの信じられないよっ!!」


泣きながらあんな言葉をぶつけて
臣くんにあんな悲しい顔をさせた。


一人で家に帰ってきて
このアルバムを一人で開いた時も

苦しくてページをめくれなくなった。


でも今は違う。

臣くんが隣にいてくれて
臣くんの言葉が…気持ちが…

優しく心に溶け込んでくる。


♡)あり…がとう…
臣)…っ
♡)いっぱい…ありがとう。
臣)……
♡)大好き……
臣)…っ
♡)臣くんのこと…すごく大事。
  

ぎゅ……っ


♡)臣くんの気持ち…
  ちゃんと全部…伝わったよ…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そう言って
俺を優しく抱きしめる細い腕。
柔らかい身体。


♡)ありがとう…


泣きながら…何度もそう言うから…
俺まで……


臣)…っ


涙を隠すように
♡を抱きしめ返す。


伝わって…良かった。

こんなに好きで仕方なくて
愛しい気持ち…

ちゃんと全部…伝わったって言ってくれて…


♡)臣くん……
臣)…っ


♡が身体を起こしたから
俺は思わず顔を逸らした。


♡)…っ


♡はそのまま俺の涙を指でぬぐって
そこにキスをした。

チュッ…


♡)大好き、臣くん……
臣)…っ


右だけじゃなくて…左も…

チュッ


♡)だいすき♡♡
臣)……


俺も♡の頬にそっと触れて
♡の涙を拭った。


そして同じように…

チュ…ッ


♡)……//


チュッ…


♡)////


♡がはにかみながら俺を見つめた。


臣)何その顔…
♡)恥ずかしい…//
臣)お前が先にやったんじゃん…
♡)そう…だけど…//
臣)……
♡)……


見つめ合ったまま…顔が近付いて…


臣)……
♡)……


…kiss……


また…見つめ合って……


臣)……
♡)……


kiss……、…kiss……


どちらからともなく重なる唇。

お互いの「好き」に…
自然に引き寄せられるように……


…kiss…、……kiss……


柔らかく…優しく…
想いを重ねるように…


何度も何度も…
「好きだ」って…伝え合うように…


♡)は…ぁ……//
臣)……
♡)キス…気持ち…いい…//
臣)……//


♡が目を少し潤ませて俺を見つめた。


♡)……だいすき…
臣)…っ
♡)臣くん…だいすき…//
臣)///

ぽすっ……


キスに溶けてしまったように
♡は俺の胸に顔を埋めて…

そのまま…


♡)スー……、…スー………


幸せそうに眠ってしまった。


臣)ふは…っw


俺はそんな寝顔を見つめて
幸せを噛みしめる。


臣)……
♡)……
臣)ありがとう……


愛しい頬をしばらく撫でながら
寝顔を見つめて

そのままゆっくり、ベッドへ運んだ。



眠り姫を抱きしめながら

俺も静かに目を閉じる。


甘い甘い幸せを…

大事に大事に…包む込むように。




ーendー

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