【143】王族ランチ(◇Side)

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下ネタランチを経て
「チャラ男」という回答が出た次の日。

早速チャラ男から連絡が来て
家におしかけてきて

あのハグは
「チャラ男のハグ」ではなく
「帰国子女のハグ」だと知る。


脳みそフル回転させて悩んだ自分が
馬鹿馬鹿しくなったけど
ま、いっか、とホッとした。

男友達相手にドキドキしたことなんてないから
正体不明の感情に困惑してたし。


……って安心したのも束の間。



剛典はまた新しい爆弾を
あたしに落としてきた。


月曜日。

会社に来てからも…
あたしの頭の中は…
ずっとぐるぐるぐるぐる……


だって

ついさっきまで一緒にいたんだもん!

ついさっきまで…
ぎゅって…され…
あああああ〜〜〜////


どんなにお喋りしてても
手だけはテキパキと
キーボードを打ち続けてるのが
うちの部署の自慢なのに…!!

あたしはいつからこんな
使えない奴になったんだ!!

うわーーーーん!!!!!


ただいま…裏倉庫でサボり中です…


◇)はぁぁ…


もう…やだ…
ぐすん。


あたし…何した?
何言った?

一体何がどうなってああなった??


「くっついてるの…気持ちいい…」

「剛典…あった…かい♡」

「なでなで…嬉しい♡♡」


◇)…っ


のあああああっっ////

思い出しただけでも
顔から火が出る!!!

どうしたあたし!!!!

何を急に乙女モード全開になってんだよ!!

こんな…
こんなあたし…

彼氏の前でしか…
てゆーか彼氏の前でさえ
出したことないのに!!!!!


ほんとのほんとは
すっごく甘えたくて
究極の甘えんぼだっていうのは自覚してる。

でも…
「お姉ちゃんだから」って
親にはあまり甘えられなかったし

上の兄姉もいないし…

「彼氏」しかそれをぶつける人がいなくて

でも…
あんな素直に甘えたことないもん…


なんで…

なんで?!///


リアルに蘇る
剛典の腕の強さとか…胸の広さとか…
触れた肌のあったかさとか…


◇)////


生々しいっっ!!!
やめてっっ!!思い出さないで!!!
ばかーーーっ!!!
脳よ!!その記憶は封印しろー!!///



いっぱい…ぎゅってされて…

抱きしめられて眠るのって
こんなに気持ち良かったっけ…って

そう思ったら…なんか…


いや!!!!!

それにしたってあの乙女モードはない!!
おかしい!!

いくら剛典のぎゅーがあったかくて
なでなでが気持ち良かったからって…

あんな簡単に
ふにゃふにゃになっちゃうなんて…

あたしのバカ!!!
しっかりしろ!///


剛典は帰国子女だから
いっぱいハグしてくるけど…

「練習のハグ」
「友達のハグ」
「挨拶のハグ」
「落下防止のハグ」
「おやすみのハグ」
「お礼のハグ」

全部ちゃんと…
意味があるんだから!!

変な意味じゃないんだから!!

あたしばっかりドキドキしてたら
おかしいんだよ!!



でも…


「お前…ほんと可愛いなw」

「ドキドキしてろよ。」

「もっかい…ぎゅってしていい?」

「…どうしよう…、離したく……ない…」

「やべーな//」


◇)うううう///


うわーーーん!!!!


思い出せば出すほど
ドキドキしてパニックになる!!!

誰か助けて!!///

何なのあれ!!
あんな…

あんなドキドキ爆弾を
いっぱい仕掛けてきて…

最後はにっこり笑ってほっぺにキスして
「じゃあね♡」って…

あいつは悪魔なの?!///

帰国子女のバカッッ!!!!




こんなところでサボってるのも限界だと
デスクに戻ると

人が全然いなくなってて
とっくにランチの時間になってたと気付く。

あたしほとんど仕事してないじゃん!
これが給料泥棒ってやつ?!
勝山社長!ごめんなさい!!


今朝はパニックながらに
朝ごはんを作るだけでいっぱいいっぱいで
お弁当は作れなかった。

でも…ランチに誘う人も残ってないし

たまには一人で食べに行くか。

どーせ今日は誰かと一緒でも
会話に集中できない自信があるし。


ビルの上の食堂に行くと
出遅れた自分を反省するほど混みあってて
一人分の席を探すのにさえ苦労した。

あ!あそこ空いてる!
よっしゃ!!


「本日のランチ」が乗ったトレイを抱えて
その空席まで小走りで近付いて
あたしは気が付いた。

その残された一席が
王族の方々の隣の席だということに…!!


ど、どうしよう。

でもここを逃したら
もうほんとに空いてないし…


あたしはおずおずその空席にトレイを置いて
気配を消しながら座った。

ひゃ〜〜〜〜
緊張する…//

こんな神々しい王族の横で
一人ランチすることになるとは…

剛典めーーー!!!
関係ないけど全部あいつのせいにしてやる!!



あたしが勝手に「王族」と呼んでる4人は
うちの会社じゃ知らない人はいない
有名な4人で…

まずはあたしが隠れファンをやってる
あの「姫」さん。

そしてその姫さんの親友だという
超美人の「女王」さま。

ジャニーズにいそうな超イケメンの
「王子」さまに…

あたしの憧れ…
「王様」レベルに素敵なJさん。


こんな美しい4人が
揃っていいのかと思うほどに美男美女!!
まさに「王族」!!

こんな平民の町娘みたいな奴が
隣でご飯食べてごめんなさい!!

とか謝りつつも…

王族がどんな話をしてるのか
平民としては気になるわけで…

こんなチャンス滅多にないし
聞き耳を立てながら…もぐもぐもぐ…


M)てゆーかぁ〜
  私ずっと思ってたんですけど〜〜
  Tさんは相性もわからないのに
  そんなに先輩のこと好きで
  もしも万が一相性が最悪だったら
  どうするつもりなんですかぁー?
T)ぶっっ


なんと!!
同じく町娘みたいな女の子の質問に
王子が吹き出した!!


T)あ、相性って…
M)Hの相性ですよ♡
T)はぁ?!//
K)お前はいきなり何の話やねん。


女王様…さすが冷静なツッコミ…
素敵です…


♡)Hの…相性…??
M)そうですよぉ〜〜
♡)え、相性って…なぁに??
M)え…っ
♡)???
M)相性。あるじゃないですか。
♡)???
M)あ、そっか、
  先輩は登坂さんしか知らないから
  わからないんだ!


ん??
今…トサカって言った?


J)えっっ
T)は?!
J)そう…なの?


はっ!!
私の憧れ、Jさんまで
若干動揺しているのがわかる!
ドキドキ!!


J)姫…、登坂くんしか知らないの?
♡)////
M)そうですよ〜〜♡
  先輩は登坂さんに初めてを
  捧げたんです〜〜♡
♡)ちょっと!Mちゃん!!///
  やめてよぉぉ!!
J)……
T)……


恥ずかしそうに顔を隠す
可愛すぎる姫と…

言葉を失う男二人…

もしかして…


T)なんか…余計ムカついてきた。
K)何がじゃい。
T)……くそーーーッ
K)♡が臣広しか知らないのが?
  それとも臣広が初めてを奪ったのが?w
T)どっちもだよ!!!
J)……


Jさんは…
何も言わないけど

あたしがたまに見かける
ジェントルマンの顔じゃ
なくなってるのだけは確か。


あたしの「もしかして」が
確信に変わった。


前からこの二人が
姫さんを好きだって噂はあったけど
それはほら、

平民たちが面白がって
王族の噂を好き勝手にあれこれ喋ってるだけの
ただの「噂」だと思ってたから…


でも…
ほんとにこの二人、姫さんが好きなんだ。

そして姫さんは…
お初を捧げた彼氏がいる、と。
うん、メモメモ。


M)でも先輩、登坂さんしか知らないなら
  もしかしてもしかして
  TさんとしてみたらTさんとの方が
  相性抜群かもしれないですよぉ〜♡
T)ぶっっ


町娘!!!
お前はさっきからものすごい爆弾を
投げ続けるな!!

もしや剛典の仲間か?!


♡)だから…相性ってなに??//
M)相性良い人と悪い人じゃ
  Hの気持ち良さがぜ〜〜んぜん
  違うんですよぉ〜〜♡
♡)えっっ!!
M)ね、Jさん♡
J)俺に振る?w
M)はい♡
  先輩何も知らないみたいだから
  解説お願いしまーす♡


なんと!!
Jさんにそんなことを解説させる気?!
町娘!!ますます侮れん!!


J)まぁ…Mちゃんの言った通りですよ。
♡)えっっ
J)相性の良し悪しを決めるものさしも
  人それぞれ違うと思うから
  なんとも言えないけどね〜〜
♡)ど、どんなものさしがあるんですか?!
J)えっw


姫さんが…!!
あの可愛い姫さんが…食いついている!!

てゆーか…
会話から察するに…
姫さんは知識がなさすぎてピュアすぎる!!
天然記念物かもしれない!!


J)どんなって言うと…まぁ…
  昼間っから話す話ではなくなるけどw
♡)はっ!!!
  ごめんなさい!!///


さすがJさん、常識人だわ。


K)いや、それを言うなら
  もうとっくに昼間の会話じゃないけど。


確かに!!!
しょっぱなから下ネタすぎたし!!!

女王はクールなツッコミ役なんだな。
うん、メモメモ。


J)まぁ気になるなら
  手取り足取り教えてあげてもいいけど♡
♡)???


Jさんが…!!!
昼間っから姫さんにHのお誘い?!
嘘でしょ!?

そしてそれに全く気付いてない姫さん!!!


M)私にも教えてくださーい♡
J)Mちゃんは教えなくても
  熟知してるでしょw
M)あははは♡
♡)???
M)でもほんと…
  してみないとわかんないから
  Tさんとお試ししてみたらどうですか?
♡)はい???
M)Hのーー♡
♡)はぁ?!!!
  す、す、するわけないでしょー!!///
M)もったいないなぁ…
♡)何言ってんのー!!!
K)まぁまぁ、ほら、価値観の違いだよ。

ぽたっ

M)きゃーー!
  Tさん大丈夫ですか?!!
  ティッシュ!!これ!!
T)////
J)いきなり鼻血ですか。
T)////
M)も〜〜〜
  先輩とのH想像したんでしょ〜〜
  Tさんってば〜〜
♡)はぁ!??//
T)してねーよ!!//
M)うそつきーーーw
T)////
K)ほんと騒がしい奴だな。
T)うるせー!//


なんと…王子が鼻血を出してしまった…
王子もピュアなのか…?


M)でも、Hの相性っていうのは
  それくらい大事だって話ですよ!
K)まだその話続けるんかい!w
J)うん、大事大事。
M)それで別れたりする人も
  いっぱいいるんですよー?
♡)えっ!そうなの?!
M)そうですよーーー
♡)え、え、どうしよう…
  相性は…どうやったらわかるの?!
M)そうですねぇ…
J)まぁお互いの共通認識でもないからね。
♡)え??
J)片方が相性良いと思ってても
  もう片方が悪いと思ってる場合もあるし。
♡)ええええっ!!
J)本人のみぞ知るってとこかな。
♡)そんな……
M)でも相性良いと思ってるかどうかなんて
  反応見てたら大体わかりますよー
J)Mちゃんはまだまだ子供だなーw
M)えっ!!
J)くすくすw
M)……//
♡)私っ、もう聞いてみる!!
M)えっ!!!
♡)直接聞いてみる!!
M)えっ!!!
♡)だって…本人に聞かなきゃ
  わからないんでしょ?
J)あはははははw
♡)帰ったら…聞いてみよう…//


姫さん…なんて素直なんだ…
そんな可愛い顔して
彼氏になんて聞くんですか?

「私とのHの相性ってどうですか?」
とか聞いちゃうんですか?

大丈夫かな…

なんともほっとけないような人だな…


てゆーか!!!

まさか王族の方々が
こんな昼間っから下ネタランチしてるなんて

やっぱり王族も…人間なんだな…

ああでもやっぱり…
何度見ても絵になる4人。


はっ!!

王族が席をお立ちになった!!

はっ!!

姫さんと目が合った!!!!!


♡)にこっ♡


あたしに会釈した姫さんに気付いて
Jさんがあたしを見た。


J)ああ、「お嬢」だ。
◇)!!!!


なんと!!!
Jさんがこんな平民をご存知だった!!!


T)お嬢??
J)姫、お嬢と知り合いなの?
♡)あっ、たまに…


姫さんがあたしの顔を見て
にっこり笑った。


J)システム開発部のアイドルだよ。
T)へ〜〜


Jさんのとんでもない紹介に
「アイドル」と呼ばれる価値があるのか
瞬時に王子に見極められてるみたいで
背筋が凍る。


J)俺も何度か話したことあるよね。
  …って、覚えてないかw


え!!!!!

ほんとに覚えてくれてるの?!
それともただの社交辞令!??

ひえええ〜〜〜〜〜


M)Jさんがナンパしてる〜〜〜


町娘が不満そうに口を尖らすと
そんなんじゃないよと笑って
Jさんはあたしに会釈をして
そのまま出口へ向かった。

姫さんはあたしに
可愛く手をパタパタ振って
その後に続いた。


◇)……っ


び、びっくりしたぁぁぁぁ……

まさか王族の方々に話しかけられるとは!!

てゆーかまさかあのJさんに!!!!


◇)////


カッコ良かったなぁ〜〜♡♡♡



今日はあたしが出遅れたせいで
ランチ後の歯磨きタイムで
姫さんと会うことはなかったけど

Jさんと姫さんの笑顔が見れて
今日はそれだけで
なんだかほっこり得した気分♡


と思ってたら
デスクに戻ってすぐ携帯が揺れた。

画面には剛典の名前。


忘れてた!!!!

王族に圧倒されて忘れてた!!!!


あたしの今日の悩みの種!
剛典!!!


恐る恐る画面を開くと…


『今日のロケ弁は
 叙々苑の焼肉弁当。激ウマ。
 いいだろーー😁🎵』


◇)……


あたしなんて…

あたしなんて今日…
王族の横でご飯食べたんだからね!!!

…って
何をあたしは張り合ってんだ。


そうじゃなくて。


心を落ち着かせて
もう一回画面を開くと
今度は写メが送られてきた。

ドラマの撮影なのかな?

小さな女の子と仲良く笑ってる写真。

無邪気な子犬みたいな笑顔。


◇)……//


剛典は友達。

ちょっと距離感間違えちゃう
帰国子女だけど

悪い奴じゃないし
一緒にいて楽しいし
あたしは剛典が好き。


だからもう…

ドキドキなんてしない!!!


剛典だって言ってたもんね!
こんな女友達、あたししかいないって。


きっと剛典は…
こんな仕事してるし…
女友達作りたくてもなかなか作れないんだよ。

それに…モテるって言ってたし…
ちゃんと友情を築くのも
きっと難しいんだ!

だったらあたしがなってやる!!
剛典の「女友達」第1号に!!


神様。

もし次、剛典が何かしてきても
ドキドキしたりしない鋼の心臓を
あたしにください。

「友達」を貫ける鋼の心臓を。



ーendー

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