臣)なんか…大丈夫だった?
うちの母ちゃんw
♡)え?何が?
臣)なんか…ちょっと天然っつーか…
♡)全然だよー♡
すっごく楽しかったー!
お母さん大好きー♡♡
臣)それなら良かったw
♡がニッコリ笑ってくれて安心した。
♡)私までご馳走になっちゃってごめんね?
ありがとう。ご馳走さまでした!!
臣)いや、全然。
♡)一足先に鍋食べちゃったねー♡
臣)ああ、ほんとだ!w
♡)さくちゃんに怒られちゃうw
臣)あはははw
それからタクシーが♡のマンションに着くと
俺は一緒に車を降りた。
♡)え…?
臣)んーーと…、明日休みでしょ?
♡)うん…。
臣)折角会えたし…
まだちょっと話したい。
♡)え…///
臣)あ。
ふと空を見上げると
今日は晴れみたいで…
臣)すっげぇ半月!!
♡)え…?あ、ほんとだ!!
臣)めっちゃくっきり。
♡)わぁ~~!キレイだね!!
臣)今日は珍しく星も出てんなーー
♡)ほんとだー♡
あ!屋上行くー?
臣)あ、いーね!
♡)わーい♪天体観測だ~♪
二人でエレベーターに乗って、
屋上まで上がった。
臣)おお、久々。
♡)私も花火以来だよー!
臣)え?
♡)臣くんと…観たでしょ?
臣)ああ!あれから来てないの?
♡)うん!!
ああ、やっぱり気持ちいいなー♡
臣)うん。
夜風は少し冷たいけど、
天体観測にはもってこい。
♡はフェンスまで歩いていって
空を見上げた。
♡)半月~~♡
臣)……
なんか…
この場所に来ると…
花火もだけど…
手繋いだこと思い出すな…。
あん時…
めっちゃドキドキして
こいつの顔見れなかったんだよな…。
それを誤魔化すように…
必死に、花火を見上げて。
♡)へへ、綺麗だね♡
臣)……うん。
月の光が、♡の髪をキラキラ照らしてて
すげぇ綺麗。
♡)臣くんは…お母さん大好き?
臣)なんだよ急にw
♡)お母さんと話してたら…
本当に臣くんのこと
大好きなんだなぁって
今日何回も思ったから♡
臣)ふーん…。
俺の話もしてたんだ…。
♡)臣くんすっごく愛されてるなぁって♡
臣)……//
♡)あ…、照れてるでしょ♡
臣)別に!
♡)あははは、可愛い~♡
臣)やーめろ//
♡がからかうように
俺の顔を覗いてきて。
臣)お前のお母さんは…どんな人なの?
♡)私のママー??
は、ねぇ…
臣くんのお母さんとは
また全然タイプが違うかなぁ。
臣)そうなの?
♡)うん。
明るいところは一緒だけどw
私のママは…
すっごくサバサバしてて
なんでもズバーッ!!ってカンジ。
臣)ズバーっと何?w
切り裂くの?w
♡)うーん、
オブラートには包まないかもw
臣)あはははw
なんか意外だな。
♡とも全然違うタイプみたいで。
♡)でも裏表なくて好きだけどw
臣)そうなんだ。
♡)うん!カッコイイんだよー♡
臣)へ~~~
♡)えへへ♪
臣)お父さんは?
♡)え?
臣)どんな人なの?
♡)パパ…は…
臣)……
♡)……強くて、優しい人。
♡がにこっと笑った。
♡)いっつもいっぱいの愛情で
私と瞬を…
家族を…包んでくれてたの。
臣)……
♡)私がね、パパ大好き♡って言うと
いっつも少し照れたように笑うの…
その笑顔が大好きだった。
臣)……
少し、引っかかる。
♡)パパも…
私の笑顔が大好きだよって
いつも…言ってくれてたんだ。
臣)……
なんで…
過去形なんだ…?
♡)パパは…
臣)……
♡)私が8歳の時に…死んじゃったの。
交通事故で…。
臣)え!!!
♡)……
臣)……
知らなかった…
…そう…だったんだ…
あ…
もしかして…
臣)…っ
だからこの間、泣いてたのか?
お父さんの夢見て…
臣)……交通事故…?
♡)うん。
土砂降りの雨の日で…
本当に雨がすごくて
家は停電になっちゃって…
臣)……
♡)やっと電気が戻ったと思ったら
電話が鳴って…
病院からだったの。
臣)……
♡)車のブレーキが
雨で利かなくなったみたいで…
臣)……
停電の…日…?
臣)だから…暗いのダメなの?
♡)……
臣)……
♡)わかんないけど…そうなのかな?
真っ暗になると…
すっごく怖くなるっていうか…
臣)……
めちゃめちゃ怯えてたもんな…
トラウマ…なのかな…。
♡)あはは、そんな顔しないで♡
臣)え?
♡)私ね、パパが大好きなの♡
本当に大好きなの♡
臣)……
♡)会えなくなっちゃったけど…
パパが大好きって気持ちも
ずっと消えないし、
パパがたくさん愛してくれた記憶も
ちゃんと残ってるから…
臣)……
そう言って♡はまた、にこっと笑った。
臣)そっか。
♡)うん。
臣)ほんとにいいお父さんだったんだな。
♡)うんっ♡
♡の顔を見てたらわかる。
本当にたくさん、愛してもらったんだなって。
臣)寂しいな……
♡)……え?
臣)会えなくなってさ。
♡)え……
臣)……
♡)寂しく…ないよ?
臣)え…?
♡)寂しくないもん。
臣)……
♡の表情が変わった。
なんで…
臣)だって大好きだったんだろ?
今も大好きなんだろ…?
♡)うん。
臣)だったらやっぱりさ…、
会いたくなんじゃん。
♡)……
臣)そんな大好きな人に…
会えなくなっちゃうのは
やっぱり寂しいなって…
♡)寂しくないっ!!
臣)え…っ
なんで…さっきから…
臣)……
♡の様子がなんかおかしい。
臣)…どうした?
♡)私、寂しくなんかないもん!
臣)…っ
♡)パパがちゃんと愛してくれてたって
わかってる…
わかってるもんっ!
臣)うん。
♡)だから…っ
臣)愛してくれてた記憶があるのと
寂しくないかどうかは別だろ?
♡)え…?
臣)……
♡)……
俺の言葉に、
♡は少し止まって下を向いた。
♡)だって…
臣)……
♡)寂しいなんて…思ったら…
臣)……
♡)悲しく…なっちゃうでしょ…
臣)…うん。
♡が…ポツリポツリ、話す。
♡)パパは…私にはいつも
笑顔でいてほしいって…
そう言ってたの…。
臣)うん…。
♡)大好きな家族に会えなくなって
一番ツライのは…パパでしょ?
臣)……
♡)それなのに…
私が寂しいなんて言ったら…
パパが…悲しむもん…っ
臣)……
♡)だから…
♡は唇を固く結んだ。
必死に涙を堪えてる顔…。
臣)……
お父さんに会えなくなって…
自分だってツライはずなのに…
そんな自分のことよりも
お父さんの気持ちを先に考えて…
寂しいって口に出さず
無理してきたんだろうか…。
臣)大好きな家族にさ…
♡)……
臣)会えなくなって…
お父さんももちろんツライと思うし…
お前にはいつも笑顔でいてほしいって
きっと今でも思ってると思う。
♡)……
臣)でも…
でも、きっと…。
臣)ツライ時とか悲しい時にまで
無理に我慢して笑っててほしいとは
思ってないんじゃないかな…
♡)…どう…して?
臣)……
♡)……
臣)大事な娘が…泣きそうな時に…
♡)……
臣)誰かが側にいてくれますように…
側で支えてやってくれますように…
泣ける場所が…
ちゃんとありますようにって…
♡)……
臣)俺ならそう思うと思うから。
♡)…っ
自分が側にいてやれない分、
きっとそう思う。
臣)自分の心に無理しないで
泣きたい時は泣いて…
笑う時は心から笑って…
♡)……
臣)そんな風に
自分の気持ちに素直になれる環境で
幸せでいてほしいって…
そう思う。
♡)…っ
臣)俺がお父さんだったら…。
♡)…っ
俺がそう言うと、
♡の目にはみるみる涙が浮かんで…
♡)…じゃあ…
………泣いても…いいの…?
臣)え…?
♡)本当は…寂しいって…
臣)……
それはきっと、
♡がずっと我慢してきた…本当の気持ち。
♡)パパに会いたいって…
思っても…いいの?
臣)うん。当たり前じゃん。
♡)…パパは…悲しまない?
臣)自分に会いたいって思ってくれて…
なんで悲しむんだよ。
♡)…っ
臣)お父さんだって…
お前に会いたいって思ってるよ。
俺がそう言うと、
♡の大きな瞳から…
一気に涙がこぼれ落ちた。
♡)ほん…とは…
ずっと…寂しかったっ…
臣)うん。
♡)パパに会いたくて…っ
会いたく…て…
臣)うん。
♡)もう会えないって…
わかって…るのに…っ
臣)…っ
あまりにポロポロと涙をこぼすから、
俺は思わず♡を抱きしめた。
♡)パパは…あんなに愛してくれたのに…
寂しいなんて…思って
ごめん…なさっ…い、…っ
臣)うん。
♡)ごめ…なさ…、っ…
臣)謝ることじゃねーよ。
♡)…っ、…ふぇ…っ…
臣)愛されてたって…
その愛情をちゃんと感じてたからこそ
失って寂しいって思うんだろ?
♡)…う…、…うっ…
臣)寂しいって思ったからって
その愛情が消えるわけじゃない。
♡)うううっ…っ…
臣)だからもう…無理すんな…。
♡)わぁぁぁんっ…
♡は俺にぎゅっとしがみついて、
思いきり泣いた。
臣)…っ
今までずっと我慢してた気持ちが
一気に溢れたみたいに…
ひとしきり泣いて。
俺は…
そんな♡を抱きしめたまま、
ずっと背中をトントンとたたいてた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どうして…
どうしてだろう…
臣くんの言葉が…
スーッと胸の中に染み込んできた。
大好きなパパが急に消えてしまったあの夜。
私は布団の中で声を押し殺しながら
一人で涙が枯れるほど泣いた。
でも…
パパが死んじゃったことで
誰かの前で泣いたりはしなかった。
ママや瞬の前でも…ハルくんの前でも
絶対に泣かなかった。
自分一人の時にしか。
パパを最後見送る時だって…
絶対…
絶対泣かないって決めて…
私が泣いたりしたら…
パパが悲しむから…
私はいつも笑ってるんだって…
きっとパパが空の上から見てるからって…
ずっとそう思って生きてきたのに。
どうして…
どうして臣くんの前だと
こんなに涙が出るんだろう…
♡)ふぇ…っ…
臣)……
♡)私…無理…してたの?
ずっと…
臣)無理っていうよりは…
頑張ってたんだろ?
お父さんのために。
♡)……っ
パパのために…?
そうだ。
私は…パパに笑っていてほしくて…
臣)お前はほんと…
自分のことより人のことを
先に考えるんだな。
♡)……
臣)強くて優しい。
お前のいいところだと思う。
♡)…っ
パパが言ってた。
強くて優しい子になるんだよって。
私…
ちゃんとなれてるの…?
臣)でも…たまにはちゃんと…
自分の気持ちも大事にしろ。
自分の…気持ち…?
♡)……
臣くんが…
ずっと優しく…
背中をトントンってしてくれてて…
このぬくもり…覚えてる。
あ…そうだ…
この間…パパの夢を見た時…
夢の中でパパがずっと
背中をトントンって……
♡)……っ
え……
あ……っ
あれ…もしかして…
臣くんだったの…?
♡)…っ
私は臣くんの顔を見上げた。
臣)どうした?
♡)前も…
トントンって…してくれた?
臣)え…?
♡)……
臣)…っ
♡)……
臣)…知らね…///
臣くんはそう言ってまた私を抱きしめた。
♡)……
私がパパの夢を見てる間…
きっと…
こうやって優しくぎゅってしながら
ずっとトントンって
してくれてたんだ…。
臣くん……
そんな臣くんの優しさに
心があたたかくなるのを感じた。
臣くん…
ありがとう。
私…きっと…ほんとはずっと
気付いてたのかもしれない。
臣くんだけは他の人と違うって
最初からわかってた。
でも…
そんな初めての感覚に戸惑って…
自分でもよくわからなくて…
でも…
側にいると嬉しくて…
心があったかくなって…
気付いたら素直な気持ちになれてたり…
臣くんのために出来ること
何かないのかなって思ったり…
もっと臣くんに笑っててほしいって
そう思ったり…
♡)……
その人の幸せを願う気持ちが
「好き」って気持ちだって、
お母さんが教えてくれた。
私…、
臣くんのことが好きなんだ。
ほんとはずっと…
好きだったのかな。
臣くん……
…好き。
臣くんが…好き。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
泣いてる♡をずっと抱きしめてると
♡がギュッと俺を抱きしめ返してきた。
臣)……
俺はそのままずっと、
♡の背中をゆっくり優しくたたいて…
なんか…
色々思い返してみると
全てが繋がる気がした。
さくちゃんが海で話してくれた話も…
自分の幸せを願ってくれる大切な人のために
幸せになる義務があるって…
あれ…きっと
一番はお父さんのことだよな…。
臣)……
大切な人にいつ会えなくなるか
わからないから…
自分の大事な気持ちは
いつでも素直に伝えたいって言ってたのも…
突然会えなくなる痛みを知ってるから。
♡がいつも一生懸命なのは
いつも元気に笑ってるのは
お父さんの愛情が…
お父さんへの愛情が…
あるからなのかな…。
きっと…
本当に愛されてたんだろうな。
臣)……
大切な人を突然失って
絶対寂しくて辛かったはずなのに…
こんな小さな身体で…
ずっと頑張ってきたんだ。
そんなこと感じさせないくらい
いつも笑顔で…
臣)…っ
そう思ったらなんか
胸が締めつけられるようだった。
守ってやりたい。
ずっと側にいてやりたい。
そう思った。
♡)…臣く…ん…
臣)……
♡)あり…がとう…。
♡は俺からそっと離れると
にこっと笑って、涙を拭いた。
♡)えへへ//
いっぱい泣いちゃった!!
臣)うん…。
♡)あ~~スッキリした!!
臣)……
♡)パパがいつも言ってたの。
臣)……
♡)私や瞬や…家族みんな…
いつも幸せでいてほしいって。
臣)うん…。
♡)だから…
自分の大好きな大切な人が
そう願っててくれるなら…
私はちゃんと幸せにならなきゃ!!
臣)……
♡)それに…パパにも
幸せでいてほしいから…
臣)……
♡)私の笑顔がパパの幸せだって
そう言ってくれてたの。
臣)……
♡)だから…いっぱい笑って
ちゃんと幸せになる♡
そう言って笑って見せた♡の瞳は
キラキラ滲んで、本当に綺麗だった。
♡)だから…パパ、見ててね♡
♡はフェンスにつかまりながら
空を見上げてそう言った。
♡)でも…それでも…
それでもやっぱりたまに…
パパに会いたくなっちゃったら…
臣)……
♡)その時は…また…
泣いちゃうかもしれないけど…
臣)……
♡)…いーい?
♡が俺の方を振り向いてそう言った。
臣)いいよ…?
もう我慢しなくていい。
俺が側にいるから。
泣きたい時は
俺がいつでもお前を抱きしめるから。
好きなだけ、泣いていいよ…。
臣)……
♡の頭にそっと手を乗せて、
柔らかい髪を撫でると…
♡)えへへ…///
♡がはにかんだように笑った。
♡)臣くんありがとう♡♡
臣)え…?
♡)臣くん大好き♡♡
臣)え…っ
♡)大好きだよ♡♡
臣)………////
あ…りがと…///
ーendー
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