【109】思い出の屋上

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【109】思い出の屋上
 
家を出て車に乗ると、
エンジンをかける前に
臣くんが左腕を伸ばしてきた。
 
 
臣)ん。
♡)え…?
臣)ん。
♡)…っ
 
 
私が身体を寄せると
ぎゅっと抱きしめてくれて…
 
 
♡)……。
 
 
すっぽり包まれた臣くんの腕の中は、
すごくあったかい…。
 
 
♡)……どうして?
臣)んー?
  ……さすがにさっきは
  出来なかったから。
♡)え…?
臣)ん。
 
 
ぎゅってしながら
背中をトントンしてくれてる。
 
 
もしかして…
 
私が…泣いたから?
 
 
だから…
ぎゅってしてくれてるの?
 
 
♡)臣くん…。
 
 
さっきは…
 
ぎゅっ…じゃなかったけど
でも…
 
手を握ってくれたり
肩を抱いてくれたり…
 
臣くんのあったかい気持ち、
いっぱい伝わったよ?
 
 
♡)臣くん…、
臣)……。
♡)…ありがとう…。
臣)……。
 
 
臣くんは…何も言わずに
ただぎゅって抱きしめてくれて
 
しばらく背中をトントンって
優しく叩いてくれた。
 
 
臣)……。
 
 
それから私の顔を覗き込んで
優しく笑った。
 
 
臣)行くか。
♡)……うん///
 
 
エンジンをかけて車が走り出すと、
 
もう外は…真っ暗で…
 
 
♡)……。
臣)……。
 
 
私…ほんとは…
自分でもびっくりした。
 
 
瞬があの歌を歌ってくれて
パパとの記憶が一気によみがえって
 
無性にパパが恋しくなって
……気づいたら涙がこぼれてた。
 
 
今までは…そんな時はいつも
絶対泣かない!!って…
ぐっと我慢してたのに…
 
 
そんなこと何も考えずに
普通に涙がこぼれたのは
 
きっと、
 
臣くんが隣にいてくれたから。
 
 
自分の気持ちを大事にするんだよって…
臣くんが教えてくれたから。
 
泣いてもいいよって…
臣くんが言ってくれたから。
 
 
 
臣)まっすぐ帰っていいのー?
♡)え??
臣)もう行きたいとこ、ない?
♡)行きたい…ところ?
臣)うん。
  折角今日、車だし。
♡)……。
臣)…どっかありそうな顔。
♡)えっ!!
臣)どこ?
♡)……。
 
 
さっき、思い出した場所。
 
臣くんが…
優しく背中をトントンしてくれた…、
 
 
臣)どこ行きたい?
♡)えっと…
  ……どこでもいいの?
臣)いいよ?
♡)……屋上…、行きたい。
臣)屋上??
♡)うん。
臣)どこの??
♡)前の…おうちの…
臣)ああ!!
 
 
それだけで臣くんは
わかってくれたみたいで…
 
 
臣)…よっし、じゃあ行くか!
 
 
そう言って、笑ってくれた。
 
 
臣)約1年ぶりじゃない?w
♡)うんっ!
臣)まだ入れるかな?
♡)暗証番号変わってなければw
臣)まぁ寅さんいつ来てもいいって
  言ってたしなーー
♡)うん♡
 
 
マンションに着いて
車から降りると
 
雲の間から綺麗な月が見えた。
 
 
臣)懐かしいなーw
♡)うんっ!!
 
 
もう夜だし寅さんはいなくて
私は前と同じように鍵を開けた。
 
 
二人でエレベーターに乗って
屋上の番号を押すと
 
ドアが開いた。
 
 
♡)変わってなかった!
臣)よかったw
 
 
屋上は…前と同じで
ビーチチェアーもまだ置いてあって…
 
 
臣)おお…懐かしいw
♡)うん!懐かしい〜〜♡
 
 
臣くんと初めてデートした日、
ここで一緒に満月を見て
 
それから
花火も一緒に見て、手…繋いだ。
 
 
臣)なんか…色々思い出すな…。
♡)うん…。
 
 
私がパパのことで
いっぱい泣いちゃったあの日は
 
臣くんがさっきみたいにずっと
 
優しく抱きしめてくれて
背中…トントンってしてくれた…。
 
 
きゅっ
 
 
臣)んー?
 
 
きゅっ
 
 
♡)……//
 
 
臣くんの手をそっと握ると
きゅって握り返してくれた。
 
 
♡)…っくしゅん!
臣)寒い?
♡)あ、ううん…大丈夫。
臣)夜だし寒いよな…、
 
 
臣くんは自分のジャケットを
私にかけてくれた。
 
 
♡)大丈夫だよ!
臣)だって今日は
  マトリョーシカにしてやれねぇからw
♡)え…っ
 
 
そうだ…
一緒に朝陽を見たあの日は…
 
臣くんがストールを
ぐるぐる巻きにしてくれて…
 
 
臣くんがパパの写真見たいって
そう言ってくれたのも
あの日だったね。
 
 
臣)ん。
♡)あっ…
 
 
繋いでる手を
臣くんがポッケに入れてくれた。
 
あの時…みたい…。
 
 
臣)……。
♡)……。
臣)このまま持って帰りてぇ…
♡)……えっ!!
臣)…って、あの時思ったなぁって。
♡)……///
 
 
覚えてる。
 
あの時の手のぬくもりも…
 
会いたかった!って…
何回も言ってくれたのも
 
 
帰ってほしくないって
まだ一緒にいたいって思った
自分の気持ちも、
 
全部…覚えてる。
 
 
臣)もう一年以上も前なんだなぁ…
♡)え…?
臣)こんな鮮明に覚えてんのに。
♡)……。
 
 
臣くんも…覚えてるの?
 
私は…
どの思い出も全部、鮮明に覚えてる。
 
 
臣)……。
♡)……。
 
 
臣くんがポッケから手を出して
両手で私のほっぺを包んだ。
 
 
臣)あ、冷たい。
♡)え。
臣)んーーーー
 
 
ほっぺをなでなであっためてくれてる。
 
 
♡)んーー///
臣)ははっw
  …そろそろ、行くか?
 
 
ポンッ
 
 
♡)……///
 
 
臣くんが振り返って
私はその背中に抱きついた。
 
 
臣)おわっ、どうした!
♡)んーーっ//
臣)なにw
♡)もっかい頭ポンってしてぇ///
臣)はー?w
 
 
振り向いた臣くんは、呆れた顔で笑ってる。
 
 
臣)なーんなのw
♡)……///
臣)ん。
 
 
ポンポン…
 
 
♡)んーーっ♡
臣)おわっ//
 
 
嬉しくなった私は正面から抱きついた。
 
 
♡)もっとポンポンーー♡
臣)なーに甘えてんだよ!w
♡)んーー♡
臣)ん。
 
 
ポンポン。
 
 
♡)えへへ♡
 
 
ポンポンしてくれた臣くんの手を掴んで
もう一回ほっぺに当てた。
 
 
♡)あったかい♡
臣)ぷにぷに。
♡)ごろにゃん♡
臣)ふはっww
♡)んー♡
臣)なんでそんな急に甘えてくんのw
♡)…だめ?//
臣)ダメじゃないけど…//
 
 
臣くんの手を
両方のほっぺにくっつけて
臣くんを見上げると
 
臣くんがおでこをコツンてくっつけてきた。
 
 
臣)ああ…もう//
♡)え…?
臣)うりゃっっ
♡)きゃあっっ!!
 
 
臣くんに腰を掴まれて
抱き上げられた。
 
 
♡)わっ、わっ、わっ
臣)ははっw
 
 
臣くんは私を抱き上げたまま
くるっと一回転した。
 
 
♡)わわわっ///
 
 
…すとんっ
 
 
♡)びっくりした///
臣)んっ
 
 
ぎゅっ……
 
 
♡)……///
 
 
私を抱きしめてくれる
あったかい腕…。
 
 
♡)臣くん……
臣)んー?
♡)……だぁいすき♡♡
臣)……ん。
♡)大大だぁいすき♡♡
臣)……俺も。///
♡)……///
臣)好きだよ。
♡)////
 
 
臣くんがくれる
「好き」って言葉は、魔法みたい。
 
一気に心がぽかぽかになる。
 
 
♡)あったかい♡
臣)んー?
♡)臣くんがあったかい♡
臣)そうか?w
♡)うんっ♡♡
 
 
これからも
いっぱいいっぱい一緒にいようね♡
 
 
♡)2年目も…
  よろしくお願いします♡
臣)ははっw 何それw
♡)だって今日から2年目だもんっ
臣)そうだな。
♡)うん。
臣)こちらこそ…
  よろしくお願いしますw
♡)あははは♡
 
 
ずっとずっと…
一緒にいられますように♡♡
 
 
 
 
 
 
 

ーendー

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