[90]ハルキStory ⑤

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それから俺は中学高校をアメリカで過ごして
飛び級でカリフォルニアの大学に進んで
3年で卒業した。

父さんは日本とアメリカを行き来しながら
見事に会社を軌道に乗せて

俺が大学を卒業する時、

「三年間働いた後、お前が会社を動かせ。」

そう言った。

9年ぶりに帰る日本。

ずっとずっと会いたかった女の子。

一度も忘れたことなんてない。

いつも同じ空の下…
その笑顔を思い浮かべてた。

何も言わずに離れてしまったことを
幼かった自分を

何度後悔したかわからない。

会いたい。

会いたい。

俺は帰国後、必死に♡を探して

友達のツテをたどってようやく見つけた時、

♡は大学4年生で、彼氏がいた。

当たり前だ。
もう9年も経ってる。

もう俺のことなんてきっと忘れてる。

何も言わずに姿を消した
俺のことなんて……

友)会わなくていいのかよ?
ハ)…いいよ。
友)ずっと…会いたかったんだろ…?
ハ)……

♡の姿を見ずに、もう会わないと決めた。

会ってしまったら
気持ちが溢れるとわかっていたから。

♡には♡の幸せがある。

♡が笑ってるなら。
今、幸せなら。

それ以上望むことは何もない。

そう思って諦めようとしたのに…
季節は巡って…、数年後。

修)ハルキ!ハルキ!
ハ)どうした?
修)昨日偶然バッタリ♡に会ってさ、
  一緒に飲んだんだよ!
ハ)…っ
修)あいつ今、彼氏いないって!
ハ)……
修)俺も1年ぶりに会ったんだけどさ、
  やっぱ変わってないわ、あいつw
ハ)え?
修)なんか相変わらず無邪気で
  可愛かったよ。
ハ)……
修)あ、俺は全くその気ないからな?
  昔から。
ハ)わかってるよ…w

修二は小学校の同級生で
日本に帰ってきてから
俺に連絡をくれて

今はうちの会社で働いてる。

昔から本当いい奴で…

修)会いたく…ないの?
ハ)……会いたいよ。
修)だったら…
ハ)……
修)お前がいっつもフラれんのも
  ♡のせいだろ?
ハ)…っ

大事にしたいと思って
付き合い始めても

「ハルキの心はここにない気がする。」

そう言って毎回フラれる。

だって…どうやったって…
心のど真ん中にある俺の陽だまりは
絶対に消えない。

修)一回ちゃんと会ってみたら?
ハ)……

そう言われても
俺は動けなくて…

♡に会うのが怖かった。

もう俺のことなんて
忘れてるんじゃないかって…

俺の知らない♡になってるんじゃないかって…

怖くて会いに行けなかった。

会いに行くことも、心の中から消すことも、
出来なくて。

また季節は巡り……

春。

どうしてだろう。

もうずっと会っていないのに…

顔だって…
わからないはずなのに…

どうしてこんな一瞬で
♡だってわかったんだろう。

ハ)♡!?

こんなに人がいるのに
どうして俺は…見つけてしまったんだろう。

ハ)♡!!

振り向いたのは
間違いなく、♡だった。

♡)……ハル…くん…

駅の人混みの中で

まるで二人だけ…
時間が止まったみたいだった。

ハ)……

見つめ合ったまま…
…言葉が…出てこなくて……

ハ)…♡…だよね?
♡)……うん…

懐かしい…声…
いつも隣で聞いていた…♡の声。

ハ)びっくり…した…
♡)う…ん…
ハ)こんなとこで…会えるなんて…
♡)……
ハ)…すぐに…わかった…
♡)……

あの頃とは何もかもが違うのに
すぐにわかった。

ハ)大人に…なったね…
♡)ハル…くん…も…
ハ)……
♡)……

あの頃は同じ目線だったのに…
♡はすごく小さくて…

♡)……
ハ)……
♡)…元気…だった…?
ハ)……

♡は震える声でそう言うと
ポロポロと涙をこぼした。

ハ)♡…っ
♡)…っ

次々と…♡の頬を滑り落ちる、涙の雫。

♡)ごめん…ね…っ
ハ)…っ

こんなに…傷つけたんだろうか。

俺は…

俺は…

♡)元気…だった?

涙を拭いた♡が顔を上げて
もう一度そう聞いた。

俺は…喉が詰まって…苦しくて…

ハ)……うん…
♡)……
ハ)元気…だったよ…
♡)……

なんとか返事を返した。

ハ)♡は…元気だった…?
♡)……

泣かせてごめん…

勝手にいなくなってごめん…

会いたかった。
ずっと会いたかった。

泣きそうになる気持ちを
必死に堪える。

俺が泣くなんて…勝手すぎる。

あの日何も言わずに
♡から離れたのは…俺なのに。

でも…

♡が何も言わずに
またポロポロ涙をこぼすから…

♡)…っ
ハ)♡…っ

ぎゅっ……

♡)…ハル…くん…?
ハ)…っ

身体が勝手に動いた。

無理だ。

こんなの無理だ。

♡が泣いてる時は…
いつだって抱きしめた。

俺は……

ハ)♡……、♡……っ

ごめん…

泣かせてごめん…

きっと…俺がいなくなってから
何度も泣かせた。

寂しい思いをさせた。

本当にごめん……

♡)ハル…くん…
ハ)♡…っ

ずっと…抱きしめたかった。

ずっと…ずっと…

好きだ。

♡が好きだ。

離れている間もずっと好きだった。

ずっと……

ハ)会いた……
♡)……
ハ)……
♡)…ハル…くん…?
ハ)……

「会いたかった」

その言葉が口からこぼれそうになって…

俺は腕をゆるめた。

ハ)ごめん……
♡)……
ハ)……
♡)……

俺はどれだけ自分勝手なんだろう。

「会いたかった」なんて
言っていいわけがない。

♡)…大丈…夫…?
ハ)…っ

泣きそうな俺に
♡の手が優しく伸びてきた。

♡)……
ハ)……

ぎゅっ…

♡)…っ

頬に触れた小さな手を
そっと握った。

ハ)大丈夫…だよ……
♡)……

♡…

好きだ…

好きだ…

今でも…こんなに……

__プルルルル!!

ハ)あっ…
♡)……
ハ)ごめん、行かなきゃ。
♡)…っ

でも…終わりにしたくない。

ここで会えた奇跡を
なかったことにしたくない。

ハ)♡、これ…っ

俺は急いで名刺を取り出して
♡の手に握らせた。

ハ)連絡して!!
♡)…っ
ハ)それじゃ…
♡)……

そのまま急いで改札に入ろうとしたけど…
やっぱり…

俺は立ち戻って
♡の頬を撫でた。

♡)…っ

あの頃と何も変わらない綺麗な瞳。

好きだよ。
♡…、ありがとう。

会えて良かった。

俺はそのまま新幹線に駆け込んだ。

♡……

♡……

連絡してきてくれるだろうか。

話したいことがたくさんある。

伝えたい想いがたくさんある。

でも…
一番伝えたいのは

会えなかった何年分もの「愛してる」。

もう大人になった今なら
この言葉を口にしても
許される気がして…

まだ、誰にも言ったことがない。
言うなら、♡しか考えられない。

誰と付き合っても…

好きだと思うことはあっても
大事にしたいとは思っても

こんなに愛しい気持ちになんて
なったことがない。

いつも俺の心の真ん中にいる
陽だまりのような存在。

初めて俺に、「愛」を教えてくれた女の子。

俺が「愛してる」のは、♡だけなんだ。

その気持ちが、♡と再会して
一気にあふれ出した。

もう誰にも、止められないくらいに。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

修)昨日、♡に会ったんだって?
ハ)!!!

カフェで企画書に目を通してると
修二がそう言った。

修)昨日、電話で聞いたよ。
ハ)…っ

そうか。
修二は♡の連絡先を知ってるんだ。

でも…

昨日、名刺を渡したし…
♡から連絡してきてくれるかもしれない。

修)クラス会しようって、前から話してて
  それで電話したんだけど…
  ……お前も来るだろ?
ハ)…っ

クラス会…?

修)お前に会いたいって奴も
  いっぱいいるし…
ハ)うん、行きたい。
修)……

俺もみんなに会いたいし
何より、♡にもう一度会いたい。

修)♡に…会いたい?
ハ)会いたい。

2年前には素直に答えられなかった
その質問に

俺は即答した。

修)なんで…今なんだよ。
ハ)……
修)2年前に俺が会いに行けって言った時
  なんで行かなかった?
ハ)……

修二のその表情を見て、すぐにわかった。

修)あいつ今、……彼氏いる。
ハ)……
修)…で、多分だけど…
  一緒に暮らしてると思う。
ハ)…っ

全くショックじゃないといえば
嘘になる。

でも、それでも♡に会いたいと思う気持ちは
全く変わらなくて

そんな自分に、少し驚いた。

ハ)クラス会、行くよ。
修)……
ハ)決まったら、教えて。
修)ん、わかった。

♡が…
どんな相手とどんな恋愛をしてきたのかなんて
俺には全くわからない。

俺が何人かと付き合ってきたように
♡だって恋愛をしてきたわけで

お互いに、お互いの知らない時間を
過ごしてきてる。

でも
昨日会った♡は
昔と何も変わってなくて

綺麗な澄んだ瞳も
泣き虫なところも

俺を「ハルくん」って呼んでくれる
優しい声も

抱きしめた時のあたたかいぬくもりも

何一つ、変わっていなかった。

会うのが怖いだなんて、
臆病に思っていた自分が
信じられないくらい…

会いたい。
♡に会いたい。

会って話がしたい。

その想いは、募るばかりだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

♡と駅で会ってから

俺が名刺を渡したあの日から

もう2ヶ月が経った。

2ヶ月が経ったけど
♡からの連絡は一切なくて
それが♡の答えなんだって思った。

それでも俺が♡に会いたい気持ちは
少しも消えない。

恋人がいるのはわかってる。

♡が幸せならそれでいい。

でも

ただ、会いたい。

この気持ちは
一体なんなんだろう。

修)クラス会の店、決まったぞーー
ハ)おう。
修)昨日、♡が選んでくれた。
ハ)会ったの?
修)いや、電話して…
  LINEで候補送って選んでもらった。
ハ)そっか…
修)モデルの話したら、なんか照れてたわw
ハ)……そっかw

♡は最近雑誌に載ってて
モデルとして活動してるみたいで。

昔からどんな人にも愛される♡を
いつも隣で見ていて

そのスター性は俺自身、すごく感じていたし…

♡はもしかしたら
これからどんどん有名になるのかもしれない。

多分あの日、♡に会っていなかったら

俺の知らない♡になってしまったみたいで
その存在を遠く感じたかもしれないけど

あの日会えて、話せて
抱きしめたことで

どんな♡でも受け入れられる覚悟が
俺の中で出来てて…

なんて言ったらいいかわからないけど

どんな♡でも、驚かない。

そんな気持ちになれていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

クラス会の前日。

ア)ふふ、なんか落ち着きないわね。
  珍しい。
ハ)え…?
ア)明日だもんね、クラス会。
ハ)…っ
ア)緊張してるの?
  …それとも…楽しみでそわそわしてる?
ハ)……

上手く言葉で表現できないけど
確かに俺の頭の中は
明日のことでいっぱいだった。

ア)♡ちゃんと…話せるといいわね。

そう言って優しく笑ってくれるのは、
俺の義姉。

父さんは帰国してから
アメリカで一緒だった女性と再婚して…

そこで新しく家族になったのが、アキ。

一緒に暮らしてはいないけど
今は俺の秘書をしてくれてる。

♡のことも知ってて…
なんでも話せる相手だ。

ア)ハルが一歩前に進めますように…。
ハ)…俺……
ア)……
ハ)止まってるように…見える?
ア)…うーん…、そうね。
ハ)……

止まってしまってるのか、
止まっていたいのか

それすら自分でもわからない。

ア)ハルキくんは優しくてカッコ良くて
  彼氏としては完璧なのに
  どうしてか一緒にいても寂しいんです。
ハ)……っ
ア)なんて、もう女の子に言われないように…
ハ)……
ア)新しい恋を見つけるなり
  ♡ちゃんとの恋を進めるなり、
  どんな形であれ
  ハルが前に進めたらいいなって。
ハ)……
ア)私はそう思ってるわよ。

そう言ってアキはまた優しく笑った。

♡と会って、話が出来たら…
この気持ちは何か変わるのかな。

やっぱりどうしても好きだって
思ってしまうのか

それとも…

幸せそうな♡を見て、
自分の気持ちに区切りをつけられるのか。

__答えが出るのは、明日。

ー続ー

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