[76]大好きな人(♧Side)

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「♧さんってなんかすげぇ癒し系ですよね!」
 
 
泣いていた子供が
私の子守唄で眠った時に
 
とびきりの笑顔で、彼がそう言った。
 
 
いつも明るくて…眩しくて…
その笑顔で私を幸せな気持ちにしてくれる。
 
 
私は何度あなたに、恋をしただろう。
 
 
 
 
……
 
 
 
 

 
 
 
 
む)も〜〜〜
  いつもの話は聞き飽きたからっ!
♧)えーーーー
む)それよりも髭のおじさんの話をしなさい。
♧)髭のおじさん…?
む)先週?先々週?…くらいに
  言ってたじゃん。
  いきなり現れたおじさん!
♧)ああ!!!
 
 
今市さんのことか!!
 
 
もう4年間も聞かされてるから
私の不毛な片思いの話は
聞き飽きたと言わんばかりに
カルパッチョをつつく、親友のむーこ。
 
 
む)旦那がいるだの何だの
  わけわかんないこと
  言ってきてたんでしょ?
♧)ああ、それね…ふふっ…w
 
 
今市さんの可愛い勘違い。
 
 
私がそれを話すと、むーこは大爆笑。
 
 
む)めっちゃウケる!www
  子持ちと勘違いされる保育士!!ww
♧)も〜〜〜笑いすぎ〜〜〜
む)何なのその人!天然??
♧)うーーん…
む)その後も川辺に出没するの?
  それっきり?
♧)えっと…実は…
  一緒にご飯食べに行きました。
む)……はい??
 
 
むーこは目をまんまるにして
きょとんとしてる。
 
 
今市さんとはその後も何度も
川辺で会ってること。
 
そして一昨日、
一緒にご飯に行ったこと。
 
そしてそして…
昨夜、私の不毛な片思いを全部白状したこと。
 
 
私が順を追ってゆっくり説明すると
むーこはしばらく驚いてたけど
 
 
む)髭おじさん、カッコイイ。
 
 
そんなことを言い出した。
 
 
あ、私…
名前言いそびれちゃった。
 
まぁいいか、髭おじさんで。
 
 
む)何その人。突然現れた王子様みたい。
♧)えーー??王子様??
む)だって…泣いてる♧を抱きしめて…
  そんな素敵なこと言ってくれたんでしょ?
♧)……
む)告白は両想いになるために
  するだけじゃない。
  恋した証として想いを伝えたっていい。
  もう〜〜〜〜〜///
  髭おじさんってば、
  だてに歳取ってないね!
♧)あ……、
 
 
今市さんは…
私たちとそんなに歳は変わらないんだけど…
 
ま、いっか。
 
 
む)おじさん素敵すぎるよ!♡♡
♧)ふふっ…そうだよね♡
  本当に優しい人なんだーー
  大好き♡
 
 
今市さんが背中を押してくれたから…
私…
 
昨夜いっぱい考えたの。
 
 
♧)だから…私…、
  告白しようかなって思ってる。
む)……
♧)想像しただけで…緊張して…
  死んじゃいそうだけど…///
む)だからとっととしろって
  ずっと言ってたでしょーー!
♧)えっ
む)もうその話はいいから
  おじさんの話、他にないの♪
♧)もうっ、ひどーい!
む)ひどくないw
♧)もーーーー
 
 
確かにむーこは
ずっと前からそう言ってくれてた。
 
 
今のままじゃ前にも後ろにも進めないから
早く告白しなよって
 
ずっとそう言ってくれてたのに
私は勇気が出なくて…
 
 
だって…
本当に本当に…彼が大好きだから。
 
 
む)ほーら、おじさんの話♡
♧)えーー?
 
 
むーこは今市さんが
お気に入りになっちゃったみたい。
 
 
♧)あと何話したかなぁ…
  すごくいっぱい話したんだよーー
む)ご飯はご馳走してくれたの?
♧)あ、うん!
む)はぁ…どこまでも素敵…♡
♧)あっ
 
 
そうだ!
 
 
♧)ねぇ、むーこ。
む)ん?
♧)私、男の人と食事に行ったの、
  初めてだから…知らなかったんだけど…
む)うん。
♧)男性にご馳走になった後は
  ほっぺにキスするの?
む)……はい????
♧)……
 
 
あれ?
 
むーこの目がまた、まんまるになっちゃった。
 
 
む)ちょっとね、意味がわかんないから…
  一から説明してごらん?
♧)えっと…だから…
 
 
私は今市さんとのやりとりを
むーこに話した。
 
 
食事の後に、2回キスしたこと。
 
そして、昨夜ゼリーのお代に
もう一度キスしたこと。
 
 
♧)むーこもしたことある?
む)……
♧)むーこ??
む)うん、あるよーー。
  ご馳走になったらチューする。
♧)そうなんだ!
 
 
私、全然知らなかった!
 
 
む)でもね、それ、他の人にしちゃダメだよ?
  まぁ、ないとは思うけど…
♧)え?
む)チューしていいのは
  最初にご馳走してくれた人だけ。
♧)そうなの??
む)そ。
  だから♧がチューしていいのは
  髭おじさんだけだね。
♧)そうなんだ……
 
 
世の中には
私が知らないことがいっぱいあるなーー
 
 
む)ちなみに、さ…
  チューするの、嫌じゃなかったの?
♧)あ、うん。
  ほっぺだし…全然嫌じゃなかったよー
む)ふーーーん…
♧)……
 
 
それが自分でも不思議で…
 
 
あの夜、今市さんが顔を寄せてきて
はいどーぞ、って言われて…
 
 
目の前の今市さんのほっぺ、
全然嫌じゃなかった。
 
なんか可愛いなって思って…
 
 
でもキスしたらしたで
すごく恥ずかしくなっちゃったんだけど…
 
 
♧)……
 
 
昨夜も同じ。
 
 
「嫌じゃないならいいじゃん!
 ほっぺにちゅーして!」
 
 
そう言われて…
 
全然嫌じゃなかったから
またお礼にキスをした。
 
 
♧)もしかしたら甘えんぼなのかな…?
む)…え、その髭おじさん?
♧)うん。
 
 
なんか子供みたいで可愛かった。
 
 
♧)ふふ…っ
む)……
 
 
「仲良しすぎちゃ、何か困るの?」
 
「じゃあいいじゃん、仲良しで。」
 
 
そう言ってたなーー
 
 
む)髭おじさんのこと、好きなの?
♧)うん、大好きだよー♡
む)……
♧)ん…?
む)例の彼は?
♧)え?
 
 
例の彼って…
 
 
♧)なんでいきなり話変わるの?///
む)いや…繋がってますけど…
♧)???
 
 
そんなの…
そんなの…
 
 
♧)大好きに決まってるでしょっ///
む)……はぁ。
♧)なぁに、そのため息ーー
む)いや、いいや。
  とにかく早くフラれといで。
♧)ひどい!!
 
 
フラれるのはわかってるけど…
 
ううう…
 
今市さぁぁん……
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
むーこと別れて家に帰ってくると
 
LINEが鳴って
 
 
ピッ
 
 
『今日は川にいる?😃』
 
 
♧)今市さんだ……
 
 
『今日はいませんよ🙅
 今、おうちです。』
 
 
そう返すと…
 
 
『😞』
 
 
しょんぼりした顔だけ、返ってきた。
 
 
♧)ふふっw
 
 
なんだか最近、よく会ってるから
会えないと寂しいのかな?
 
可愛いな。
 
 
今市さんはよくあそこに現れるけど
何をしてる人なんだろう?
 
いつもトレーニングの途中?
みたいなこと言ってるけど…
 
 
あ、そういえば腕に傷がたくさんあって
そういう仕事をしてるって言ってたっけ。
 
 
……どんなお仕事だろう?
現場とかかな?
 
 
あ!だから身体を鍛えなくちゃいけなくて
あのあたりをランニングしてるのかな?
 
 
なるほどーー
 
 
ピロピロ♪
 
 
『明日はいる?』
 
 
♧)……ふふっ
 
 
『明日は寄る予定です😊』
 
 
そう返すと、今度は…
 
 
『😊』
 
 
同じにっこりマークが返ってきた。
 
 
♧)可愛い…♡
 
 
今市さんってあんな見た目なのに
可愛いよね。
 
 
あんな見た目って言ったら
怒られちゃうかもしれないけど…
 
 
お髭があるのに
笑うとふにゃんって可愛くて…
 
笑顔がとっても優しい人。
 
 
なのにたまに意地悪だったり
 
子供みたいにワガママになってみたり
 
 
でも、やっぱり優しくて…
 
 
なんだか不思議な人だなぁ…。
 
 
♧)……
 
 
昨日は泣いちゃった私を
ずっと抱きしめてくれてて…
 
 
あんな風に男の人に抱きしめられたのは
生まれて初めて。
 
 
すごくあたたかくて、安心した。
 
 
男兄弟も男友達もいなかった私に
きっと神様がプレゼントしてくれた
素敵な人。
 
 
明日はどんな話をしようかな…
 
 
今市さんに会えるのが楽しみだなー♡
 
 
あ、そういえば。
 
 
今市さんは私の話をたくさん聞いてくれるけど
今市さんはどうなんだろう?
 
 
好きな人とか、いないのかな?
 
 
明日は私が相談に乗ってみよう!
 
 
 
………
 
 
 
それからお風呂に入って寝る準備をして
ベッドに入ると…
 
 
また、聞こえてきた隣の部屋の音。
 
 
「いやぁんっ、あんっ、あぁんっ////」
 
 
♧)……////
 
 
どうしてこんな大きな音で聞くのかな…
 
 
♧)はぁ……
 
 
私がいつも仕事帰りに
あの川辺で裁縫をしているのは
 
家に帰ってくると
この騒音に悩まされるから。
 
 
TVがあれば
音を誤魔化せるのかもしれないけど
うちにはそれがないし…
 
 
「あぁんっ、あんっ、あんっ////」
 
 
春に越してきた、隣の人。
 
 
最初は…
女の人と住んでるのかな?って思ったけど
 
ある日、仕事の帰りに
アパートの下でバッタリ会って
 
 
慌てたその人が落としたレンタル袋からは
エッチなDVDがたくさん出てきて…
 
 
私はびっくりしてそのまま部屋に駆け込んだ。
 
 
なんか気持ち悪くて…
…って言ったら失礼なのかもしれないけど…
 
男の人はみんな見るのかもしれないけど…
 
 
でも…
やっぱり嫌ーーー!!!!!
 
 
♧)はぁ……
 
 
イヤホンをつけて眠ろうっと。
 
 
スマホにそれを繋ぐと
パッと浮かび上がるのは
大好きな人とのツーショット。
 
 
♧)……////
 
 
毎晩これを見て眠るんだ。
 
大好きな大好きな、憧れの人。
 
 
 
 
………
 
 
 
 
初めて彼に会ったのは
今から5年前。
 
 
最近、寄付のお金を
届けてくれる男の子がいるのよー、なんて
 
施設の人たちの間で
ちょっと噂になってて
 
月に一度現れる彼が、気になってた私。
 
 
たまに私とすれ違う時も
すごく優しい笑顔で挨拶してくれて…
 
 
次にあの彼が来るのはいつかな、なんて
気付けばそわそわドキドキして
その日を待つようになっていた。
 
 
どうしてうちに寄付してくれるんだろう。
何をしている人なんだろう。
 
 
考えれば考えるほど、気になって…
 
 
ある日、彼がギターを背負って
うちに来た時に
 
私は勇気を出して、話しかけた。
 
 
♧)あのっ…
  いつも本当にありがとうございます!
男)いえ…
♧)ギター、弾かれるんですか?
男)ああ、はい。
  この後、LIVEなんです。
♧)……///
 
 
そう言ってニコッと笑う姿も眩しくて…
 
 
その日は日曜日だったから
子供達も施設にいて
 
みんなギターを持ってる彼が
珍しかったのか
ゾロゾロと集まってきて…
 
特に、シンガーソングライターを
目指してる男の子は
彼のギターを見て、目を輝かせた。
 
 
男)ギター、弾けるんですか??
 
 
その問いに、彼はニコッと笑って
 
 
「弾こうか?」
 
 
そう言ってくれた。
 
 
みんな大喜びで
部屋にいる子達を呼んできて…
 
みんなが集まったのは食堂。
 
 
そこで彼は
ギターで数曲、弾き語りをしてくれた。
 
 
みんなを笑顔にしてくれる
その歌声に…
 
私は一瞬で、恋に落ちたの。
 
 
ううん、本当は
もうとっくに恋に落ちてた。
 
 
眩しい彼の笑顔に、とっくに惹かれていたの。
 
 
そういえば昔、あのおじさんも
ギターを弾いてくれたことがあったなぁ
なんて…
 
憧れのおじさんと彼を
重ねてみたりして…
 
 
♧)どうしてここに寄付してくれるんですか?
 
 
その日、彼を見送る際に私が尋ねると…
 
彼はにっこり笑って、答えてくれた。
 
 
男)ここは、父が育った施設だから
  少しでも力になりたいんです。
♧)え…?
男)って言っても…大した額じゃなくて
  なんかすいません…//
♧)いえっ、そんなことは!!
男)俺、今はまだこんなんですけど
  そのうちもっとLIVEも増やして…
  もっとチャリティー活動も増やせるように
  頑張るんで…
  待っててくださいね!
♧)////
 
 
その眩しい笑顔に
また恋に落ちて、ポーッとする私に
彼は続けた。
 
 
男)もっと早く知ってれば
  もっと早く来れたんですけど…
  最近なんです、聞いたの。
♧)え…?
男)最近…母から、
  父がここで育ったって聞いて…
♧)…そうだったんですね…
男)はい。
 
 
ここで育った人…
私の先輩かぁ…
 
 
男)ここを出てからも
  父がここによく来てたって聞いて…
  父の代わりに
  寄付したいって思ったんです。
♧)……え?
 
 
父の…代わり…?
 
え、待って。
 
 
♧)お父さんも…
  ここに寄付してくださってたんですか?
男)そう聞きました。
  昔の話なんですけど…
♧)…っ
 
 
そんな人、私は一人しか知らない。
 
忘れもしない、笑顔が優しいあのおじさん。
 
 
♧)お父さんの…お名前って…
男)玲司です。
♧)…っ
 
 
「レイジ」
 
 
やっぱりあのおじさんだ!!
 
その名前に、私の胸は一気に弾んで…
 
 
♧)あのっ!!
  私、覚えてますっ!!!
男)え…?
♧)おじさん…、レイジさんのことっ!!
男)…っ
 
 
彼は驚いたように私を見た。
 
 
♧)あ、あのっ、私もここで育って…
男)そうなんですか?
♧)はい!!…それで…っ
 
 
突然現れなくなったあのおじさん。
 
小さい頃だったけど
その名前はハッキリと覚えてる。
 
 
♧)私、ずっとお礼が言いたかったんです!
男)…っ
 
 
あのおじさんが私に教えてくれたことは
たくさんある。
 
 
♧)会いたいですっ!!
  お礼を伝えたいですっ!!
 
 
そうせがむ私に、彼は寂しそうに笑って…
 
 
 
男)父は、亡くなりました。
 
 
 
そう告げた。
 
 
 
♧)…っ
 
 
 
私は…
その言葉に、身体が固まって…
 
 
 
……おかしいとは思ってた。
 
 
毎月来てくれてたあのおじさんが
突然来なくなって…
 
 
どうしたんだろう、って…
 
遠くに引っ越したのかな、なんて
そう思ってた。
 
 
♧)……亡くなった…?
男)はい……
 
 
さっきまで弾んでいた胸は
一気に締め付けられて…
 
 
男)もう10年以上も前に、事故で…
♧)……
男)……でも…父を覚えてくれてる方が
  いてくださって…
  嬉しいです。
  ありがとうございます。
♧)……
 
 
気付けば私は泣いていて、
顔を上げられなくて…
 
 
何も関係ない私が
泣くなんておかしいけど
でも、止まらなくて
 
 
必死に声を殺して下を向いていると
 
彼の手が私の肩に優しく触れて…
 
 
男)…父ちゃんのために…
  泣いてくれて…ありがとう…
 
 
そう言った彼の声も震えていて
泣いてるんだって、わかった。
 
 
そんな彼を、見ることもできなくて
私は下を向いたまま泣いていて
 
 
コンクリートの床には
 
ぽたり、ぽたり、と…二人の涙が滲んで
 
 
私は彼を、抱きしめたくて…仕方なかった。
 
 
初めてあんなに
誰かを抱きしめたいって思った。
 
 
 
♧)……私…、レイジさんが大好きでした。
男)…っ
 
 
ようやく落ち着いて
顔を上げて、彼を見つめた。
 
 
♧)レイジさんが大好きでした。
  ありがとうございます。
 
 
ちゃんと伝えたくて
彼の目を真っ直ぐに見て、そう言った。
 
 
男)ありがとうございます。
 
 
彼は涙を拭いてそう言うと
私に優しく笑ってくれて…
 
 
♧)なんていうんですか?
男)え…?
♧)あなたの…名前…、
男)……
 
 
私がそう尋ねると、
 
ふわりと握られた右手。
 
 
男)瞬っていいます。♧さん。
♧)…っ////
 
 
その優しい笑顔に…
 
私の身体は一瞬で、
電気が走ったみたいになった。
 
 
苗字しか知らなかった、彼の名前。
 
 
♧)シュン…くん……
瞬)はいっ
♧)////
 
 
握られた右手から
身体が溶かされてしまいそうなくらい
 
私のドキドキは、止まらなかった。
 
 
 
それから彼は
お金を届けてくれる月に一度の日曜には
いつも弾き語りをしてくれるようになって
 
子供たちはその日を心待ちにしてる。
 
 
私も彼といろんな話もするようになって
彼のLIVEにも、一度だけ行ったことがある。
 
 
でも、あまりに黄色い声が多くて
すごく騒がしくて
 
それからはもう行ってない。
 
 
その後、施設に来た時
彼はすぐに私のところへ来た。
 
 
瞬)この間LIVE来てくれたんですよね?
  ありがとうございました!
♧)はい……
瞬)あの…どうでした?
♧)え?
瞬)……
♧)えっと…
瞬)この間は…
  ちょっとうるさかったよね?
♧)…っ
 
 
彼が申し訳なさそうに私を見て…
 
 
瞬)やる場所によって全然違うんですけど
  あの日は若い子が多かったから
  いつもより騒がしくて…
♧)……
瞬)ごめんね?
♧)…っ
 
 
そう言ってポンと頭に乗った手のひら。
 
ニコッと笑う笑顔。
 
 
♧)////
 
 
彼は私よりずっと年下なのに
たまにフランクに敬語が抜けるところも
 
そうやって無邪気な笑顔で
私をドキドキさせるところも
 
なんだか本当にずるい。
 
 
でも、大好きなの////
 
 
瞬くんを好きだと自覚したあの日から
気付けばもう4年も経ってしまった……。
 
 
 
 
……
 
 
 
……
 
 
 
 
隆)で、いつ告白するわけ?
♧)えっ!!
 
 
 
私の話を今日も隣で聞いてくれてる今市さんが
木のテーブルに腕を投げ出して
そこに頭を乗せて、私を見上げる。
 
 
隆)だーかーらー
  いつ告白するの。
♧)////
 
 
今市さんは最近いつもこの調子。
 
ここに来るたびにそうやって私を急かす。
 
 
♧)か、彼は…月に一度しか来ないから
  そんなすぐには会えないんです!///
隆)連絡先知らないの?
♧)知らないですよっ!///
 
 
そんなの知ってたら、苦労しない。
 
 
隆)……LIVE行きたいな。
♧)え?
隆)彼の。
♧)!!!!
 
 
え、え、なんで今市さんが…
 
 
隆)今度連れてってよ。
♧)だ、だめですっ!!///
 
 
急に何を言い出すのっ
 
 
隆)なんで。
♧)……
 
 
あ、いつもの、出た。
 
 
思い通りにならないと
すぐムッとしたようにぶっきらぼうに話す
今市さんのクセ。
 
でもそれは全然嫌な感じじゃなくて
なんだか可愛いんだけど。
 
 
♧)私、彼のLIVEはもう行かないんです。
隆)なんで?好きなのに?
  好きだったら普通、見たくない?
♧)……
 
 
普通はそうなのかもしれないけど…
 
 
♧)なんか…若い女の子たちに
  キャーキャー言われてる彼を見て…
  少し遠く感じてしまったというか…
隆)……
♧)あんな騒がしいところで聞くよりも
  うちに来て、月に一度歌ってくれる
  彼の歌の方が、何倍も嬉しいから。
隆)……
♧)だから私は、それでいいんです。
 
 
それに…
今LIVEに行ったら…
瞬くんの彼女に会ってしまうかもしれない。
 
どんな人なのかは知らないけど…
結婚も考えてるっていう彼女。
 
 
そんな二人のツーショットなんか見ちゃったら
私、どうなっちゃうか…わからない。
 
 
だから今は…このままで…
 
 
隆)告白はちゃんとしなよ?
♧)…っ
 
 
このままでいい、なんて思いかけた私に
すかさず飛んできた、今市さんの言葉。
 
 
♧)……わかってます///
 
 
仕方なくそう答えると…
 
 
隆)ん、いい子♡
 
 
優しく笑って、頭を撫でてくれた。
 
 
♧)////
 
 
今市さんのこの笑顔、ふにゃんってしてて
なんだか和むなぁ…
 
 
 
隆)ねぇ、そろそろ
  「今市さん」やめよう?
♧)え?
 
 
最近何度かされる、この提案。
 
 
♧)だから…もう今市さんは今市さんだから
  無理ですってー
隆)無理じゃないってー
♧)…っ
 
 
たまに今市さんが
私の話し方を真似するようになったから
 
私は自分のクセに気付かされた。
 
 
語尾を無意識に伸ばしてしまうクセ。
 
 
♧)無理ですっ!
隆)無理じゃないっ!
♧)もう…っ、
  そこまで真似しないでくださいよー
  ふふ…っ
隆)……///
♧)……
 
 
あ、なんだか
今市さんの目が優しい。
 
 
隆)隆二って呼んで…?
♧)……///
 
 
可愛くおねだりされちゃった。
 
 
一番最初に名前を教えてもらった時、
何度か呼んでみたけど
全然しっくり来なかったから
 
それからもう呼んでない。
 
 
♧)今市さんは今市さんっ!
 
 
私がそう言い切ると
今市さんは思いきり口を尖らせて
テーブルに突っ伏した。
 
 
♧)あっ
 
 
気付けばもうこんな時間。
 
 
♧)そろそろ帰らないとー。
 
 
裁縫道具を片付け始めると
今市さんの手がにょきっと伸びてきて…
 
 
隆)まだダーメ。
♧)え?
 
 
ダメって何が?
 
 
隆)まだ帰さない。
♧)……
 
 
まさか…
 
名前を呼ぶまで帰っちゃダメなんて
そんなワガママを言う気じゃ…
 
 
隆)今日のお代、もらってないもん。
♧)え…っ
 
 
ああ、そっちかーー
 
 
今日もごちそうになった、牛乳プリン。
 
今市さんは最近いつもこれ系のものを
何か買ってきてくれる。
 
 
♧)えっと…じゃあ…
  目を瞑ってください///
隆)はい♡
♧)////
 
 
 
……チュッ
 
 
 
隆)……へへ////
 
 
ゆっくり目を開けて
ふにゃんと笑う今市さん。
 
その笑顔はふにゃふにゃ柔らかくて
なんだか綿あめみたい。
 
 
ほっぺのキスは毎回してるから
もう慣れても良さそうなのに
 
いまだに少しドキドキしちゃう私。
 
 
♧)ふぅ…
  女の子って大変ですね///
隆)何が?
♧)ごちそうになったら
  ほっぺにキスする決まりのことです///
隆)……
♧)むーこ…、あ、私の親友なんですけど…
  むーこも言ってたんです。
  ほっぺにキスするって。
隆)え?!!!
♧)あと、それは
  最初にご馳走になった人にしか
  しちゃダメなんだっていうのも
  教えてもらいました。
隆)……
♧)……ふぅ…///
 
 
今市さんは少し黙って
肩を揺らしながら、しみじみ言った。
 
 
隆)すげぇいい友達持ったね。
  今度ぜひ挨拶させてw
 
 
私はその意味がよくわからなくて
 
でも親友に会いたいって言ってくれたのは
なんだか嬉しくて
 
 
♧)もちろんです♡
 
 
笑顔でそう答えた。
 
 
 
 
 
ーendー

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