[275]レイコStory ⑥

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玲司が海外に行ってる間、
あたしは自分の身体の異変に気付いた。
 
 
レ)生理…来てない……
 
 
うそ…、、
 
最後に来たの、いつだっけ…
 
 
慌てて手帳をめくる。
 
 
レ)……
 
 
もう…3週間、遅れてる。
 
 
玲司は結婚してから、
一度も避妊をしたことがない。
 
 
それは…
いつ子供ができても構わないよっていう
意思表示なんだと
あたしは受け取ってたけど…
 
 
レ)どうしよう……
 
 
本当に…子供ができてるんだろうか。
 
もしそうなら、
あたしはすごくすごく嬉しい。
 
 
大好きな玲司とあたしの子供。
 
 
絶対に産みたい。
 
 
けど…
 
玲司はなんて言うだろう。
 
 
……
 
 
 
玲)レイコ!ただいま!!♡
レ)…っ
 
 
あたしが一人、産婦人科に行ってから
3日が経って
 
玲司がインドネシアから帰ってきた。
 
 
玲)あれ?どうした?ほら…
レ)…っ
 
 
いつものように抱きつかないあたしを
不思議に思ったのか
 
玲司が両手を広げてくれて…
 
 
あたしはおずおずと
その腕の中に、飛び込んだ。
 
 
玲)なんだよ…おとなしいなw
レ)……
 
 
どうしよう。
胸がドキドキする。
 
 
玲司は…なんて言うかな。
 
驚くよね?
 
喜んで…くれるかな…
 
 
ンナーー、ンナーー
 
 
玲)おお、トラ〜〜〜
  よーしよし♡ ただいまー♡
  お、お前少し痩せたかー?
 
 
玲司はトラを抱っこして
そのままリビングに向かった。
 
 
レ)……
 
 
ドキドキ…
 
ドキドキ…
 
 
玲)おーい!レイコーー!
  お土産あるぞ〜〜〜
 
 
テーブルに嬉しそうにお土産を広げる
玲司の手を止めて
 
あたしは息を吸った。
 
 
玲)……どうした??
レ)……
 
 
言わなきゃ。
 
 
レ)…あの…ね、あたし……
玲)……
レ)……
 
 
言葉が続かないあたしを
玲司は優しく抱きしめてくれて
 
 
玲)なんて顔してんだよ…
レ)え…?
玲)泣きそうな顔、してる。
レ)…っ
 
 
あたし、そんな顔してたの?
 
 
玲)何か…不安なの?
レ)…っ
玲)俺がいるから…
  ちゃんと受け止めるから…
  一人じゃないから…
レ)…っ
 
 
そんな玲司の言葉に、胸が熱くなる。
 
 
玲)安心していいよ?
レ)…っ
玲)話してごらん?
レ)……////
 
 
もう…玲司のばかっ!
 
優しすぎて、キュンキュンしちゃうだろ!
 
 
レ)子供ができた!!
 
 
あたしが泣きながらそう言うと
玲司は時が止まったように
目を点にして…
 
しばらく止まってから、
ゆっくりと、動き始めた。
 
 
玲)こ、こ、こ、…っ
レ)子供!///
玲)こ、こ、こ、…っ
レ)子供だってば!///
玲)こ、子供って…俺たちの…?///
レ)そうだよ///
玲)今…お腹ん中に…いるの?
レ)……(こくん)///
玲)…っ
 
 
あたしが頷くと、
玲司の目は一気に潤んで…
 
 
レ)え、まさか…え、ちょっ
玲)うああああっっ
 
 
玲司は泣きながらあたしを抱きしめた。
 
 
レ)な、なんで玲司が泣くのっ
 
 
そう言ってるあたしも
泣いてるんだけど…
 
 
玲)だって…だってさ、
  うあああああっっっ
レ)もう…泣かないでよぉっ…
玲)感動したっ!!!
  どうしよう…っ
  ……レイコぉ…っ
レ)…っ
 
 
その後も玲司は
 
「感動した」
「嬉しい」
「どうしよう」
 
を、死ぬほど繰り返して
 
 
あたしを抱きしめたり
トラを抱き上げたり
ソファーにダイブしてみたり
床を転げ回ってみたり
 
 
レ)ねぇ、玲司…少し落ち着いて?w
玲)落ち着けるかよ!///
 
 
こんなに喜んでくれるなんて
思わなかった。
 
 
レ)玲司のこと…
  困らせるかと思った…
玲)……は?
 
 
あたしの言葉に、玲司はびっくりしたように
あたしを見た。
 
 
玲)なんで俺が困んの?
レ)だって…急だし…
玲)なんも急じゃねぇじゃん。
レ)…っ
玲)俺、そんな責任感ない奴に見える?
レ)…っ
玲)ずっと…お前との子供が欲しいって
  そう思ってたんだよ?
レ)……ほんと…?
玲)わかってなかったの?
 
 
玲司が呆れたように
あたしの頭を優しく撫でた。
 
 
レ)避妊…してなかったから…
  わかってたけど…
玲)俺がいない間にわかって
  ひとりで不安だった…?
レ)…っ
玲)側にいてやれなくてごめんな?
レ)…っ
 
 
そっか…
もし玲司が一緒にいたら違ったのかな。
 
離れてたから不安だったのかな。
 
 
玲)嬉しいに決まってんじゃん///
  レイコと俺の子だよ?
  どうする??
レ)……何が?
玲)可愛すぎて俺、食べちゃうかも。
レ)まだ生まれてもいないのにw
玲)だって!!!///
 
 
ああ…
玲司はきっと親バカになるな…
 
そう思うと、口元が自然と綻んだ。
 
 
玲)レイコ……
レ)……
 
 
玲司がまだ膨らんでもいない
あたしのお腹に、手を当てた。
 
 
玲)これから…初めてのことばかりで
  不安もあると思うけど
  俺がいるから。
レ)……
玲)ずっと側にいるから。
レ)……
玲)一緒に二人で、乗り越えていこうな?
レ)…玲司…っ
 
 
あたしはまた涙が出てきて
玲司にぎゅっと、抱きついた。
 
 
あたし、頑張る。
 
玲司と一緒なら頑張れる。
 
 
 
玲司、本当にいつも…ありがとう。
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
それからあたしは
区切りのいいところでモデルも引退して
仕事は全部やめた。
 
 
絶対戻ってきてくれって
そう言われたけど…
 
 
お腹の子が生まれて
ママになるって考えたら…
 
あたしは専業主婦になりたかった。
 
 
少しでも子供と一緒にいたい。
一緒にいてあげたい。
 
 
そして玲司が帰ってきたいと思えるような
あったかい家を作るんだ。
 
 
そう思ってたけど…
だんだんつわりがひどくなってくると
夜も眠れなくて…
 
 
玲)大丈夫か?レイコ……
レ)…っ
 
 
玲司はいつもあたしを心配してくれて
背中をさすったり
果物を絞ってくれたりするけど
 
あたしは体調も悪くて
イライラしたりして
 
 
完全に情緒不安定だった。
 
 
そんな時に来た、サチからの連絡。
 
 
たまに会ってはいたけれど
今回は1年ぶりだった。
 
 
久々に会うサチは
お腹がすごく大きくて…
 
 
サ)ふふっ、驚いた?
  もうすぐ産まれるの。
レ)びっ…くり、した…
サ)あはははw
 
 
家に遊びに行くと
ちょうど将史も休みだったみたいで
二人であたしを迎えてくれた。
 
 
サ)ほら、産まれちゃうと
  子供にかかりっきりに
  なっちゃいそうで…
  その前にレイコに会っておきたかったの。
レ)……
 
 
すごく大きなサチのお腹に
話があまり入ってこない。
 
 
サ)レイコも妊娠してるんでしょ?
将)え、そうなの?!初耳!
サ)まだそんなにお腹出てないもんね。
将)え、え、じゃあ子供、
  同い年になるんじゃね??
サ)この子は来月生まれるんだから
  無理でしょw
将)あ、そっかww
サ)…って、レイコ、聞いてる…?
レ)はっ…
 
 
あたしのお腹も…
こんなに大きくなるの…?
 
 
将)レイジさん、元気か?
レ)…あ、うん……
将)お前とレイジさんの子なら
  相当イケメンが生まれるな〜〜w
サ)もう、将史ってばw
  女の子かもしれないでしょw
将)あ、そっか!!
レ)サチは…女の子なの…?
サ)ううん、うちは男の子!
  だからお腹もこんなに大きいのw
レ)え、男の子だと大きくなるの?
サ)大きくっていうか…形がこう…
レ)…っ
 
 
なんかあたし…
知らないことばかりだ。
 
どうしよう…
 
 
将)早く生まれてこいよ〜〜♡
 
 
将史が嬉しそうに
サチのお腹を撫でてる。
 
 
レ)幸せそう……
 
 
あたしがボソッと言うと
 
 
将)そりゃそーだろw
  もうすぐ子供生まれてくんだぞ?
 
 
そう言って将史は笑った。
 
 
サ)あたしも幸せだよー?
レ)……
 
 
サチが優しく、あたしを見た。
 
 
サ)あたし…、ね?
  今更な話だけど…
  本当は知ってたの。
レ)……え?
将)何を??
サ)……将史が、レイコを好きだって。
レ)…っ
 
 
その言葉に固まると、
将史は笑ってサチの頭を叩いた。
 
 
将)お前は何年前の話をしてんだよ!w
サ)…っ
 
 
将史は笑ってるけど
サチの表情は真剣で…
 
 
サ)将史がレイコを好きだって
  ずっとわかってたけど
  あたしも同じくらい、将史が好きだった。
将)…っ
サ)将史があたしを助けてくれて
  あたしを選んでくれて
  死にそうなくらい嬉しかったけど…
  いつもどこか…心苦しかった。
  将史は…レイコが好きだったのにって…
レ)サチ…ッ
 
 
あたしの言葉より早く、
将史がサチの手を優しく握った。
 
 
サ)でもね、ずっと苦しかったけど
  あたしは将史といると幸せで…
  この子がお腹に出来て…
  将史がすごく喜んでくれて
  こうして幸せだって言ってくれることが
  泣きそうなくらい、嬉しいの…
レ)…っ
サ)あたし、やっと将史に
  幸せをあげられたんだ、って…
 
 
サチがそこまで言うと
将史がサチを抱きしめた。
 
 
将)バカ…!!
サ)…っ
将)俺は…お前と一緒にいて
  ずっと幸せだっつーの!!
サ)…将…史…っ
将)子供ができたからとかじゃなくて…
  もちろん子供は嬉しいけど
  そうじゃなくたって
  俺はお前を愛してるし、
  お前といられて幸せなんだよ。
サ)…っ
 
 
サチはポロポロと涙をこぼして
そんな二人を見て、
あたしまで涙がこぼれてきた。
 
 
あの日のあたしの選択が
そんな風にサチを苦しめてたなんて
思わなかったけど…
 
今こうして二人は仲良く寄り添ってて
幸せで…
 
心から良かったって、そう思える。
 
 
 
将)生まれたらさ、また会いに来てやってよ。
レ)うん……
サ)レイコも頑張って
  元気な赤ちゃん、産むんだよ!
レ)うん…っ
 
 
二人の笑顔に見送られて、
あたしは家に帰ってきた。
 
 
あたしも頑張って…
元気な赤ちゃんを産む。
 
 
玲司を幸せにしてあげたい。
 
一緒に幸せになりたい。
 
 
頭ではそう思えるのに
 
 
レ)…うっ、げほごほっっ
 
 
つわりが続くと
身体の辛さに押されて
 
心まで、蝕まれる。
 
 
あたし、こんなんで本当に
母親になれるの?
 
 
お腹があんなに大きくなって…
 
 
怖い。
 
 
あたし、怖いんだ。
 
 
何もかもが初めてで…不安だらけで…
 
玲司が側にいてくれるのに
支えてくれるのに
 
それでも不安で…
 
 
レ)う…っっ、ふえ…っ
 
 
あたしなんかが…
本当にまともな母親になれるんだろうか。
 
 
考え出すと止まらないマイナス思考が
ぐるぐるぐるぐる巡って…
 
 
………
 
 
……
 
 
 
「あんたは捨てられたのよ!!!」
 
 
…っ
 
 
「お父さんはあんたを捨てたの!!!
 あんたはいらない子なのよ!!!」
 
 
やめ…て…
 
 
「お父さんはあんたを憎んでた。
 あんたのことなんて嫌いだったのよ。」
 
 
いや…、やめて…っ
 
 
「あたしもね、あんたなんかいらない。
 あんたなんて、あたしの子じゃないわ。」
 
 
どうして…
 
どうして愛してくれないの…?
 
 
「あんたなんて…」
 
 
レ)いやぁぁっっ!!!
 
 
玲)レイコ…ッ!!
 
 
目が覚めると
あたしはソファーの上で横になってて…
 
 
玲)大丈夫か?
レ)…っ
玲)帰ってきたら倒れこんでるから
  びっくりして…
レ)……はぁ、…はぁっ
 
 
嫌な夢を見た。
 
 
レ)玲司…っ
玲)…っ
 
 
しがみつくあたしを
玲司は優しく、抱きとめてくれる。
 
 
レ)あたし…、不安なの…っ
 
 
ああ、涙がこぼれてくる。
 
 
レ)…お腹ね、もっともっと
  大きくなるんだよ?
玲)……うん。
レ)人間じゃないみたいに…
  すごく大きくなるの…っ
玲)……うん。
 
 
玲司はただ黙って
あたしに相槌を打ちながら
静かに聞いてくれる。
 
 
レ)怖いの…っ
玲)……
 
 
変わっていく自分の身体。
 
どうなるかわからない初めての出産。
 
 
もちろん不安はあるけど
あたしが本当に怖いのは…
 
 
レ)あたしなんかが…っ
  ちゃんとママになれるの?
玲)…っ
 
 
溢れ出した本音は、もう止まらない。
 
 
レ)ちゃんと愛してあげられるか
  自信がないの…っ
玲)……
レ)子供のこと叩くかもしれないよ?
  暴力を振るうような母親に
  なるかもしれない…っ
玲)……
 
 
一番憎んでた、最低な親になるかもしれない。
 
 
レ)子供のことが嫌になって
  逃げ出すかもしれない…っ
玲)……
 
 
嫌だ。
 
嫌だ。
 
 
そんな自分を想像したら
すごく怖い。
 
 
玲)どうしてそんな風に思う…?
レ)…っ
 
 
だって…
 
だってあたしは…
 
 
レ)親の愛なんてわかんないんだもん!!
玲)……
レ)愛してもらえなかった。
  お父さんにもお母さんにも…
  愛してもらえなかった…っ!!
 
 
玲司だって同じなのに…
 
今更こんなこと言ったって
しょうがないのに…
 
 
レ)愛されてないから
  愛し方なんてわかんないもんっ!!
玲)……
レ)「愛」がわかんないもんっ!!!
玲)……
 
 
泣きじゃくるあたしを
玲司はずっと優しく抱きしめてくれて
 
あたしがようやく落ち着いた頃、
そっとあたしのお腹に、手を当てた。
 
 
玲)びっくりさせてごめんな…?
レ)…っ
玲)ママは今、いろいろ不安で
  いっぱいいっぱいなんだ。
レ)…っ
玲)大丈夫だから、
  安心して生まれておいで?
レ)……
 
 
優しく語りかける玲司に
あたしはまた、涙がこぼれた。
 
 
玲)レイコ…?
レ)…っ
 
 
玲司は優しく、あたしの涙を拭ってくれる。
 
 
玲)俺たちは確かに、親の愛を知らない。
  でも…だからこそ、その分も
  自分たちの子供を
  愛してやれると思わない?
レ)…っ
玲)愛して欲しかった。
  側にいて欲しかった。
  自分がして欲しかったことを
  この子にしてあげようよ…
レ)…っ
玲)お前は「愛」を知らないって言ったけど…
  本当に…?
 
 
玲司の目が、真っ直ぐにあたしを見つめる。
 
 
玲)一郎さんと華子さんは…
  お前を愛してなかった…?
レ)…っ
玲)俺はお前を愛してない…?
レ)…っ
 
 
その言葉に、また涙があふれる。
 
 
玲)みんなお前を愛してて…
  お前も愛してくれてる。
レ)……
玲)お前はとっくに「愛」を
  知ってるだろ…?
レ)…ふ…ぇ…ぇっっ
 
 
ごめんなさい…
 
忘れちゃいけなかったのに…
 
ごめんなさいっ…
 
 
レ)一郎さんも…華子さんも…っ
  玲司も…っ、愛してる…っ
玲)……
レ)愛してるよ…っ
玲)俺たちだって、レイコを愛してるよ?
レ)うわぁぁぁんっっ
 
 
ごめんなさい…
 
ごめんなさい…
 
 
あたしはいっぱい…
愛してもらってるのに…っ
 
 
玲)俺たちがもらって嬉しかったものを
  この子にもあげよう?
レ)……
玲)俺たちが貰えなかったものも
  この子にあげよう?
レ)……
玲)二人で一緒に、愛してあげようよ。
レ)……玲司…っ
 
 
あたしはそっと、自分のお腹に手を当てた。
 
 
レ)ごめんね…?
玲)……
レ)不安になって…
  泣いたりして…ごめんね?
玲)……
 
 
あたし…こんな頼りないママだけど…
嫌いにならないでね?
 
 
レ)玲司と二人で待ってるから…
  元気に生まれておいで…
玲)うん、レイコと二人で待ってるよ。
 
 
二人でお腹に話しかけた。
 
 
レ)玲司、ありがとう…ごめんね?
玲)ううん…
レ)ありがとう。
玲)うん…
 
 
 
その夜は玲司の腕に包まれながら
お腹の子と3人で河原を歩いてる夢を見た。
 
 
その子は可愛い女の子で
朝起きて、
 
 
「この子は女の子だ!」
 
ってあたしが言ったら
 
 
玲司はただただ優しく笑って、
またあたしを抱きしめてくれた。
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
 
それからあたし達は
育児日記をつけることにした。
 
 
「育児日記」って言っても
まだ産まれてもいないから
 
普通にあたし達の日記みたいになってて
 
 
夜、寝る前に
玲司と一緒にそれを書く時間が
毎日楽しみだった。
 
 
玲)これさ、いつかこの子にあげたいね。
レ)うん♡
 
 
あたし達は
自分達がもらえなかった分も
たくさんたくさん、「親の愛情」を
与えてあげたいんだ。
 
 
『今日はお腹を何回も蹴られて
 しゃっくりが出たよ。
 ママが寝てる時は少しだけ
 おとなしくしててね笑』
 
 
玲)この子、今日そんな元気だったの?w
レ)うん。大暴れw
玲)あはははw
 
 
『今日はレイコがベビー服を何色にするかで
 ずっとニヤニヤ悩んでました。
 側から見ると怪しい人でした。』
 
 
レ)ちょ!変なこと書くなよ!///
玲)ぶはははw
 
 
『玲司が一生懸命名前を考えてるけど
 センス無さそうで心配です。』
 
 
玲)こら!何書いてんだよ!w
レ)ふーーんだw
玲)……生まれる前から俺たち、
  親バカすぎかな?///
レ)いいじゃん♡
 
 
書く内容はなんだっていい。
 
ただ、あたし達がこんなに嬉しくて
生まれてくるのを楽しみにしていて
こんなに愛してるんだよって…
 
そんな気持ちが伝わればいいなぁって
そんな気持ちを残しておきたいなぁって
 
 
そう思って始めたんだ。
 
 
レ)でも…いつあげようね?これ。
玲)思春期なんかに渡したら
  パパとママきもーい!
  とか言われるかな?!
レ)ぶはははっww
  あ、そうだ!この子が親になる時は?
玲)おおっ!
レ)この子がいつか結婚して、
  あたし達と同じように親になる時。
玲)ってことは、俺たちの孫?!w
レ)うんww
玲)すっごい先だなーーーw
レ)だねww
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
お腹がどんどん大きくなって
 
身体の自由が利かなくなっていって
 
 
でもあたし達は、毎日幸せだった。
 
 
二人で毎日毎日
お腹の子に話しかける。
 
 
玲司とあたしにこんなに愛されて
どんな子に育つんだろうなんて
 
二人でニヤけながら
話したりして。
 
 
 
春が来て、夏が来て
 
あたしが臨月を迎えると
 
 
玲司は海外の仕事は入れないようにして
空いてる時間はいつもあたしの周りを
ウロウロそわそわしていた。
 
 
レ)もぉ〜〜〜〜〜ww
玲)だって落ち着かないんだよ!///
レ)玲司がそわそわしたって
  この子は生まれてきません!
玲)わかってるけどさ〜〜!///
 
 
ぽこんっ
 
 
レ)ほら、お腹の子もそう言ってる。
玲)えっ!また動いた?
 
 
嬉しそうに玲司が駆け寄ってきて
お腹を撫でる。
 
 
レ)ねぇ…
玲)んー?
レ)いい加減、名前教えてよ。
玲)…っ
 
 
あたしの言葉に
玲司が可愛く、口を尖らせた。
 
 
玲)だって…
  男の子か女の子かわかんないしさぁ〜〜
レ)じゃあ両方教えてよ!
玲)ええ〜〜〜〜〜
 
 
玲司は
何ヶ月か前に
「男の子の名前も女の子の名前も
 どっちも決めた!!」
 
なんて、嬉しそうに報告してきたくせに
その肝心な名前を教えてくれなくて…
 
 
生まれてからのお楽しみ、とか言って
一人でニヤけてるんだもん。
 
 
レ)きっと女の子だってば。
玲)うーーん、じゃあ男の子の方からね。
レ)なんで!!w
玲)まぁ、いいじゃんw
 
 
玲司は嬉しそうに笑った。
 
 
玲)男の子だったらね、「瞬」!!!
 
 
玲司があたしの手のひらに
漢字をなぞってくれた。
 
 
レ)しゅん…?
玲)そう。
  人生の中にある一瞬一瞬の
  喜びとか、嬉しいこと、楽しいこと
  愛とか優しさとか
  そういう小さな幸せを
  ちゃんと見つけられるような子に
  なりますように。
レ)…っ
 
 
玲司が優しく笑った。
 
 
レ)……
玲)…ど、どうかな…?
 
 
何も言わないあたしに不安になったのか
あたしの顔を覗いてきた。
 
 
レ)感動した。
玲)えっ!!
レ)すごくいい名前だと思う///
玲)////
 
 
あたしがそう言うと
玲司はすごく嬉しそうに笑った。
 
 
その笑顔が可愛くて
あたしは玲司のほっぺにキスをした。
 
 
玲)な、何?ご褒美…?///
レ)うん♡笑
 
 
玲司があたしをぎゅむっと抱きしめる。
 
 
玲)女の子の名前も聞きたいー?
レ)もちろん!
玲)女の子はね……
 
 
玲司がお腹を、優しく撫でて…
 
 
玲)「♡」。
レ)……♡…?
玲)うん。
レ)♡……
 
 
あたしも一緒に、お腹を撫でた。
 
 
玲)たくさんの人を愛して
  たくさんの人から愛されて
  いつも笑顔の絶えない
  愛で満ち溢れた優しくて強い…
  そんな太陽みたいな子になりますように。
レ)……
 
 
二人で優しく触れてるお腹が
少しだけあたたかくなった気がした。
 
 
レ)そっか…、♡か…///
玲)うん。
レ)♡……、、
 
 
あたしがお腹に呼びかけると
 
 
玲)男の子かもしれないじゃん!///
 
 
慌てたように玲司がそう言う。
 
 
レ)女の子だってばw
玲)なんでわかんの!
レ)母親の勘!!
玲)ええ〜〜〜!!
レ)だからこの子は、♡!!
玲)……///
 
 
あたしがそう言い切ると、
 
 
玲)♡…、いつでも生まれてきていいよ///
  待ってるからね…、、
 
 
玲司が優しい顔をして
お腹に話しかけた。
 
 
♡…、
 
二人で一緒に待ってるからね。
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
 
それから壮絶な出産を経て
♡が産まれてからの1ヶ月。
 
玲司は仕事をほとんど入れずに
家にいてくれた。
 
 
二人でいっぱい貯めてたから
お金の心配はなかったし
 
こんな時こそ
フリーカメラマンの権限を使うんだ!
とか言って
 
ずっと一緒にいてくれた。
 
 
頼れる人もいないあたしにとっては
すごく心強くて…
 
 
♡)ふぎゃぁぁぁっ
レ)あああ!また泣いてる!!
玲)よっしゃ!任せろ!!
 
 
二人でてんやわんやしながら
初めての子育てに、奮闘した。
 
 
玲)ふぅ…っ、泣き止んだーーw
レ)寝たのかな…?
玲)いや、まだ起きてるよ。
レ)……ほんとだ。
 
 
二人でベビーベッドを覗き込むと…
 
 
♡)…///ンキャッ♡♡
 
 
レ玲)!!!!!!
 
 
♡)キャキャッ/////
 
 
レ玲)か、可愛いぃぃぃぃ////////
 
 
♡が笑うたびに
あたし達はメロメロで…
 
 
玲)なぁレイコ…
  この子、天使かな…////
レ)うん、天使だと思う////
玲)可愛すぎて…どうしよう…///
レ)さらわれないように
  気をつけようね…////
 
 
あたし達は完全に親バカだった。
 
…と、思ってたけど
 
 
どうやらあながち、
そうでもなかったみたいで…
 
 
レ)玲司、大変だよ!
玲)どうした!
レ)今日ね、ママの集まりに連れていったら
  大体の子がギャン泣きだったのに
  ♡だけずっとニッコニコなの!
玲)えっっ!!
レ)他のママに抱っこされても
  きゃっきゃきゃっきゃ喜んで!
玲)マジか……
レ)愛想振りまきまくりで
  みんなメロメロだった…
 
 
♡)///キャキャッ////♡♡
 
 
玲)……罪な子だな。
レ)うん。
 
 
 
……
 
 
 
♡は本当に人見知りしない子で
誰が顔を見せても笑って喜ぶ。
 
 
サ)え、ちょっと…
  ♡ちゃん本当に可愛すぎない?////
レ)でしょ!!!
将)めちゃめちゃドヤってる!ww
レ)だってほんとに可愛いもん!!
 
 
♡を連れて、玲司と一緒に
サチと将史の家に遊びに行ったら…
 
 
♡)ンキャッ////キャキャッ♡♡
 
サ将)可愛いぃぃぃぃ//////
 
 
二人はメロメロ。
 
 
サ)海斗〜〜〜
  ♡が大きくなったらお嫁さんに
  もらおっかーーw
将)それいいじゃん!w
玲)ダメダメダメ!
  ♡は嫁にはやらん!!
レ)あっはははw
 
 
♡より先に生まれた
二人の男の子の名前は、海斗。
 
あたし達がいつもたむろしてた
あの海の溜まり場。
 
二人はあの海が大好きだったから
そこから名前をつけたんだって。
 
 
将)女の子だったら
  海璃って名前にしたいんだー♪
サ)美花もいいなって言ってたじゃん。
レ)ミカ…?
サ)そう。あたしたちがね、
  初めてデートしたのが海の花火だったの。
レ)へぇ!
サ)その時の花火がすごく綺麗だったから…
  「美しい花」って書いて、美花。
レ)良い名前だね!
将)でも海璃も捨てがたい。
  もう二人産んでくれ、サチ。
サ)簡単に言わないでよ、もぉ〜〜!w
レ)あははははw
 
 
海斗は♡と1年も変わらないのに
♡よりはやっぱり大きくて…
 
 
玲)男の子も可愛いな♡
 
 
玲司が嬉しそうに抱っこしてる。
 
 
将)レイジさん、次は男の子がいいってよw
レ)え〜〜!!ちょっと待ってよw
  少しは休ませろw
玲)わかってるよ!///
 
   
 
その日の夜、
 
玲司が♡を寝かしつけて
あたしの隣に戻ってきた。
 
 
レ)ありがと、お疲れw
玲)はぁ……可愛かった♡
レ)ぶくくww
 
 
玲司の腕があたしの腰に巻きついて
ぎゅっと抱き寄せられた。
 
 
玲)二人目は…もっと後で全然いいから///
レ)うん…w
玲)♡があんなに可愛くて
  俺、おかしくなりそうなのに…
  あんなのがもう一人いたら
  俺…メロメロで死ぬ。
レ)あっははははww
 
 
玲司の肩に、そっと頭を乗せた。
 
 
レ)本当に可愛いよね、♡……
玲)俺たちの天使だもんw
レ)うん…w
玲)一郎さんと華子さんがいたら
  死ぬほど可愛がったろうな〜〜
レ)親バカが4人もいたら大変だよw
玲)あはははw
 
 
目尻を下げて嬉しそうに♡を抱っこする
二人の姿が思い浮かぶ。
 
 
レ)♡の抱っこ争奪戦だね。
玲)いや、でもなんだかんだ言って
  一郎さんは華子さんに譲るから
  華子さんの一人勝ちだなw
レ)あははは♡
玲)見せてやりたかったなぁ……
レ)うん……、
 
 
ンナーーー
 
 
玲)おお、トラーー
  お前も会いたいよなーー?
 
 
ンニャーーー
 
 
トラが玲司にすりすりしてる。
 
 
レ)あたし…
  この家で♡を育てられて嬉しい。
玲)え…?
レ)一郎さんと華子さんがいて
  トラがいて…
  玲司がいて。
玲)……
レ)いろんな思い出が…いっぱい詰まってる。
玲)……
レ)すごくあったかくて…
  あたし、この家が大好きなの。
玲)……うん。
レ)……
玲)愛でいっぱいの家にしよう?
レ)うん……
玲)二人がいた頃みたいに…
  いつもみんなが笑ってられるような…
レ)……うんっ
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
♡)…ん…ぁーー、きゃっ♡♡
 
レ)今、ママって言ったんじゃない?!
玲)いーや、違う!
 
♡)ぱっ、ぱぅっ、ぱぁっ♡♡
 
玲)今、パパって言ったよな!?
レ)いーや、違う!
 
 
あたし達は
どっちが先に♡に呼んでもらえるか
そんなアホな戦いをしていた。
 
 
そして。
 
戻らなかったらどうしようって
不安だったあたしの身体は
根性で元に戻して見せた。
 
 
玲)またモデルやるの?
レ)え、やんないよ?
 
 
玲司がきょとんとしてる。
 
だったらそんな頑張らなくても
良かったじゃん、って顔。
 
 
レ)あんなぶよぶよのまんまじゃ
  玲司が浮気する。
玲)しねーよ!w
レ)玲司の周りには
  アホなメス犬がたかってるから。
玲)だからって浮気はしないって。
レ)たかってることは否定しねんだな。
玲)……
 
 
玲司が困ったように笑って
あたしを抱きしめた。
 
 
玲)俺、もうモデル撮る仕事は
  あんまり入れないつもり。
レ)なんで?
玲)もっと撮りたいものが
  たくさんあるから。
レ)……
 
 
玲司は空や自然の写真を撮ることが
確かに増えてた。
 
 
レ)また世界に行くの?
玲)うん。
  景色とかもそうだけど…
  色んな国の色んな人たちを
  撮りたいんだ。
レ)……そっか。
  じゃあ今度は異国の女にモテるな。
玲)だーかーらー!ww
 
 
チュッ
 
 
玲)俺は日本海外問わず
  お前以外の女は興味ねぇよ!
レ)……
玲)……
レ)ほんと…?///
玲)ちょ、何それ…、ずるい。
レ)何が……
玲)可愛い…////
レ)////
 
 
チュッ
 
 
玲)心配しなくていいから…
レ)……うん///
 
 
チュッ
 
 
玲)俺が好きなのはレイコだけ。
レ)…うん…///
 
 
チュッ
 
 
レ)ちょ、ちょっと…待って///
玲)無理。
レ)…んんっ///
玲)お前が可愛いせい。
レ)////
 
 
玲司にそのまま押し倒されて…
 
 
レ)玲司…、好き……////
玲)////
 
 
チュッ
 
 
玲)いきなり可愛くなるの、やめろ///
レ)なってねーもん///
 
 
♡)ふにゃぁぁっっ
 
 
レ玲)!!!!
 
レ)♡が泣いてる!
玲)大変だ!
 
 
二人で慌ててかけつけると
トラがぶにぶにと♡を踏んづけてた。
 
 
レ)ぶはっっww
玲)ねこに踏まれてる!ww
 
♡)ふにゃぁっ!!
 
レ)はいはい、ごめんねw
  ほーら、よしよし♡
 
♡)ふぇっ…ふぇ…っ
 
玲)トラ〜〜〜〜w
  ♡と遊びたかったのか?w
 
 
ンナーー♡
 
 
レ)あはははw
 
♡)……ンキャッ/////
 
レ)あ、もう笑ったし。
玲)トラに悪意がないって
  わかったからじゃない?
レ)うそーー!w
♡)ンキャッ、キャキャッ♡♡
レ)なんか喜んどるわ。
玲)だな。
 
 
♡をそっと
ベビーベッドにおろすと…
 
♡はふわふわと両手を泳がせて
 
 
♡)…らっっ
  と…らぁ…っ♡♡
 
玲)!!!
レ)ト、トラ?!!
 
♡)とら…ぁっ♡♡
  …とらっ…キャッ////
 
 
♡が一番最初に呼んだ名前は
ママでもパパでもなく、トラだった。
 
 
玲)トラに負けたぁぁぁ!!!
レ)ショック…!!
 
 
ンナーー♡
 
 
トラは可愛く鳴いて♡の隣に寝転んだ。
 
 
♡)とらぁ♡♡ンキャッ/////
 
 
そのまま二人並んで眠る姿は…
 
 
レ玲)か、可愛いぃぃぃぃ/////
 
 
玲司はシャッターを切りまくって
あたしはメロメロになりながら
そのツーショットを見つめる。
 
 
レ)たまらん♡♡
玲)最高のコンビだ////
レ)おやすみ、♡、トラ…
玲)おやすみ…、、
 
 
ソファーに戻ってくると
玲司がまたキスを始めて…
 
 
レ)え、え、ちょっと?///
玲)なに。
レ)え…、するの…?///
玲)うん、続き。
レ)……///
 
 
さっきまで♡とトラに
散々デレデレしてたくせに
 
何いきなり男の顔に戻ってんだよ///
 
 
レ)また♡が泣くかもよ…?
玲)大丈夫。
  あいつはいい子だから
  俺たちにHさせてくれる♡
レ)……バカ////
 
 
 
 
 
 
ー続ー

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  1. さゆれ より:

    あっちでも読んたけど、こうやってこちらでまとめて読むとまた感動できる
    マイコさん凄いです。何回読んでも飽きないし、面白い所は笑えるし、感動する所は泣ける!!

    • マイコ より:

      てへへ(❁´ω`❁)褒めらりた〜〜てへへ(❁´ω`❁)♡♡

  2. さゆがん より:

    わたしもそう思いました⬆︎⬆︎
    なんか伏線あるのかなー
    それが繋がってたらすごい奇跡(´⊙ω⊙`)

  3. じゅんじゅん より:

    マイコさん、こんばんは!
    えっ?もしかして、将史くんとサチさんの間に二人目の子供(女の子)が産まれて、美花ちゃんて名付けて、将来、瞬くんの彼女になったりする?
    でも、海璃ちゃんて名前も気になるな…
    ♡ちゃんの会社の後輩と同じ名前だから…
    考えすぎかな?

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