[270]レイコStory ①

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レ)兄ちゃん、金よこしな。
男)……
 
 
コンビニの壁にもたれて
しゃがんでた男。
 
 
レ)聞こえねぇのかよ。金よこせって。
男)……
 
 
2回目のあたしの催促に
そいつはようやく、顔を上げた。
 
 
男)……何。
  俺、中坊にカツアゲされてんの…?w
 
 
そう言って、ふっと口角を上げたその笑顔が
なんかすげぇ柔らかくて…
 
 
レ)うるせーな!///
  とっとと出せよ!
 
 
あたしが金をよこせと
手を出すと
 
 
その男はあたしに手招きして
隣に座るよう、視線を送ってきた。
 
 
なんなんだよこいつ。
 
 
少しイラっとした気持ちと
よくわからない胸の音に
 
あたしはとりあえず
言われた通り、隣にしゃがみこんだ。
 
 
男)ほら、見て。
レ)は!?
男)シーーッ
レ)…っ
 
 
隣にしゃがんだせいで
グンと近くなった顔と顔。
 
 
人差し指を唇に立てて
優しく笑うその仕草に
 
あたしは不覚にも、見とれたんだ。
 
 
男)すっげぇ可愛いだろ?
 
 
そう言われて
足元に視線を向ければ…
 
 
レ)わ…っ
 
 
そこには小さなトラねこがいた。
 
 
レ)可愛い…///
男)気付かなかった?
レ)だって…同化してんだもん!
男)ははっ!確かに…ww
レ)わ……///
 
 
地面の土と同じ、
茶色い色をしたその子ねこは
 
あたしが触ろうとすると
弱々しく怯えた。
 
 
レ)あ、ごめんな…?
男)んー、よしよし…
レ)……
 
 
なんでこいつが触ると
逃げねんだよ。
 
 
男)カツアゲしてんの見てたから
  怖いんだよなー?w
レ)はぁ?!///
男)ぶははっw
レ)////
 
 
なんなんだよ!!
 
 
男)ああ、行っちゃった…
レ)……あ…、、
 
 
小さな子ねこは、元気に走って
草むらへ消えていった。
 
 
レ)…餌でもやってたのかよ。
男)ちげーよw
レ)……
 
 
男の手には、なんかくそデカいカメラ。
 
ねこの写真でも撮ってたのか?
オタクか?
……ふんっ
 
 
レ)餌なんてやるなよ?
男)……なんで?
レ)人間に懐いたらかわいそうだろ。
男)……なんで?
レ)ひどい人間なんて腐るほどいるんだ。
  人間が優しいと思い込んで
  そういうひどい人間にすり寄っていって
  ひどい目に遭うかもしんねぇだろ。
男)……
 
 
ねこには何の罪もないのに…
動物にひどいことをするゲス野郎は
たくさんいるんだ。
 
 
……冷たいと思うなら勝手に思えよ。
 
 
男)優しいんだな。
レ)……は!?
 
 
今、なんて言った?
 
 
あたしがギロリと睨むと
 
 
男)なんでそこで怒んだよ…w
 
 
男はまた、優しく笑った。
 
 
レ)…っ
 
 
なんか…
こいつといると、胸がざわつく。
 
 
そのまま無視して立ち去ろうとすると…
 
 
男)ちょっと待った!ちょっと待った!
 
 
あたしの後ろ襟を、男が掴んできた。
 
 
レ)なんだよ!離せ!!
男)……金、欲しいんじゃないの?
レ)…っ
 
 
そうだった。
 
でも…
 
 
レ)もういらねぇよ!
男)ふーん……
レ)…っ
 
 
なんか…
こいつといると
胸がざわついて…
 
 
レ)じゃーな!!
 
 
なんだよ、これ…
 
なんかすげぇイライラする。
 
 
いや、これが「イライラ」なのか
感情表現に長けてないあたしには
よくわからない。
 
 
レ)くっそ、腹減ったのに…
 
 
あたしは結局コンビニを後にして
町をうろついた後、
夜になって仲間のところへ向かった。
 
 
将)お前、あんま家帰ってねーの?
レ)……
 
 
生ぬるい潮風が肌にまとわりついて
髪をかき上げたら、
 
将史が心配そうにあたしの顔を覗いてきた。
 
 
レ)ん、大丈夫……
将)……
 
 
夏休みが明けてから
もうすぐ一週間だけど
 
学校にも行ってない。
 
 
男)おい!!
  サチがまたやられたぞ!!
レ)は?!
 
 
仲間が担いで連れてきたサチは
顔面が腫れ上がってて
 
腕も痣だらけで…
 
 
将)くそ…ッ!!
  ふざけんなよアイツ!!
レ)サチ、大丈夫?!
サ)うん……、、
 
 
こんなんになるまで殴りやがって…
あの暴力親父。
 
 
男)腹減ってねぇか?!
男)とりあえずこれ食え。
女)大丈夫?サチ……
 
 
サチを心配して、集まってくる仲間たち。
 
 
ここは、不良の溜まり場。
 
でも…男も女も、根は優しい奴ばかりで
みんな仲間思いなんだ。
 
 
男)サチ…、もう俺んとこ来いよ…。
サ)……
女)そうだよ。
  あんな家…もう帰っちゃダメだ。
男)俺んちでも大丈夫だぞ。
サ)みんな…ありがとう。
  でも…あたしが帰らないと…
  お母さんが殴られる……。
男)…っ
レ)……くそッ
 
 
世の中はゲス野郎ばかりで…
 
何の力もないあたし達は
それに刃向かう術もなく
 
こうやって身を寄せ合うことしか出来ない。
 
 
レ)ぶっ殺してやりてぇ…そんな奴。
サ)レイコ…、ありがとう…。
 
 
サチが力なく笑って
あたしの手を握った。
 
 
なんであたしは
こんなに何も出来ないんだろう…
 
大事な仲間がこんな目に遭ってるのに…
非力な自分が嫌になる。
 
 
あたしの親は、あたしを捨てたけど
そんな暴力ばかり振るう親なら
むしろ捨てられた方がマシかもしれない。
 
 
将)走ろうぜ。
レ)……ん。
 
 
日々のやるせなさやイラつきや
もどかしさや歯痒さを
 
全部吹き飛ばすように
バイクの後ろに乗って走り抜ける。
 
 
これがあたしの日常。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
男)姉ちゃん、金よこしな。
レ)…っ
 
 
一瞬ビクッとしたけど
聞き覚えのある、その声。
 
 
まぶしい太陽を避けるように
手をかざして見上げると
 
昨日の男。
 
 
男)怖かった?
  ごめんごめんw
 
 
そう言って頭をポンポンされて…
 
 
レ)別に怖くねぇよ!!
  ナメんな!!
 
 
その手を振り払うと
 
 
男)だからそんなに牙剥くなって。
 
 
男はあたしの隣にドサッと座りこんだ。
 
 
男)日陰、涼しいな。
レ)……
 
 
なんなんだよ。
何しに来たんだよ。
 
 
また近付いた顔は
逆光でもわかるくらい
綺麗に整ってて…
 
 
男)何してんの?
レ)……
 
 
それはこっちのセリフだ。
 
 
レ)誰か来たらカツアゲして
  昼飯買おうと思ってた。
男)……ぶっww
 
 
男はまた吹き出して…
 
 
男)お前…ほんとヤンチャだなー?w
 
 
そう言って
困ったようにあたしを見たその瞳が
すごく優しくて…
 
 
レ)さっきからナメてんじゃねぇぞ!!
 
 
あたしが立ち上がると、
男の冷たい手がヒヤリ…あたしの手を握った。
 
 
レ)…っ
 
 
夏の空気はジリジリ熱いのに…
なんでこの男、こんなに手が冷たいんだ?
 
 
その温度が心地よくて
振り払うことを忘れてると…
 
その手にグイッと引かれて
あたしはまた、座らされた。
 
 
レ)なんだよ!!
男)お前の手、熱いな…w
レ)…っ///
 
 
あたしは握られてる手を、振りほどいた。
 
 
レ)こんなクソ暑いんだから
  当たり前だろ!!
 
 
あたしの声もかき消すくらい
蝉だってうるさく鳴いてる。
 
 
男)暑いんだったらそんな怒んなよ。
レ)…っ
 
 
男は隣からあたしの顔を覗くように
近付いてきて
 
 
レ)近寄んな!クソジジイ!///
男)はぁ?!
 
 
大きな手が、あたしのほっぺに触れて
むにっと摘んできた。
 
 
男)誰がジジイだ、コラ。
  お前とそんな変わんねぇよ。
レ)…っ
 
 
重なる視線も…
触られてる頬も…
 
その全部が
あたしの体温を上げていく。
 
 
レ)離せジジイ!!
男)だからジジイじゃないってw
レ)……ふんっ///
 
 
あたしはもう一度立ち上がって
男に手を出した。
 
 
レ)金よこせ。
男)おっと。
レ)とっととよこせ。
男)……
 
 
男は返事せずに立ち上がると
あたしの手を取って…
 
 
レ)何すんだよ!!///
 
 
振りほどこうとしても
強く掴まれてて、離れない。
 
 
男)俺も腹減ったし、一緒に食うか。
レ)…っ
 
 
そう言ってあたしを無理矢理
店内へと連れ込んだ。
 
 
冷房の効いた店内は
少し肌寒いくらいで…
 
繋いでる手から汗が引いて
あたしは少しほっとした。
 
 
男はあたしの分もカゴに入れて
一緒に精算してくれて…
 
 
結局、店の外の日陰で
一緒に食べることに。
 
 
レ)ちっ…なんなんだよ…
男)なんで買ってやったのに
  舌打ちすんだよ、お前は…w
レ)…っ
 
 
確かに。
 
 
レ)どうもな。
 
 
あたしが顔も見ずに一応、礼を言うと…
 
 
男)ばーかw
レ)…っ
 
 
また柔らかく笑いやがって。
 
 
あたしには夏の太陽より
 
こいつの笑顔の方が
なんだか眩しくて、直視できない。
 
 
男)お前、名前なんていうの?
 
 
男がおにぎりを頬張りながら
そう尋ねてきた。
 
 
レ)なんでもいいだろ。
男)そこは教えろよw
レ)うるせぇ。
男)……
 
 
あたしは…
自分の名前が好きじゃない。
 
こんな名前…
 
 
男)おい、ブス。
レ)はぁ!??
 
 
あたしが勢いよく振り向くと
男の手が近付いてきて
 
 
レ)…っ
 
 
あたしの唇の端を、拭っていった親指。
 
 
男)ガキかよ…w
レ)////
 
 
男はそれをペロリと舐めて
 
また何事もなかったかのように
自分のおにぎりを食べてる。
 
 
男)ん?食わねぇの?
レ)……///
 
 
なんだよこれ…
 
やっぱりこいつといると…
 
なんか…調子が狂う。
 
 
男)もう腹一杯か?
レ)く、食うし!!///
 
 
知らない間に握りしめていた
チョコレートサンドは
 
チョコレートがむにゅっとはみだしてた。
 
 
男)また口につけんなよー?w
レ)つけねぇよ!
 
 
くそ…っ///
 
 
男)おい、ブス。
レ)はぁ?!!
男)お前のそれ、頂戴。
レ)…っ
 
 
今度は男の右手がぬっと伸びてきて
あたしのオレンジジュースの缶を
さらっていった。
 
 
男)さんきゅーーw
 
 
一口飲んで返されたけど…
 
 
レ)ひ、人のもん勝手に
  飲んでんじゃねぇよ!
男)俺が買ってやったんだからいいじゃんw
レ)……
 
 
そうだった。
 
 
男)なぁ、ブス。
レ)さっきからブスブスって
  なんなんだよ!!!
男)だってお前が名前、
  教えてくれねぇんじゃん。
レ)…っ
男)俺だって女をブスって呼ぶ趣味はねーぞ。
 
 
なんだよそれ。
 
 
男)で、名前は?
レ)うるせぇ…っ
男)……
レ)あたしはブスじゃねぇ。
男)ぶはっw
  あははははっw
 
 
男は腹を抱えて笑ってる。
 
 
男)冗談じゃんw
レ)……
男)…お前は綺麗だよ?
レ)…っ
 
 
いきなり声色が優しくなって
隣を振り向けば
 
……また、だ。
 
 
また捕まる、この男の、この瞳。
 
 
優しい手つきで
あたしの髪を耳にかけて
 
また、柔らかく笑うんだ。
 
 
そう…
昨日のねこに、そうしてたように。
 
 
男)モデルでもやればいいのに。
レ)……は!?
 
 
唐突なその言葉に
思わず声が引っくり返った。
 
 
男)こんな綺麗なんだからさ。
レ)…っ
 
 
自分が割と美人な部類なのは自覚してるし
褒められることにだって慣れてる。
 
 
なのに…
 
なんで…
 
 
レ)////
男)あれ?照れてんの…?
 
 
なんで…この男に言われると…
 
 
男)ははっ、お前ほんとかわいーなw
 
 
可愛い…?
 
あたしが…?
 
 
……んなわけねぇだろ。
 
 
レ)目ぇ腐ってんじゃねぇの。
男)あっはははw
 
 
あたしが睨んでも
いちいち笑うこの男に
 
あたしは腹を立ててもいいくらいなのに…
 
この笑顔がやっぱり柔らかくて…
 
 
男)ちなみに…
レ)……
男)俺の名前は、レイジな。
レ)レイジ…?
男)そう。「クソジジイ」じゃねぇからな。
レ)……レイジ。
男)覚えたか?いい子いい子w
 
 
また頭を撫でられて…
 
 
レ)離せっっ!!!
 
 
あたしは食べ終わったゴミを
ゴミ箱にぶん投げた。
 
 
レ)じゃーな!!
男)おう、またなw
レ)「また」なんかねぇよ!!
男)明日も腹減ってたら来いよーーw
 
 
背中を向けて歩き出したあたしに
そう呼びかけてきた。
 
 
なんなんだよ。
 
なんなんだよ、あいつ。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
サ)お父さん…警察に捕まったの。
レ)…っ
 
 
いつもの溜まり場で集まっていたら
サチがみんなにそう告げた。
 
 
サチの父親はずっとアル中で…
酔っ払って店の中で暴れて
人に怪我を負わせて
 
警察に連れていかれたらしい。
 
 
男)マジか…
サ)帰ってこなきゃいいのに…
レ)…サチ……
サ)もうずっと…
  いなくなってくれればいいのに…
レ)……
 
 
生ぬるい潮風が肌にまとわりついた。
 
 
早く、大人になりたい。
 
 
大人なんかの力を借りずに
指図もされずに
自由に生きられるくらいの力を身につけて
 
大事な仲間も守れるくらい
強くなりたい。
 
 
 
 
将)なぁ…レイコ……
レ)んー?
将)中学卒業したらさ、
  俺と暮らさないか?
レ)…っ
 
 
将史の目は真剣だった。
 
 
将)……
レ)……
 
 
将史の母親もろくでもない女で
毎日将史の顔を見ては
出て行けと罵るらしい。
 
 
家には母親が連れ込んでる男が
入れ替わり立ち替わりいて、
 
将史は自分の家には居場所がない。
 
 
将)中学出たら…すぐ働いて…
  お前一人くらい…
  食わせていけるように
  俺、頑張るからさ。
レ)……
 
 
その気持ちが、嬉しくて…
 
あったかくて…
 
あたしは、涙が出た。
 
 
将)レイコ……
レ)ありがとう、将史。
将)……
レ)……
将)……考えてくれるか?
レ)…うん……。
 
 
あたしは頷いたのに…
 
将史の気持ちは本当に嬉しかったのに…
 
 
頭に浮かんできたのは…
どうしてか、レイジの顔だった。
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
次の日も学校をサボって
太陽が高くなった頃、
 
 
「明日も腹減ってたら来いよーーw」
 
 
あいつの言葉を思い出した。
 
 
レ)もう13時か…
  腹減ったな。
 
 
いつものコンビニへ向かうと
あいつの姿はなくて…
 
 
レ)そりゃそうか。
 
 
あたしを待ってるわけがない。
 
 
カツアゲできる誰かが来るまで
待ってようと
 
日陰のコンクリートに腰を下ろすと
 
 
男)おーい!ブスーー!
 
 
後ろから、あいつの声がした。
 
 
男)遅くなってごめんな。
レ)は!??
 
 
それじゃああたしがお前を
待ってたみたいじゃねぇか。
 
 
男)昼まだ食ってないんだろ?
  ほら、買うぞw
レ)…っ
 
 
また手を繋がれて、入った店内。
 
今日買ってくれたのは、ジャムサンド。
 
 
日陰に並んで食べてると
レイジがくすっと笑った。
 
 
男)お前、甘いもん好きなんだなw
レ)バカにしてんじゃねーぞ。
男)してねーよw
  可愛いなって。
レ)やっぱりバカにしてんじゃねぇか!
男)してねぇってw
  いちいち牙を剥くな。
レ)…っ
 
 
そう言って、頭を撫でられた。
 
 
レ)……触んな///
男)ハイハイw
 
 
くそ…っ
 
やっぱり調子が狂う。
 
 
男)お前、一応制服は着てんのに
  サボってんのな?
レ)…っ
 
 
なんだよ。
てめぇに関係ねぇだろ。
 
 
男)そんな怖い顔すんなよ。
  別に学校行けとか言わないし。
レ)……
 
 
言わねぇのかよ。
変な奴。
 
 
男)……よしっ
 
 
レイジは食べ終わると
すくっと立ち上がって
 
落ちてる木の枝を、拾ってきた。
 
 
男)ちょっと、こっち来いよ。
レ)……
 
 
コンクリートが途切れて
下が土になってるところ。
 
そう。
 
 
一昨日、初めて会った時に
レイジがねこを撫でてた場所だ。
 
 
レ)なんだよ。
男)んー?はい。
レ)???
 
 
木の枝を渡された。
 
 
レ)なんだよ。
男)名前、書いてよ。
レ)……は?
男)お前の名前。
レ)……なんで…
 
 
馬鹿馬鹿しい。
 
あたしが木の枝を放り投げると
 
 
男)あーあ……
 
 
レイジはそれを拾いに行って
またあたしの横に座った。
 
 
男)なんで名前教えてくんねーの?
レ)嫌いだから。
男)お前…ひどい奴だな。
レ)は?
男)こんな仲良く昼飯食ってる俺のこと、
  嫌いなの?
レ)なっ、仲良くなんて食ってねーし!///
男)……
レ)嫌いなのは自分の名前!!
  お前のことじゃねぇよ!!
 
 
あたしは…
何を慌ててフォローしてんだろ。
 
 
男)自分の名前、嫌いなの?
レ)……
 
 
好きになれるわけ、ねぇだろ。
 
あたしを捨てた親が
勝手にあたしに、つけた名前なんて。
 
 
男)俺も…好きじゃなかったけどさ、
レ)え…?
男)生きてりゃ…好きな人間が増えてく。
レ)……
男)仲間や、大事な人。
レ)…っ
男)そういう人たちがさ、呼んでくれる
  自分の名前って…
  呼んでもらううちに
  自然と好きになるよ、きっと。
レ)……
 
 
あたしが黙ってると
 
 
男)中坊にはまだわかんないかw
 
 
そう言ってまた、
レイジは柔らかい笑顔を浮かべた。
 
 
レ)バカに…すんな…。
男)してねぇよ。
レ)……
 
 
誰かに呼ばれて…
自分の名前を好きになる?
 
そんなこと…あるかよ…
 
 
男)ちなみに……
 
 
レイジが木の枝で、土を掘っていく。
 
 
そこに書かれた文字は…
 
 
レ)…っ
 
 
なんで…あたしの名前…っ
 
 
ザザザ…ッ、ザザッ…
 
 
レ)…っ
 
 
__違った。
 
 
 
「玲司」
 
 
 
玲)俺の漢字。
レ)……
玲)かっけーだろ。
レ)……
 
 
ドキン…
 
ドキン…
 
 
玲)俺は漢字まで教えたんだから
  いい加減お前の名前、教えろw
レ)…っ
 
 
ドキン…
 
ドキン…
 
 
あたしは、自分の胸の音を誤魔化すように
目の前の文字を、右足で消した。
 
 
玲)あ!!お前何すんだよーー!!
レ)…っ
 
 
玲司が持ってた枝を奪い取って
そこに一文字、書き足す。
 
 
玲)「子」…??
レ)……
玲)「玲子」…??
レ)……
 
 
玲司がまじまじ地面を見つめて
ハッとして、あたしを見た。
 
 
玲)玲子?!
  お前、玲子っていうの??
レ)……わりーかよ///
玲)しかも俺と同じ漢字じゃん!!w
 
 
玲司が嬉しそうに笑って
あたしの手を握って…
 
 
玲)すげぇ!!!w
レ)////
 
 
あたしの手に付いた土を
優しく払いながら…
 
柔らかく笑って、こう言った。
 
 
玲)同じ漢字かぁ…
レ)……
玲)なんか俺たち、運命みたいだな?
レ)…っ
 
 
そう。
 
 
あとから思えばあたしはきっと、
この瞬間に恋に落ちたんだ。
 
 
玲)玲子……
レ)……////
 
 
玲司が呼ぶ、自分の名前が
 
すごく特別に響いて…
 
 
あたしにこの名前をつけたのは
あたしを捨てた、ろくでもない親だけど
 
 
この漢字を選んで
この名前にしてくれたことに
 
 
____初めて、感謝した。
 
 
 
ずっと嫌いだった自分の名前が
玲司の声で呼ばれて
 
一瞬で…
 
 
輝きを放ったんだ_____。
 
 
 
 
 
ー続ー

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コメント

  1. いぃりゅう より:

    わぁ、もうこっちまでキラキラしてきちゃう←

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