[182]好きな人の涙(優助Side)

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……
 
 

 
 
 
朝、目が覚めると、
◇の小さな手が俺の手をキュッと握ってて…
 
ソファーで寝てる俺の身体に
突っ伏すような形で、◇が眠ってた。
 
 
優)◇……?
 
 
そっと声をかけると、
ゆっくり持ち上がった瞼。
 
 
優)何してんの…?
 
 
柔らかい頬をそっと撫でると…
 
 
◇)優助…帰っちゃったかと思ったんだもん…
 
 
そう言って、
俺の脇におでこでグリグリしてきた。
 
 
優)……///
 
 
可愛いなぁ…もう…。
 
 
◇)ちゃんといたから…安心したの…。
優)……
◇)…ぎゅ……、
 
 
心許なく甘えるように
俺に伸びてきた可愛い両腕。
 
 
優)…っ
 
 
そのまま抱きしめてやりたかったけど…
 
 
優)朝から何甘えてんの…w
 
 
◇の手を掴んで、
誤魔化すように起き上がった。
 
 
優)ゆっくり寝れた?
◇)……うん。
  優助は……?
優)うん、寝たよ。
◇)……。
 
 
ああ…なんか…
抱きしめてほしそうに…俺を見てる。
 
決心が揺らぐから…やめて。
 
 
◇)優…助…?
優)ん…?
◇)ぎゅって…して…ほしい……。
優)…っ
 
 
目を合わさないようにしてたのに
ハッキリ言われた。
 
 
優)……ええと……
◇)……ぎゅ……、
優)……///
 
 
ほんとは…
抱きしめたくて仕方ないけど…
 
 
優)……ダメ。
 
 
そう返事した。
 
 
今ここで俺が抱きしめたら
◇はまた、流されるから。
 
気持ちが見えなくなって、
泣くことになるから。
 
 
◇)どうして…ダメなの…?
優)…っ
 
 
……そんな…可愛い顔して見ないで…
頼むから…///
 
 
◇)…あ……、
優)……
 
 
◇の視線が、ダンボールに向いた。
 
 
◇)…捨てて…ないから…?
優)…っ
 
 
◇はそう言うと、唇をキュッと結んで…
泣きそうな顔で立ち上がった。
 
 
優)違うから…っ!
 
 
俺は慌ててその手を掴んで、
隣に座らせた。
 
 
優)無理に…捨てなくていいよ…っ
◇)…っ
優)捨てたく…ないんでしょ…?
◇)…っ
 
 
俺がそう言うと、
◇の眉はゆっくり下がって…
 
大きな瞳からは、涙がポロッとこぼれた。
 
 
優)全部…大事なものなんじゃないの…?
◇)…っ
 
 
またポロポロとこぼれる、大粒の涙。
 
 
優)◇、聞いて…?
◇)…っ
 
 
俺は向かい合って、◇の手を握った。
 
 
ちゃんと…伝えなきゃ…。
 
 
優)俺は、◇のことが好きだよ。
◇)……
優)◇がもし、俺を選んでくれるなら…
  全力で幸せにするし、
  絶対大事にするって、誓える。
◇)…っ
優)でも…
◇)……
優)一番大事なのは…◇の気持ちだから…
◇)……
優)岩ちゃんが好きなら…
  それはそれで…いいんだよ…?
◇)…え…?
 
 
俺の言葉に、
◇は少し驚いたように、俺を見上げた。
 
 
優)それで俺に罪悪感を感じる必要は
  一切ないし…
  ちゃんと…自分の気持ち…大事にして?
◇)…っ、……ど…して…?
優)……
◇)だって…あた…し…っ
  いっぱい優助に…甘えて…っ
優)うん。
 
 
ポロポロ涙を流す◇の頭を、そっと撫でた。
 
 
優)甘えてくれるのは全然いいし…
  俺を頼ってくれるのは嬉しいんだけど…
◇)……
優)それで◇が…
  自分の気持ちを間違えるのは…
  違うと思うから…。
◇)え…?
 
 
いや、違うな。
 
ほんとは…
間違えてもいいから
俺に甘えて欲しい、頼って欲しいって
最初はそう思ってた。
 
 
でも…
それは結局…
◇の幸せには繋がらないって、わかったから。
 
 
優)◇さ、俺に言ったじゃん?
  自分の気持ちがハッキリしないから
  俺とも会わないって。
◇)……うん。
 
 
「このまま一緒にいたら…
 甘えてダメになっちゃいそうだから…」
 
 
◇はちゃんとそう言ったのに、
我儘を言ったのは俺だった。
ごめんな。
 
 
優)だから、もう会わない。
◇)え……?
優)今更ごめんな…?
◇)…っ
優)◇の気持ちが落ち着いて…
  答えが出るまで…
  俺も会わないよ。
◇)ど…して…?
 
 
◇が俺の手をぎゅっと握り返した。
 
 
◇)答えは…もう出たでしょ…?
優)…っ
◇)剛典に…別れるって…言ったもん…
優)……
 
 
じゃあどうして…
そんなに泣いてんの…?
 
 
◇)あたしは…優助が……っ
優)◇。
◇)…っ
優)そんな急いで答え出さなくていいんだよ。
◇)……
 
 
俺のせいでそうなっちゃったんだろうけど…
本当にごめん…。
 
 
優)本当の気持ちが…見えなくなるから…
  急がないで。
◇)…っ
優)自分の気持ち、間違えないで。
◇)…どう…して…?
  人の気持ちに…正解も間違いも…
  ないんでしょ…?
優)…っ
 
 
確かに…そうだけど…
 
 
優)間違いっていうか…
  自分の気持ちに嘘は
  ついてほしくないから。
◇)嘘…なんか…
優)じゃあ◇は…
  本当に俺のことが好き…?
  俺の目を見て…そう言える…?
◇)……っ
優)岩ちゃんのことなんて
  もう好きじゃないって…言える?
◇)……
優)俺と今、キス…できる?
◇)…っ
 
 
こんな意地悪言ってごめん。
 
 
でも…
 
 
あの日と同じように
俺の唇をかわして俯いた今の◇が、
真実だと思うから。
 
 
◇)…ご…め…っ
優)謝らなくていいから。
◇)…ひ…っく…っ
 
 
謝らなきゃいけないのは俺の方で。
 
 
優)ごめんな…。
 
 
弱ってる時に…
心を掻き乱すようなことして…ごめん。
 
 
優)でも…これだけは誤解しないで。
◇)……
優)俺はほんとに…◇が好き。
◇)…っ
優)◇がどんな答えを選んでも、
  ◇が笑顔で幸せならそれでいいから。
◇)…っ
優)もしその答えが俺と一緒にいることなら、
  本当に命がけで幸せにしてやる。
◇)…っ
 
 
最後にそう言うと、
◇は何度も「ありがとう」って言いながら
涙を流し続けた。
 
 
泣いてる◇を抱きしめてやりたいけど…
もう間違えない。
 
次に抱きしめてやれるとしたら、
それは◇が俺を選んだ時。
 
 
優)俺…ちゃんと待ってるから。
◇)…っ
優)答えが出たら、教えて?
◇)……(こくん)
 
 
頷いてくれた◇の頭を撫でて
俺は立ち上がった。
 
 
優)じゃあ行くね。
◇)……うん。
 
 
玄関で見送ってくれる◇を
抱きしめたい気持ちを必死に堪えて、
俺は◇の部屋を出た。
 
 
外はもう日差しが照りつけてて…
朝なのにもう暑い。
 
 
こんな日は海に行って波に乗って
いろんなモヤモヤを吹き飛ばしたいけど…
 
俺にはまだ、やることがある。
 
 
スマホでLDHの住所を調べてると、
丁度桜ちゃんから電話が来た。
 
 
優『もしもし?』
桜『あ、優ちゃん?もう起きてた?』
優『うん。どうしたの?』
桜『あそぼーーー♡』
優『え?』
 
 
いきなりの無邪気なお誘いに
思わず笑ってしまった。
 
 
桜『土曜日やん!仕事休みやろ?』
優『うん。でも今日はごめん。』
 
 
てゆーかなんで俺なんだ?
 
 
優『あいつら誘えば?きっと暇してるよ。』
 
 
この間合コンしたうちの同僚。
桜ちゃんのこと気に入ってたし。
 
 
桜『桜は優ちゃんと遊びたい!!』
優『なんでw』
桜『えっと…相談したいこと…あるし…』
優『あ、そうなの?!』
 
 
じゃあ…どうしようかな。
 
 
優『今からちょっと行くとこあるから…』
桜『どこ?!』
優『えっと…どこって…』
桜『どこ行くん!!』
優『……LDH。』
桜『えっ!!』
 
 
俺の言葉に
桜ちゃんが固まったのがわかった。
 
 
桜『何しに行くん…警備員おるで。』
優『ああ…だろうね。
  芸能事務所だしね。』
桜『……』
優『てゆーか住所調べてるんだけど
  全然出てこなくて…』
桜『桜知ってんで!』
優『えっ…』
桜『一緒に行く!!』
優『いやいや、住所教えてくれるだけで…』
桜『あかん!一緒に行く!!』
優『…っ』
 
 
そう言い張る桜ちゃんは
それからすぐに中目黒駅まで来た。
 
 
優)なんか…ごめん、わざわざ。
桜)ええよ♪
  その代わり用事終わったら遊んでな!
優)遊ぶっていうか…
  相談あるんでしょ?
桜)あ、ああ!そうやった!そうそう!
優)俺で良ければ聞くよ。
桜)ありがとーー♡
 
 
それから10分くらい歩くと
見えてきたガラス張りのビル。
 
 
桜)ここやで!
優)ほんとに警備員いる。
桜)うん!いっつもおるもん!
優)じゃあちょっと行ってくる。
  待ってて。
 
 
桜ちゃんを入口に残して
自動ドアの中に入ると、
受付があって。
 
 
優)あの、すみません。
  LDHの岩田さんに
  渡してほしいんですけど…
 
 
俺が名刺を差し出すと、
 
 
男)すみません、そういったものは
  受け取れません。
 
 
秒で返された。
 
 
仕方なくもう一度名刺を見せて
自己紹介をし直した。
 
 
優)ファンとかではないので
  この名刺を渡してもらえるだけで…
男)申し訳ございませんが…
 
 
その時だった。
 
 
桜)何ケチケチしとんねん!
男)…っ
桜)ファンやないって言うとるやろ!
  なんでもかんでもファンやと思うなよ!
  この天狗事務所が!!
優)ちょ、桜ちゃん!!汗
桜)この人はな、ほら!
  名刺見たらわかるやろ!
  おじさん目ぇ付いてるん?!
  こんな大手で働いてるエリートやねん!
  そのへんウロウロしてる
  ストーカーまがいのファンと一緒に
  せんといてくれる!?
男)…ええと…すみません…っ
桜)岩ちゃんに渡せばええねん!この名刺を!
男)ええと…でもそれは…
桜)うちらは岩ちゃんの知り合いやねん。
  この名刺見せて名前見たら
  本人もわかるから!
男)…っ
桜)ほんでどうしたいん!優ちゃん!
優)…っ、ええと…
  連絡が…欲しいんだけど…
桜)ほんならな、おじさん!
  この名刺、岩ちゃんに渡して
  連絡欲しいって伝言伝えてや。
男)ええと…
桜)名前見たらわかるから。
  しゃーないから桜も裏に書いたるわ。
優)えっ…
 
 
そう言うと桜ちゃんは受付にあったペンで
俺の名刺の裏に
 
「電話しぃや!男見せろよ岩田! 桜」
 
そう書いて、受付の人に渡した。
 
 
桜)絶対に渡しや…?
男)……わかりました。
 
 
桜ちゃんの気迫で、
なんとか名刺は受け取ってもらえて。
 
後ろでそんな俺たちを
ヒヤヒヤしながら見てる警備員を無視して
桜ちゃんはそのまま外へ出て行った。
 
 
優)ええと…よろしくお願いします。
  失礼します。
 
 
俺も急いでその後ろを追いかけた。
 
 
桜)はぁ…外に出るとやっぱり暑いなーー
優)ええと…桜ちゃん…ありがとう。
桜)何がー?
 
 
何がって…
あんなに逞しい子だったとは…
 
 
桜)これで優ちゃんの用事も終わりやろ?
優)……うん。
桜)ほんなら桜に付き合って♡
 
 
そう言って連れて行かれたのは
近くのカフェ。
 
 
桜)ここのパンケーキがな、
  めっちゃくちゃ美味しいね〜ん♡
優)ははっ、じゃあご馳走するよw
桜)え!ほんまに?!
優)うん。さっきのお礼。
桜)やった〜〜〜!♡
  優ちゃんありがとうっ!♡
 
 
無邪気に喜んでる。可愛いな。
 
 
でも…
ほんとに桜ちゃんがいなかったら
受け取ってもらえたか怪しいし。
 
 
桜)岩ちゃん…電話してくるかな〜〜
優)どうだろうね。
桜)電話来たらなんて言うん?
優)……
桜)桜が言ったろか?
優)いやいや、w
桜)お姉のこと泣かせたら
  ぶっ飛ばすでぇ!!って。
優)……
 
 
言いたいのは…
そんなことじゃなくて…
 
泣かせたのは…俺だし…。
 
 
桜)なんでそんな顔するん…?
優)え…?
桜)泣きそうな…顔…。
優)…っ
 
 
桜ちゃんが心配そうに
俺の顔を覗き込んできた。
 
 
優)何言ってんの…
  泣くわけないでしょw
  ほら、早く頼みなよ。
 
 
誤魔化すようにメニューを渡したのに、
桜ちゃんはそれを受け取らずに
俺の手をぎゅっと握った。
 
 
桜)泣きたかったら…泣いてもええよ。
優)え…?
桜)桜、別に…
  男のくせにとか…
  そんなん…思わんし…
優)…っ
桜)男の人でも…悲しい時は…
  悲しいと…思うし…っ
 
 
そう言ってる桜ちゃんが
なぜか泣きそうで…
 
 
優)大丈夫だって!w
 
 
少し胸が熱くなったけど、
俺はまたそれを誤魔化して
桜ちゃんの頭を撫でた。
 
この子はほんとに素直な子だなぁ…。
 
 
優)ほら、何食べんの?
  パンケーキが美味しいんでしょ?
桜)……うんっ。
  リリコイパンケーキ!フルーツ盛りっ!
優)はは、これなら◇も好きそう…w
桜)……
 
 
俺がそう言うと、
桜ちゃんは俺をじーっと見て…
 
 
桜)優ちゃんはいっつもお姉のこと
  考えてるん…?
 
 
そう言った。
 
 
優)……そうだね…、
  無意識に頭の中にはいるかな。
桜)ふーん……
優)好きな人ってそうじゃない?
桜)ほんなら逆に…
  いつも頭の中にいる人は
  好きな人ってこと?
優)うーん…そうじゃない?
  好きっていうか…大事な人…?
桜)……
 
 
桜ちゃんは少し考えた顔をして
パンケーキを注文した。
 
 
優)で、相談って…?
桜)……
優)……
桜)桜、好きな人が出来てん。
優)えっ!
 
 
ほんとに?
 
 
優)佐藤?山口?え、誰??
桜)そうやなくて…
優)…え…?
 
 
この間のメンツじゃないのか?
 
じゃあ…やっぱり例の先輩?
 
でも今、「出来た」って言ったし。
 
他にも出会いがあったのかな?
 
 
桜)好きな人…出来てんけど…
  優ちゃんがちゃんと順番守りやって
  言うてたから…
優)……
桜)どうしたらええかわからん。
優)え…?
桜)桜はいっつも…順番間違えるから…。
優)……
 
 
そっか。
今度の人は…
ちゃんと順番守りたいって思える人なんだ。
 
 
桜)それに…
  その人には好きな人がおんねん。
優)え…っ
 
 
じゃあ…片思いなのか。
 
 
優)彼女がいるわけじゃないの?
桜)うん、その人の片思い。
優)そっか…。
桜)せやからはよフラれて
  桜のこと見てくれたらええのにって
  思ってんねん。
優)……ははっ
桜)最低やろ、桜。
優)うーん…ある意味正直でいいんじゃない?
桜)……優ちゃんは優しすぎんねん。
 
 
少し不満そうに呟いた桜ちゃんは
テーブルに置かれたパンケーキに
キラキラと目を輝かせた。
 
 
桜)いっただっきまーす♡
 
 
美味しそうに頬張る彼女を見てると、
ポケットの中で揺れた携帯。
 
 
優)…っ
 
 
取り出すと、知らない番号からの着信で。
 
 
優)ごめん、ちょっと電話出てくる。
 
 
俺は慌てて席を立った。
 
 
もしかして…
いや、でも…早すぎないか?
 
そう思いながら通話をタップすれば…
 
 
『もしもし…。岩田ですけど。』
 
 
電話の相手は、やっぱり岩ちゃんだった。
 
 
優『ああ、ええと…すみません。
  ご連絡ありがとうございます。』
 
 
こんなすぐに
かけてきてくれると思わなかったから
少し戸惑いながら返事をした。
 
 
岩『……俺から連絡欲しいって…何?』
優『ああ、はい。お忙しいのにすみません。』
岩『お前…ほんとに優助?』
優『え…っ?』
岩『いきなり敬語で気持ち悪ぃ。』
優『…っ』
 
 
まぁ確かに散々失礼な態度は取ったけど…
一応俺より年上だし。
 
 
岩『で、何の用?』
優『……◇のことだけど…』
岩『…っ』
優『何もないから。』
岩『……は?』
優『それだけ…言いたくて…。』
岩『……意味がわかんねぇ。』
優『だから…
  俺ん家に泊まりに来たけど…
  何もしてないから。』
岩『…っ』
優『泊まりに来たのも…
  俺が無理矢理、
  連れて帰ったようなもんだし…』
岩『……』
優『誤解されるようなことは、
  何もしてないから。』
岩『……』
 
 
俺がそう伝えると、
岩ちゃんは電話の向こうでしばらく無言で…
 
 
岩『なんでそんなこと
  わざわざ俺に言うわけ?』
 
 
そう言った。
 
 
岩『そんなこと言うために
  わざわざうちの事務所来たの?』
優『……。』
 
 
岩ちゃんが誤解してた方が
俺には都合がいいのかもしれないけど…
 
それは、フェアじゃないと思うから。
 
 
優『そんなことって…
  大事なことじゃないですか?』
岩『…っ』
優『岩田さんにとっては
  どうでもいいことなんですか?』
岩『……んなわけねぇだろっ』
優『……』
 
 
……だよな。
 
 
岩『そうじゃなくて…
  それをお前が俺に
  いちいち報告する意味がわかんねぇって
  言ってんだよ…っ!』
優『……』
 
 
そんなの…
理由は一つしかない。
 
 
優『◇が…泣いてたから。』
岩『……っ』
優『…だから…伝えたかっただけです。』
岩『……』
優『事務所まで押しかけてすみませんでした。
  ご連絡ありがとうございました。』
 
 
そう言って俺は、電話を切った。
 
 
優)はぁ…。
 
 
携帯をポケットにしまって振り返ると、
 
 
桜)優ちゃんってほんまアホやな…。
優)うわぁ!びっくりした!!
 
 
桜ちゃんが呆れたように立ってて。
 
 
優)聞いてたの!?
 
 
驚く俺を無視して、テーブルに戻った。
 
 
優)人の会話は盗み聞きしちゃダメでしょ。
桜)優ちゃんは優しすぎんねん…。
優)……
 
 
俺の言葉を無視して、
さっきと同じ言葉を繰り返す桜ちゃん。
 
 
桜)なんでもっとズルくならんの?
優)…っ
桜)桜なんて…
  好きな人がはよフラれたらええって
  思ってんねんで?!
優)……うん。
桜)お姉のこと好きなんやったら…
  お姉と岩ちゃんなんかとっとと終わって
  お姉が自分んとこ来たらええのにって
  そう思わんの?!
優)……
 
 
思ったよ。
思ったけど…
 
 
◇が泣くのは…違うと思うから。
 
泣いてる姿を…もう見たくないから。
 
 
優)笑っててほしいんだよ…。
桜)…っ
優)◇が幸せに笑える相手が…
  俺じゃなくて岩ちゃんなら…
  それでいい。
桜)……何なん…それ…。
  強がってるだけやん…。
優)……違うよ。
桜)…っ
 
 
強がってるわけじゃなくて…
 
 
優)◇が…俺といても…
  泣いてるなら…意味ないから…っ
 
 
無理して俺を選んだって
そんなの、意味ないんだ。
 
 
桜)優ちゃん…ごめんな…っ
 
  
気付いたら桜ちゃんが泣いてて…
その小さな手に頬を拭われて…
 
自分も泣いてるんだって、気付いた。
 
 
優)はは、ごめん…っ
 
 
何泣いてんだよ、俺…。
 
 
桜)桜…優ちゃんが早くお姉に
  フラれたらええのにって…
  そう思っててんけど…
優)……
桜)優ちゃんが泣いてるの見たら…
  むっちゃツライ…っ
優)…っ
 
 
そう言ってポロポロと涙をこぼす桜ちゃん。
 
 
桜)なんでこんな気持ちになるん…?
優)……
桜)優ちゃん…泣かんといて…っ
 
 
そう言って
一生懸命俺の頬をゴシゴシする桜ちゃんに、
彼女が言ってた「好きな人」が
自分なんだって、気付いた。
 
 
桜)はよフラれろとか思て…ごめんな…?
優)……
桜)優ちゃんは…こんなに…
  お姉のことが…好きなのに…っ
優)…っ
 
 
桜ちゃんの涙を見てたら
俺まで涙が止まらなくなってきて…
 
 
優)もういいから食べなよ…。
 
 
自分の頬から桜ちゃんの手を剥がして、
桜ちゃんの頭をわしゃわしゃ撫でた。
 
 
桜)ふぇ…っ
 
 
桜ちゃんは泣きながらパンケーキを頬張って…
 
 
桜)味…わからん…っ
 
 
そう言いながら笑うから…
 
 
優)……バカ。
  ちゃんと味わえよ…。
 
 
俺もつられて笑った。
 
 
 
 
好きだから…そばにいたくて…
好きだから…振り向いて欲しくて…
 
好きだから自分のものにしたいって
そう思うのに。
 
 
その人が幸せじゃないと…
結局自分がツライ。
 
苦しくて、悲しくなる。
 
 
恋愛感情って
どうして単純なイコールにならないんだろう。
 
 
 
ああ、どうか…。
 
 
◇がもうこれ以上泣かずに…
苦しまずに…
 
自分の幸せに…辿り着けますように。
 
 
 
その先が…俺に繋がるなら…
 
 
◇にも誓った通り、
俺は全力で◇を幸せにするから。
 
 
 
 
 
 
 
ーendー

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コメント

  1. りゅうじらぶ より:

    読んでて涙止まりません
    剛典にも頑張ってほしいけど、優ちゃんの◇ちゃんへの思いにまた泣けてきます
    これからもいいお話書いてください

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