[151]衰弱する心と身体(♧Side)

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隆二くん……
 
 
「♧…っ」
 
 
隆二くん……
 
 
「♧…っ」
 
 
何度も私の名前を呼んでるのは…
私の大好きな声…。
 
そう…隆二くんの……
 
 
「大丈夫…?!」
 
 
私をしっかりと抱きとめてくれた、
力強い腕。
 
 
もう何度も…
この腕に抱きしめられてる。
 
守ってもらってる。
 
 
……ずっと会いたかった。
 
 
会いたくて会いたくて、
たまらなかった。
 
 
一気に込み上げた安堵感。
 
 
優しい隆二くんの腕に
 
私は涙が止まらなくて…
 
子供のように、泣きじゃくった。
 
 
「大丈夫だよ…。」
 
 
隆二くんは…
優しい声で何度もそう繰り返して…
 
私をずっと包んでくれて。
 
 
その腕のあたたかさに、
気付いたら私は意識を失っていた。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
あれは、一週間以上前。
 
 
そう…
♡ちゃんの誕生会の夜。
 
 
帰りのタクシーの中で…
隆二くんと手を繋いで。
 
降りる間際、ぎゅっと抱き締められて
最後に優しくほっぺに触れた唇。
 
 
ドキドキして…
 
胸がきゅぅって音を立てた。
 
 
心配だから中に入ってって言われて…
2階にのぼって隆二くんに手を振ってから
玄関のドアを開けた。
 
 
優しく手を振り返してくれた
隆二くんの笑顔。
 
 
そんな幸せに浸ってた私の目に映ったのは…
 
床に落ちた、白い紙。
 
 
♧)…っ
 
 
身に覚えのないその紙を拾い上げると…
 
 
『今日はどこに行ってるの?
 僕の手紙、ちゃんと読んでくれてる?』
 
 
手書きでそう書かれていた。
 
 
♧)…っ
 
 
一瞬、頭が真っ白になって。
 
 
この紙は…どこから来たの?
どうしてここにあるの!?
 
 
鳥肌が立って、寒気がした。
 
 
誰…?
どこから入ったの…?
 
何?!
 
 
一気に怖くなって…身体が震えて…
 
 
部屋の中を見渡しても、
なんの痕跡もない。
 
 
だって…この家は…
ドアも窓も、隆二くんが替えてくれたもん…っ
 
 
どう…して…
 
 
♧)…っ
 
 
玄関のドアのポスト口から入れたの?!
 
 
振り返ってドアを確認した。
 
 
ここから入れたら、
そのまま床に滑り落ちるかも。
 
 
♧)……
 
 
僕の手紙、って…何…?
 
まさか……
 
 
震える身体を両手で摩りながら
おそるおそる、玄関のドアを開けた。
 
 
周りを見て、誰もいないことを確認して…
1階のポストまで降りると…
 
 
♧)…っ
 
 
そこにはさっきと同じ白い紙が
たくさん入ってて…
 
怖くなった私は
それを急いで抱えて
また階段を駆け上がった。
 
 
慌ててドアを閉めて、鍵をかけて。
 
 
♧)はぁ…っ、はぁっ……
 
 
腕からバラバラと落ちた、白い紙。
 
 
♧)…っ
 
 
郵便物なんて…
ダイレクトメールくらいしか来ないから
ポストはたまにしか開けない。
 
いつの間にこんなに…溜まってたの…?
 
 
震える手で、一枚一枚、白い紙を開いた。
 
 
『今日もお仕事お疲れさま。
 疲れてる時は言ってね。
 晩御飯を作ってあげるから。』
 
『リュージって誰?
 君の何?
 僕以外の男と二人になるなんてダメだよ。』
 
『君が好きなのは…シュンくんじゃないの?
 リュージって誰なの?
 僕に教えて?』
 
 
♧)…っ
 
 
怖い……
 
手の震えが…止まらない…。
 
なんなの…これ……。
 
 
どう…して……
 
 
『今市隆二。邪魔だね。
 ダメだよ、騙されちゃ。
 早く僕のところにおいで。』
 
 
♧)ひ…っ
 
 
どうして…
 
途中から漢字で書かれてるってことは…
 
隆二くんのことが、バレてるの?
 
 
『今日は何を考えてるの?
 今市隆二はダメだよ。
 あの男には渡さない。
 君は僕のものだよ。
 ずっと君だけを見てきたんだから。』
 
『好きだよ。
 どうしたら僕の気持ちが伝わるかな。
 こんなに君を想っているのに。
 愛してるよ。』
 
『君が僕のものにならないなら
 邪魔な人間は消してしまおうか。
 早くここへおいで。』
 
 
♧)…っ
 
 
手紙は…全部で7枚。
 
 
怖くて…
歯がガチガチ…噛み合わない…。
 
手も…ずっと…震えてて…。
 
 
……カタン。
 
 
♧)!!!
 
 
その物音に、振り返ると…
 
 
♧)きゃぁっ!!!
 
 
ポスト口から落ちてきた、白い紙。
 
たった今、入れられた!!
 
 
♧)…っ
 
 
ドアの向こうに
これを書いた人がいるのかと思うと、
怖くて、動けなくて。
 
 
硬直したまま、
どれくらい経ったかわからない。
 
 
恐る恐る、それを拾い上げると…
 
 
『おかえり。遅かったね。
 また今市隆二と一緒にいたんだね。
 ダメだって言ってるのに…。
 
 僕の手紙、やっと気付いてくれて嬉しいよ。
 愛してるよ、♧。』
 
 
♧)…っ
 
 
私の名前…知ってる…っ
 
 
いや…っ
 
怖い…っ
 
 
助けて…っ
 
誰か…っ
 
誰か……!!!
 
 
涙でぐしゃぐしゃになりながら
必死に鞄の中から携帯を取り出した。
 
 
隆二くん…っ!!
 
 
画面を開いて
その名前をタップしようとしたけれど
 
指が震えて押せない。
 
 
♧)ふ…ぇ…っっ
 
 
怖い。
 
怖い。
 
 
誰か…助けて…っ
 
 
涙が止まらない。
 
 
でも怖くて、声が出せない。
 
 
必死に声を押し殺して、
震える身体を抱きしめた。
 
 
 
この男の人は…
隆二くんのことを知ってる。
 
もう…
三代目の今市隆二だって、わかってる。
 
 
♧)…っ
 
 
隆二くんに…迷惑はかけられない。
 
 
♧)…っ
 
 
助けて……
 
 
震える手で携帯を握りしめて…
 
 
むーこにかけようかと思ったけど…
むーこにまで危険が及んだらどうしよう。
 
そう思うと電話出来なかった。
 
 
♧)う…っ…く…、ひ…っく……
 
 
怖い…。
 
怖くて仕方ない…。
 
 
 
そこから私の地獄のような日々が始まった。
 
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
泣き疲れて、目を覚ました時には
私は座布団の上で倒れるように
携帯を握りしめていた。
 
 
♧)……
 
 
寝ちゃってたんだ。
 
 
携帯の画面を開くと
隆二くんからLINEが来てて。
 
 
『今日は楽しかったね😊
 ゆっくり休んでね、おやすみ🌙』
 
 
これはきっと、昨夜くれたメッセージ。
全然気付かなかった。
 
 
♧)……
 
 
『おはよう。
 昨日はありがとう。』
 
 
それしか返事を返せなくて…
 
私はシャワーを浴びて
仕事に向かう準備をした。
 
 
床に散らばった紙に座布団をかぶせて…
思考を封鎖するように家を出て
何度も鍵を確認した。
 
 
お昼にむーこからもLINEが来てて。
 
 
『隆二くんと無事帰った?🚖
 送り狼になってたりしてー💕✨』
 
 
♧)……
 
 
あの手紙のこと、
相談しようかすごく迷ったけど…
 
やっぱり怖くてやめた。
 
 
だって…
あの手紙には瞬くんと隆二くんの名前も
書いてあって…
 
私だけじゃない。
 
 
どうして…
 
どうして私の周りの人のことまで
知ってるの…?
 
 
瞬くんはカタカナだったけど…
隆二くんは漢字でフルネームだった。
 
途中から…
隆二くんに対する敵意みたいなものが
感じられて…
 
 
『邪魔な人間は消してしまおうか。』
 
 
あの一文が、一番怖かった。
 
 
♧)……っ
 
 
どうしよう…
思い出しただけで、また震えが止まらない。
 
 
一体…誰なの…?
何が目的なの…?
 
 
♧)ふ…ぇ…っ
 
 
涙を必死にこらえて、その日の仕事を終えて。
 
 
何かあった時のために
傘を握りしめて、家に帰った。
 
 
1階のポストには何も入ってなくて、
急いで2階に駆け上がって
またドアを閉めた。
 
 
♧)はぁ…っ、は…ぁ…っ
 
 
今日は、何もない。
 
 
どうか…お願い。
このまま何も起きないで。
 
 
全部全部、夢だったと思いたい。
 
 
ピロピロ♪ピロピロ♪
 
 
♧)ひ…っ
 
 
LINEの音にもビクッと震えた。
 
 
♧)……
 
 
画面を開くと、メッセージは隆二くん。
 
 
『今日は川にいる?😃🎵』
 
 
いないよ、と返せば
すぐに電話がかかってきた。
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
静かな部屋にこだまする着信音。
 
出られずにしゃがみこんでると、
またLINEが来た。
 
 
『これから仕事だから
 またあとで電話するね‼️』
 
 
♧)……
 
 
声が…聞きたい。
隆二くんの声が。
 
 
でも、ダメ。
 
 
『ごめんね。LINEにしてもらっていい?』
 
 
そう返事を返して、シャワーに入った。
 
でも…
 
 
シャワーから出ると
また床に落ちてる新しい紙を見つけて…
 
 
♧)…っ
 
 
恐る恐る、拾い上げると…
 
 
『おかえり。今日もお疲れさま。
 お腹空いてない?
 いつでも僕のところに来てね。
 待ってるから。愛してるよ。』
 
 
また、同じ人からだった。
 
 
♧)…っ
 
 
私がシャワーに入ってる間に
また入れていったんだ…。
 
 
どうして…
私が帰ってきたってわかるの…?
 
どこで見てるの…?
 
 
鍵は全部閉まってるのに…
部屋の中にいても怖くて怖くてたまらない。
 
 
♧)ふ…ぇ…っ
 
 
また視界が滲んで、
よろめきながら携帯を手に取ると、
 
 
『電話ダメなの?何かあった??』
 
 
隆二くんから返事が来てた。
 
 
♧)…ひ…っく……っ
 
 
本当は電話したい。
声が聞きたい。
 
 
でも…
どこで見られてるのかわからない。
 
 
隆二くん……
 
 
その名前を呼ぶこともためらわれて
心の中で何度も呼んだ。
 
 
助けて…
 
助けて…
 
 
本当はそう叫びたいのに、
絶対に言えない。
 
 
隆二くんを困らせたくない。
迷惑かけたくない。
 
 
『何もないよ。ごめんね。』
 
 
震えながら返信を打てば、
すぐに返事が帰ってきた。
 
 
隆『風邪ひいてるの?』
♧『元気だから心配しないで。』
隆『ほんとに大丈夫?』
♧『大丈夫だよ。』
 
 
そう返すのが、精一杯だった。
 
 
でも…
 
隆二くんからは毎日LINEが来て…
 
 
『今日は川にいる?会える?』
 
『夏風邪とかひいてない?元気?』
 
『会いたい。何してる?』
 
 
メッセージを読むたびに、
涙が止まらなかった。
 
 
『仕事が忙しくてしばらく会えないの。
 ごめんね。』
 
 
そう返事をしたけど…
 
 
しばらくって…いつなの…?
 
いつまでこんな生活が続くの…?
 
 
手紙はそれからも毎日投函される。
 
決まって、私がシャワーに入ってる時に。
 
 
『おかえり。今日も暑かったね。
 一緒にアイスが食べたいな。
 ♧は何味が好き?』
 
『おかえり。
 いつになったら僕のところに来てくれるの?
 愛してるよ、こんなにも。』
 
 
手紙はどんどんエスカレートして…
 
 
『最近親友のむーこちゃんは
 遊びに来ないね?元気にしてる?』
 
『最近、♧が欲しくて夜も眠れないんだ。
 僕のベッドにおいで?
 優しく抱きしめてあげる。』
 
『愛してるよ♧。
 ♧の初めては僕が優しくしてあげるから
 安心してね。』
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
♧)……
 
 
もう…頭がぼーっとする…。
 
 
私…殺されるのかな…。
 
 
誰かもわからない、この人に。
 
 
むーこも…隆二くんも…
私の大事な人なの。
 
やめて。
 
お願いだから…。
 
 
 
TVもない私の部屋に
たまに響いてくるのは
隣の部屋からの卑猥な音声。
 
 
もう…嫌…。
 
全部、嫌…。
 
 
ご飯も…食べられなくて…
 
 
夜はかろうじて…
イヤホンを耳にねじこんで
 
隆二くんの歌を聴くの。
 
 
そしたら…
涙があふれて…止まらなくて…
 
気付いたら、意識を失うように
眠れるから。
 
 
 
隆二くん…
 
 
会いたい…
 
 
会いたい…
 
 
声が聞きたい。
 
 
 
ふにゃんって…
柔らかく笑うあの笑顔も…
 
 
私の名前を優しく呼んでくれる
あの甘い声も…
 
 
何度も抱きしめてくれた
優しい腕も、ぬくもりも…
 
 
全部全部、憶えてる。
 
 
……ごめんね。
嘘をついて。
 
 
本当は…会いたいの…。
 
 
こんなに…
隆二くんで…いっぱいなのに…
 
 
もう…苦しくて…
 
息が出来ないよ……。
 
 
 
 
 
ー続ー

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コメント

  1. のんちゃん より:

    やっぱり隣の変態男かぁ?おいコラ!こんな手紙って本当に気持ち悪いよね。♧ちゃん早く引っ越しな!隆二くん、あなたも臣くんみたいに同棲するかぁ(^ω^)♧ちゃんを助けてあげて。最近、隆二くんかっこ良いよね
    臣くんごめんなちゃい(笑)

  2. 110355gi より:

    はじめまして
    9月頃から読ませて頂いてますっ
    はまりました
    スラスラ読みたくて仕方なくなっています
    あきなくて、待ち遠しい毎日楽しみにしてます
    ありがとうございます
    良いお正月をお迎えください☺
    来年もよろしくお願いいたします

    • マイコ より:

      どうもありがとうございます( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾
      良いお年を♡

  3. NATSUKI より:

    これめっちゃ怖い気持ち悪いよ
    こんなことしたの誰だろ?隣の人?
    ♧ちゃん早く隆二くんに話してー
    そして隆二くんは♧ちゃんを守ってあげて~

  4. さゆれ より:

    ♧ちゃん、隆二君だけじゃなく誰にも言えずに怖くて、不安なのに、ずっと我慢してたんだ。
    隆二君、今すぐ隆二君家に♧ちゃんを連れて帰ってあげてぇ〜。あんな家に♧ちゃんを置いておけない!

    • マイコ より:

      そうだよ!あんなオンボロアパート!!!。゚(゚´ω`゚)゚。

  5. さゆがん より:

    いやぁぁぁ気持ち悪い怖い(。º̩̩́⌓º̩̩̀).゜
    例の隣人かな。。。
    壁が薄いから生活音すべて筒抜けなんですよね⁇
    そのうち壁に穴とかあけられそw
    隆二くんはやく隆二くん家にかくまってー

    • マイコ より:

      壁に穴…!!:(´ºωº`):怖すぎ!!!
      早く隆二の家に避難して〜〜〜!!

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