[136]聞きたくない(岩&◇Side)

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桜)お姉のご飯っ♪楽しみ〜♪
◇)はいはい。
 
 
桜があたしのご飯食べたいって
うるさいから。
 
二人でスーパーで買い出しをして
その帰り道。
 
 
◇)今日は蓮は何してるん?
桜)お兄にもLINEしたんやけど
  返事来ないねん。忙しいんかなぁ?
◇)そうなんや。
 
 
そんな話をしながら
マンションに戻ってくると…
 
 
◇)…っ
 
 
エントランスにまた男の影が見えて
一瞬ドキッとした。
 
 
でもそれは、剛典じゃなくて。
 
 
優)あっ!!
 
◇)……
 
 
なんで、いるの?
 
 
桜)誰?お姉の知り合い?
◇)……どうしたの?
優)えっと…急に来てごめん。
◇)……
優)全然連絡ないから…
  心配になって…
◇)……
 
 
そういえば、もらった連絡先
ゴミ箱に捨てたんだった。
ごめん。
 
 
優)一人で…泣いてないかなって…
◇)……
 
 
泣いてないもん!!
 
 
桜)お姉の友達なん?
  一緒にご飯食べよ?♡
優)えっ!
桜)今日な、お姉がご飯作ってくれんねん♡
優)えっと…
桜)めちゃイケメンやん♡
  名前なんていうん?
優)優助…。
桜)ほんなら優ちゃんや!♡
  ほら、行こーー♡
 
 
桜が優助の腕を組むと、
優助が困ったようにあたしを見た。
 
 
◇)お腹…空いてんの…?
優)えっと…、まぁ、…うん。
◇)じゃあ食べてけば。
優)いいの??
◇)うん。
優)……ありがと///
 
 
それから家に入って
あたしはすぐ晩御飯の準備。
 
 
優)俺、手伝うよ!
◇)いいよ。
優)でも…
桜)優ちゃんは桜と遊ぼーー♡
優)えっ
桜)ほら、こっちこっちー!
優)…っ
 
 
桜が無理やり優助を引っ張っていって…
 
 
桜)なぁ!
  優ちゃんって岩ちゃんに似てへん?!
優)あ、たまに言われる。
桜)せやろ?!
  めっちゃ似てる!!イケメン!♡
優)ああ、ありがとw
  …桜ちゃんは…◇の妹なんだよね?
桜)せやでーー♡
優)関西なの?
桜)うん!奈良!!
優)そうなんだ!
  ◇、俺と話す時は標準語だから
  わかんなかった…
桜)家族とおる時は関西弁やで!
 
 
なんか楽しそうに話してる二人を放っといて
あたしは一人で料理開始。
 
 
◇)はぁ…。
 
 
今日は…
三代目のLIVE二日目。
 
 
昨日娘さんと参戦した多田さんは
すごく大喜びで…
 
「◇ちゃん!最高だったわよ〜!!♡♡」
 
なんて、
今日笑顔全開で報告してくれた。
 
 
 
剛典からは…
 
『お前が来てくれるの待ってる。
 終わったらすぐ連絡するから。』
 
 
ってLINEが来てたけど
あたしは返事してないし…
 
 
『明日は観に来て、お願い。
 待ってるから。』
 
 
昨日の公演後に届いてたメッセージにも、
返事してない。
 
 
行くわけない。
 
 
◇)…っ
 
 
話なんてしたくない。
顔だって見たくないもん。
 
 
『◇ちゃん、今日LIVE来てたんだよね?
 どこらへんだったのー?😆💕』
 
 
♡ちゃんから昨日来てたLINEも
返してないや…。
 
 
◇)はぁ……。
 
優)何そのため息。
 
◇)わっ!!
 
 
びっくりした!!
 
 
◇)包丁持ってる時に忍び寄るな!
優)忍び寄ったわけじゃないよ!w
◇)ああびっくりした。
  あれ?桜は?
優)なんか先輩?って人と電話してるよ。
◇)……
 
 
あのクソ野郎とまだ縁切ってないのか。
 
 
優)手伝うよ。
◇)いいってば。
優)…じゃあ…見てていい?
◇)何それ、子供みたい。
優)あははw
  晩御飯作ってるお母さんの周りを
  うろちょろする子供?
◇)うん。
優)あはははw
◇)……
 
 
だからその顔で
笑わないでってば。
 
 
優)なんで連絡くれなかったのー?
◇)……
優)待ってたんだけど。
◇)……
優)友達になるの、嫌になった?
◇)……
 
 
そうじゃ…なくて…。
 
あの日は…
なんかもうグチャグチャになって
 
メモも捨てちゃったんだもん。
 
 
◇)ごめんね…。
優)……
◇)……
優)全然いいけど…。
◇)……
優)俺こそごめん。
  待ち伏せとかして
  ストーカーみたいじゃない?
  引いてない?
◇)……確かに。
優)ぶはっww
  違うから!
  俺そんな変態じゃないから安心して!
◇)……
 
 
うん。それはわかる。
あんた普通に良い奴だもん。
 
 
優)なんつーか…
  ずっと気になってて…。
◇)……
優)あんなに泣いてたから…
  今頃大丈夫かな、とか…
◇)……
優)なんかすげぇ考えちゃって…
◇)……
 
 
どこまでイイ奴なんだよ。
 
 
◇)別に泣いてないし!元気だし!!
優)……ほんと?
◇)ほんと!!!
 
 
あんなクソ野郎は
頭から追い出したもん!!
 
もう考えないんだもん!!
 
 
優)…また、さ。
  ストレス発散したくなったら
  カラオケでもなんでも行こうよ。
◇)…あたし、人とはカラオケ行かないもん。
優)なんで?
◇)…わかるでしょ。
優)下手だから?
◇)ハッキリ言うな!w
優)あはははw
  いいじゃん、俺相手なんだし。
◇)……
 
 
確かに。
もう散々ひどい歌、披露したしな。
 
 
優)行きたくなったら声かけてよ。
◇)……ありがと。
優)うんw
 
桜)あれー?優ちゃーーん!
 
優)ああ、はいはい!
 
桜)こっち来てよーー!
  桜の相手してーー!
 
 
桜に呼ばれて戻っていった優助。
 
 
桜)やっぱり優ちゃん、イケメン♡
  彼女おらんのー?
優)いないよ。
桜)桜と付き合おうよーー♡
優)はい?w
◇)ごめんね、その子面食いなの。
優)あははっw
◇)はい、ご飯できたよーー
桜)わーーいっ♡
 
 
料理を綺麗に並べて。
 
3人でテーブルを囲んでいただきます。
 
 
優)なんか…俺まで図々しくご馳走になって
  ほんとごめん…
◇)……
優)でもめっちゃ美味しい♡
◇)良かった。
 
 
嬉しそうに食べてくれる優助は、
なんか子犬みたい。
 
 
桜)やっぱり優ちゃんって
  岩ちゃんに似てるやんなー♡
 
 
そう言って隣から優助の顔を
マジマジと覗き込む桜。
 
 
優)うーん、それあんまり嬉しくないかも…
桜)え?!なんで!??
  岩ちゃんやで!??
優)…うん。
桜)なんで嬉しくないん!!??
優)……いや、前は嬉しかったけど…
◇)……
優)姉ちゃん、あんまり好きじゃないみたい。
桜)へ!!??
優)岩ちゃんの顔。
◇)…っ
 
 
優助がそう言うと
桜が今度はあたしの顔を見てきた。
 
 
桜)お姉、岩ちゃん友達やのに
  顔好きやないん?ひっど!w
◇)…っ
優)……え…!?…友…達…?
◇)…ええと……
 
 
桜のバカ。
余計なこと言うな。
 
 
桜)お姉な、岩ちゃんと友達なんやで!
  前にお兄と遊びに来た時、
  岩ちゃんおってびっくりしてん!!w
優)……
◇)……
 
 
ああ…
 
今の一瞬で…
優助が全部察した顔してる。
 
 
優)岩ちゃんが…ここにいたの…?
桜)そう!
  お姉に洗い物させられててん!ww
◇)別にさせたわけやないし!
優)……あ、関西弁。
◇)……何。
優)新鮮で可愛い…w
◇)……///
 
 
別に可愛くないし!!
 
 
桜)そういえば本物の岩ちゃんは元気なん?
◇)知らんわ。
桜)最近会うてへんの?
◇)知らん。
桜)えーーー。
 
 
あいつの話はもうやめろ。
 
 
桜)そういえばな、岩ちゃんたち
  うちの店来てくれたみたいやねんけど…
  桜おらん日やってん〜〜!!
◇)……は…?
 
 
うちの店って…
 
 
桜)優ちゃんも今度遊びに来てーー♡
優)ええと…
桜)今な、ここでバイトしてんねん♡
優)……クラブ…?
桜)うん!
◇)……
優)ホステスしてるの?
桜)せやでー♡
  めっちゃ時給ええねんもん♡
  あ、お姉!内緒にしてや!
◇)……
 
 
まぁそんなん知ったら
お母さんもお父さんも怒るわな。
 
 
…てゆーか……
 
 
◇)三代目が…店に…来たん…?
桜)ちゃうねん!EXILEー!
  TAKAHIROとー、AKIRAとーー、
  もう一人忘れた。あと岩ちゃん!
◇)……
桜)ほら!5月に結婚式あったやん?
◇)…っ
桜)あの前の日!!
  せやから桜は休みやってん!
  悔しぃ〜〜!
◇)……
 
 
結婚式って…
まさか…
 
 
桜)ほんでな、桜の先輩な、
  岩ちゃんにお持ち帰り
  されたんやってーー♡
◇)は…?
桜)あ、正確には
  岩ちゃんをお持ち帰りしたんやった。
◇)……
桜)岩ちゃんな、彼女おるらしいねんけど
  ほんなら彼女に内緒でって言うたら
  あっさり家に来たんやって!
◇)……
 
 
やめて…
 
聞きたくない…
 
 
優)ほら、桜ちゃん。
  その話はもういいからご飯食べようよ。
桜)食べてるもーん♡美味しい♡
◇)……
桜)ほんでな?
  岩ちゃんめっちゃH上手で優しくて
  好きになっちゃいそうって言うたら
  それは彼女がおるからあかんって
  言われたんやって〜〜
◇)……
 
 
……息が…上手く吸えない。
 
 
桜)でも彼女に内緒で
  また会いたいって言うたら
  ええよって言ってくれたんやって♡
◇)……
桜)めっちゃ羨ましい〜〜〜♡
  店の女の子みんな悔しがってたで。
◇)……
桜)夜も朝もHしたんやってーー♡
  腕枕もしてくれて
  ほんま優しかったって♡
◇)……
桜)岩ちゃん、今度は桜のことも…
 
 
そこから、桜の声が聞こえなくなった。
 
 
胸が…苦しくて…
 
息が…吸えなくて…
 
 
気付いたらテーブルに涙がいっぱい落ちてて…
 
 
あたしの耳は、優助の両手に塞がれてた。
 
 
◇)…っ
 
 
泣いてるのを見られたくなくて…
 
あたしはそのまま優助に、しがみついた。
 
 
優)……ん、
 
 
優助は…
この間みたいに
 
またあたしを抱きしめてくれて。
 
 
桜)お姉…どうしたん…?
 
 
桜の心配そうな声にも、返事…出来ない。
 
 
だって…
喉が苦しくて…
 
声が出ないんだもん。
 
 
◇)…ひ…っく……
 
 
必死に声を殺して泣くあたしを
優助はただぎゅっと、抱きしめてくれてた。
 
 
 
……
 
 
 

 
 
 
優)桜ちゃん、帰ったよ。
◇)……
 
 
頭がボーッとする…。
 
 
どれくらい…
時間が経ったんだろう。
 
 
……なんかもう…疲れちゃった。
 
 
なんで…
 
なんで涙は…止まんないのかな…
 
 
優)……
 
 
桜を玄関まで見送った優助が
あたしの隣に座って…
 
優しく手を握ってくれた。
 
 
優)胸貸して欲しかったら…貸すけど…
◇)……
 
 
そう言って両手を広げてくれるから
優助の優しさが
 
ボロボロの心に、染み込んでくる。
 
 
◇)ぎゅって…して……
優)…っ///
 
 
泣きすぎて嗄れた声。
 
優助が抱きしめてくれたら、
またあふれてくる涙。
 
 
……もう…やだ。
 
苦しい。
 
 
剛典のことなんか…
 
もう…
全部全部…、忘れたい。
 
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
◇)……
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
しつこく鳴る電話。
 
途切れては、また鳴って。
 
 
優)無理して出んなよ…。
◇)……(こくん)
 
 
出るわけない。
出たくない。
 
わかってる。
どうせまた、剛典だって。
 
 
ピロリロリロ♪ピロリロリロ♪
 
 
その後も電話を無視してると、
今度はLINEの音が鳴った。
 
でもいい。
どうでもいい。
 
見たくもない。
 
 
◇)……
優)……
 
 
優助は…
ずっとあたしの背中を優しく叩いてくれてて…
 
 
◇)なんで…そんな…優しいの…?
優)……
 
 
まだ「友達」って呼べるのかも
怪しいくらいの関係性なのに。
 
 
◇)……もう…疲れちゃった……。
優)こんだけ泣けば疲れるよ…。
◇)……
 
 
誰かに抱きしめてもらうのって…
こんなに救われるんだ…。
 
 
◇)優助…ありがとう…
優)……
◇)そばにいてくれて…ありがとう…
優)……今日は…素直だね。
◇)……。
 
 
だって…
 
一人だったら、耐えられなかった。
 
 
耳を塞いでくれて…
抱きしめてくれて…
 
 
◇)本当に…ありがとう。
優)もういいから。
 
 
そう言って抱きしめてくれる
優しいぬくもりに…
 
瞼がゆっくりと…落ちてくる。
 
 
優)…ん…?眠くなった…?
◇)……
 
 
意識が…遠くなってく…。
 
 
優)いいよ、そばにいるから…安心して。
◇)……
優)眠っていいよ。
◇)……
 
 
最後に聞こえた優助の優しい声。
 
 
あたしはそのまま優助の腕の中で
意識を手放した。
 
 
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 
 
 
LIVE終わり、たまアリを飛び出して
急いで◇の家に向かって。
 
 
何度電話しても、◇は出ない。
 
 
『今から行くから、話させて。頼む。』
 
 
送ったLINEも既読にならない。
 
 
K)お疲れさま。
  ゆっくり休んでね。
岩)ありがとう。お疲れさま。
 
 
結局◇のマンションまで
マネージャーに送ってもらって。
 
俺はエントランスをくぐり、
オートロックの前に立った。
 
 
岩)……
 
 
この時間なら絶対家にいるだろ。
いてくれ。
 
 
ドキドキしながら
◇の部屋番号を押す。
 
 
一回、二回…。
 
 
それでも反応はなくて、
俺はキャップとマスクを外した。
 
 
頼む、出てくれ。
 
 
もう一度、三度目のコールを鳴らすと…
 
 
ピッ。
 
 
インターホンが繋がったのがわかった。
 
 
岩)◇?
  こんな時間にごめん。俺。
  ……話したいんだけど…
  少しでいいから時間…くれない?
 
 
機械に向かってそう言っても
何も返事はなくて。
 
 
岩)少しでいいから、頼む。
  話…聞いて。
 
 
すがるような思いでそう言うと、
 
ピッ、ガチャッ。
 
 
オートロックが解錠された音がした。
 
 
岩)…っ
 
 
開けてくれた…!!
 
その事実に、嬉しくなったのも束の間。
 
 
インターホンから聞こえたのは
 
『どうぞ。』
 
 
冷たい男の声だった。
 
 
岩)……
 
 
一瞬で、頭が真っ白になって。
 
 
……誰…だ…?
 
なんで…男が……
 
 
蓮か…?
 
いや、でも…声が違う気がする。
 
 
なんで◇が出ないんだ?
いないのか?
 
いないのに男が部屋にいるってなんだよ。
 
 
岩)え…?
 
 
でも…
◇がいるのに男が出るのも変だろ。
 
てゆーかほんとに…誰!?
 
 
嫌な予感ばかりが
胸をかけめぐって…
 
 
エレベーターを降りて、
◇の部屋まで向かうと…
 
その扉は、静かに開いた。
 
 
岩)…っ
 
 
中からドアを開けたのは、
やっぱり見知らぬ男。
 
 
いや、違う。
顔は知ってる、思い出した。
 
この前…
◇と一緒にタクシーに乗ってた男だ。
 
 
俺は少しだけ開いたドアを思いきり引いて
中に入った。
 
 
岩)あんた、誰?
優)……
 
 
たしか…なんだっけ、名前。
 
いや、名前なんてどうでもいい。
 
 
岩)なんでここにいんだよ。
優)……
岩)◇は…?
優)……
岩)ちょ、どけ!!!
 
 
俺は男を押しのけて、中に入った。
 
 
ガチャッ
 
 
岩)…っ
 
 
リビングに◇の姿はない。
 
 
岩)なんで……
 
 
どこにいる?
 
 
部屋の中をキョロキョロ見渡す俺に
後ろから冷たい声。
 
 
優)今、ベッドで寝てる。
 
 
その言葉に、
一気に冷静さを失う自分がいた。
 
 
岩)ベッドって…
 
 
なんだよそれ。
 
 
岩)…ッ
 
 
俺は思わず男の胸ぐらを掴んだ。
 
 
岩)なんかしたんだったらぶっ殺す!!
 
 
脅しでもなんでもない。
本当にそう思って、そう言った。
 
 
でも男は怯む様子もなく、
俺を睨みつけて、俺の手を払いのけた。
 
 
優)どんな立ち位置でそれ言ってんの?
岩)…っ
 
 
それは…
この間、◇にも言われた言葉。
 
 
優)◇には何もしてない。
岩)…っ
 
 
何呼び捨てにしてやがんだよ。
 
ナンパして出会ったばっかりのくせに。
 
 
優)泣き疲れて眠ったから
  ベッドに運んだだけ。
岩)……っ
 
 
泣き…疲れて…?
 
 
優)さっきまで桜ちゃんもいたから。
  ◇が家に男連れ込んでたとか
  そんなくだらねぇ勘違いすんなよ。
岩)…っ
 
 
ああ、ダメだ。
ほんとにイライラする。
 
なんなんだよこの男。
 
 
全然冷静になれない。
 
 
岩)桜ちゃんは帰ったのに
  なんでお前はいるわけ?帰れよ。
 
 
必死に怒りをおさえて、そう言った。
 
 
優)食器とかそのままだったから
  片付けてただけ。
岩)……
 
 
一緒に飯食ってたのか。
 
 
優)あと…、起きた時に一人だったら
  不安になるかなって、
  帰るか迷ってた。
岩)……は…?
 
 
……なんだよそれ、ふざけんな。
 
 
岩)帰れよ。
優)……
岩)……
優)……
 
 
しばらく、睨み合いが続いて。
 
 
優)何しに来たわけ?
岩)……は?
 
 
…なん…で…
お前にそんなこと
言われなきゃなんねぇんだよ。
 
 
岩)お前に関係ねぇだろ。
優)あるよ。
岩)は…?
優)大事に出来ないなら、別れろ。
岩)…っ
 
 
その言葉に、また怒りがこみ上げてくる。
 
 
優)遊ぶ女なんか腐るほどいるんだろ?
  ◇じゃなくてもいいだろ。
岩)お前に何がわかんだよ!!
 
 
俺は抑えきれずに、
また男の胸ぐらを掴んだ。
 
 
優)女泣かせる男に
  側にいる資格なんか
  ねぇって言ってんだよ…っ
岩)…っ
 
 
Tシャツの襟を掴まれて、一触即発。
 
マジでぶん殴りたい。
 
 
優)身に覚えあんだろ。
岩)……
 
 
は…?
 
 
優)◇と付き合ってるくせに
  好き勝手に遊びまくって…
岩)…んだよ…それ…
優)彼女に内緒でとか言って
  他の女にもいい顔してんだろ。
岩)…お前…何言ってんの…?
優)全部、桜ちゃんが言ってた。
岩)……は…?
 
 
桜ちゃん…?
 
 
………バシッ。
 
 
岩)…っ
 
 
胸に叩きつけられたのは…
名刺…?
 
 
…この…店…
 
 
優)そこの女と浮気したんだろ。
岩)…っ
 
 
このクラブは…
 
 
優)よくそれで◇に会いに来れたな。
  話したいって何話す気だよ。
  浮気したけど許してくださいって?
  ふざけ…
岩)浮気なんかしてねんだよ!!
優)…っ
 
 
俺は浮気なんかしてない。
 
でも…
 
 
優)彼女に内緒でまた会ってやるって
  そこの女に言ったんだろ?
岩)…っ
 
 
ああ、そうか…
そういうことか。
 
 
あの時はまだ付き合ってなかったけど…
 
面倒臭いことになりたくなくて
適当にそう言ったんだっけ…
 
 
優)桜ちゃんは何も知らないみたいだから
  普通に喋ってたけど…
  ◇が可哀想すぎて
  見てられなかった。
岩)…っ
優)遊ぶなら他でやれよ。
  ◇はそんな女じゃない。
岩)知ったような口きいてんじゃねぇ。
優)…っ
 
 
◇がそんな女じゃないなんて
俺が一番わかってる。
 
 
岩)俺とあいつのこと、
  何も知らねぇくせに
  偉そうなこと言ってんな。
優)…っ
岩)お前なんなんだよ?
  あいつのこと好きなわけ?
優)だったら何。
岩)…っ
 
 
やっぱりそうなんじゃん。
 
 
岩)死んでも渡さねぇから。
優)浮気しといてどの口が言ってんの?
岩)してねぇって言ってんだろ!
優)まぁそれはどうでもいいよ俺は。
岩)……
優)事実がどうとかじゃなくて、
  大事なのは…
  ◇が傷ついて泣いてるってことだろ。
岩)…っ
優)泣かせてんのはお前。
岩)……
優)こっちこそそんな奴に
  ◇渡す気ねぇから。
岩)…っ
 
 
ダンッ!!!
 
 
俺は怒りを抑えられなくて、
壁を思いきり殴った。
 
 
岩)帰れよ……
優)……
岩)帰れ。二度と来んな。
優)…それはお前に言われる筋合いない。
岩)…っ
優)今日は帰るけど
  お前のことは絶対認めねぇから。
岩)…っ
 
 
男はそう言い捨てて、
部屋を出て行った。
 
 
岩)……
 
 
一人残されたリビングで、
いろんな感情で気持ちが忙しい。
 
 
嫉妬とか怒りとか悔しさとか
全部がグチャグチャに混ざり合って…
 
 
岩)……くそッ……
 
 
握りしめた名刺。
 
 
このクラブに行ったのは…
兄貴の結婚式の前の日だっけ…。
 
 
俺がしたこと…
全部…聞いたんだよな…。
 
 
岩)……
 
 
最低だって…軽蔑しただろうか…。
 
 
「◇が可哀想すぎて見てられなかった。」
 
 
岩)…っ
 
 
とりあえず俺は◇の姿を確認したくて
静かに寝室のドアを開けた。
 
 
……キィ…。
 
 
岩)……
 
 
ベッドの上には
静かに寝息を立てて眠る、◇の姿。
 
 
「泣き疲れて眠ったから
 ベッドに運んだだけ。」
 
 
…あいつが…ここまで運んだのかとか
考えるだけで、冷静さを失いそうになるけど…
 
 
岩)◇……、
 
 
ゆっくりと近付いて、その顔を覗けば…
 
 
岩)……っ
 
 
瞼が赤く腫れてて…
 
どれだけ泣いたんだろうって、
痛々しくて。
 
 
……俺が、こんなに泣かせた。
 
 
岩)…◇………、
 
 
…俺まで…目頭が熱くなってくる…。
 
 
……ごめん…。
 
 
こんなに泣かせて…
 
ほんとにごめん…。
 
 
その柔らかい頬を、
指の背でそっと撫でると…
 
 
◇が掠れた声で、小さく俺を呼んだ。
 
 
◇)…剛……典……
岩)…っ
 
 
それだけで、俺まで目が潤んできて。
 
 
岩)◇……、
 
 
俺は◇を起こさないように
静かにベッドに潜り込んで、
 
◇の身体を抱きしめた。
 
 
 
ごめん…
 
ほんとに…ごめん…
 
 
「遊ぶ女なんか腐るほどいるんだろ?
 ◇じゃなくてもいいだろ。」
 
 
違う。
他の女なんかいらない。
 
 
俺は…
 
 
「大事に出来ないなら、別れろ。」
 
 
岩)……
 
 
「女泣かせる男に側にいる資格なんか
 ねぇって言ってんだよ…っ」
 
 
岩)…っ
 
 
泣かせて…ほんとにごめん…。
 
でも…
 
 
俺が好きなのは…お前だから…
お前だけだから…
 
 
他の男がお前に触るとか
絶対に許せない。
 
想像しただけで、気が狂いそうになる。
 
 
…さっき……
 
「今、ベッドで寝てる。」
 
 
あいつにそう言われた時、
ほんとに頭が真っ白になって…
 
 
まさか一緒に寝てたんだろうかとか
そんなことを一瞬疑って
本当におかしくなりそうだった。
 
 
こんなに…
離したくないって…
失いたくないって…
 
そう思う女は…初めてだから。
 
 
 
岩)…好きだよ……。
 
 
 
腕の中で眠る◇に
小さく囁いて…
 
 
◇の髪を優しく撫でながら
 
 
俺もゆっくりと、瞼を閉じた。
 
 
 
 
 
ーendー

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  1. NATSUKI より:

    桜ちゃんヤバイ。
    ◇ちゃん第三者からいろいろ聞いてもう辛くて悲しくてしかたなかったんだよね
    遊助君がいてくれてよかったね◇ちゃん。
    がんちゃんも辛いかもしれないけどがんばれー❗

  2. 外山咲良 より:

    桜ちゃんほんとにやっちゃったね。
    桜ちゃんも知らなかったしょーがないけどね。
    優くんはいかんなぁ!どーしても好きになれん。岩ちゃん頑張って。

  3. のんちゃん より:

    マイコさんおはようございます。寒くなりましたね(>_<)薄っすらだけど、屋根が白くなってます。風邪ひかない様にして下さい。
    この妹も、空気読めんなぁ〜優男くんが一緒で良かったね。♢ちゃん1人ならもっとしんどかったよね。優男くんやるなぁ(^ω^)岩ちゃんとお似合いと思ってたけど、この際あんなワンコやめて優男くんにしたら・・・どんどん♢ちゃんのストーリー泣けてくる。

    • マイコ より:

      あんなワンコて!。゚(゚^∀^゚)゚。ww
      ◇ちゃんは一体どっちを選ぶのかねぇ…(❁´ω`❁)ふぉっふぉっふぉ

  4. 明日花 より:

    桜何言ってんの~。ホステス行ったんだね。それは誤魔化せないね。◇ちゃん怒ってるように思ったけど凄く悲しんでいたんですね。

  5. ユキ より:

    優助君も彼女の事好きって言いましたね
    ポメちゃん(岩ちゃん)もどうなるのか心配です
    もうすぐクリスマスですねマイコさんはクリスマスケーキは好きですか?
    私は自分の誕生日ケーキはチョコケーキ
    クリスマスケーキはいろんな種類があるプチケーキが大好きですね(^.^)

    • マイコ より:

      優助ガンガン来そうだね〜(❁´ω`❁)

      ケーキはあまり食べないかなーー
      食べれるケーキが限られてて…(´д`)

  6. さゆがん より:

    桜ちゃんエグすぎる。。♡ちゃんもそうだけど◇ちゃんも事実を第三者から聞かされるツラさ⤵︎⤵︎これは岩田選手厳しい闘いになりました♬
    臣といいがんちゃんといい大事なオンナに気づくのが遅すぎる!

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