【246】別れたいの?

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また一週間分くらいの荷物を
キャリーケースに詰めながら

私はこんなに
帰ってこないつもりなのかなって
逃げ続ける気なのかなって

自分で自分が嫌になる。


大きなキャリーケースを押しながら
会社のエントランスをくぐると

偶然いたJさんが
私の荷物を見て見ぬフリをした。


J)おはよう。
♡)おはようございます。
J)ゆっくり休めた?
♡)え…?
J)土曜の撮影、疲れたでしょ?
♡)あ…、はい。
  昨日は一日家にいたんで…
J)そっか……


本当はクラブから連絡が来て
歌いに来て欲しいって言われたけど

そんな気になれなくて、断った。


社)おや、♡くん。
♡)社長っ!おはようございます!
社)おはよう。元気かね?
♡)はいっ!!
社)例のお仕事も頑張ってるみたいで…
  拝見してますよ。
♡)えっ、わっ、ありがとうございます!!
社)うちの♡も喜んで
  雑誌を眺めていましたよw
♡)えっ…♡ちゃんが……
社)「お姉ちゃん可愛いなぁ〜〜」って
  それはそれはご機嫌でw
♡)あははは♡嬉しいな♡
社)また遊んでやってください。
♡)はい!ぜひ!!


自分の知らないところで
自分の知ってる人たちが
応援してくれてたりもするんだ。

私やっぱり…
このお仕事、しっかり頑張ろう!!


今日も夜は撮影が入ってるから
テキパキと仕事をこなしていく。

スタジオに向かう直前まで
仕事をしていよう。


M)せんぱぁい…お昼は…
♡)あ、ごめんね、行ってていいよ!
  私これ片付けちゃう!
M)……
K)……
♡)ちゃんと食べるからw
K)絶対だよ。
♡)うん。


みんなが次々出かけて
静かになるオフィス。

すると今日も…イイ匂いが近付いてきた。


T)お待たせ。
♡)待ってないよっ!
T)まぁまぁ、そう言わずにw
♡)もう!Tくんも外で食べなよー!
  みんなと一緒に!
T)お前も行く?
♡)……
T)お前が行かないなら行かない。
♡)…っ
T)ちゃんと食わせないと心配だし。
♡)ちゃんと食べるから大丈夫だよっ!
T)……
♡)……
T)心配なのもあるけど…
  一緒にいたいのが一番。
♡)…っ
T)よし、今日はどれがいい?
♡)……


Tくんはそれ以上は
私への気持ちみたいなことは
何も口にすることなく

お昼休み中、ずっと楽しい話をして
私を笑わせてくれた。


T)よし、じゃあ俺戻るわ。
♡)あっ、お金払うよっ
T)いいっつーの!
  俺が好きで買ってきてんだから。
♡)……


好きでって言っても…
いつも栄養がありそうなものを
バランスよく買ってきてくれてる。


T)あと、さ…、俺、
  明日昼に外せないアポがあって
  明日は何も買ってきてやれないけど…
♡)…ちゃんと食べるよ。
T)……ん。安心した!
♡)ありがとう…ごちそうさま。


Tくんは優しく笑って
私の頭をポンポンしてそのまま戻っていった。


♡)あ…っ、お帰り…
M)戻りました〜〜
  今日はTさんと何食べたんですかー?
♡)あ……


Mちゃんがゴミ箱の中を覗いた。


M)あ〜〜!!
  ここすっごく人気のお店!!
  ずっと食べてみたかったやつー!
♡)えっ
M)美味しかったですかぁ??
♡)うん……
M)いいないいな〜〜
K)お前は散々食ったろw
M)それとは別ですよぉ〜〜
  さすがTさん、ほんとセンスいいなぁ♡
♡)……
海)……


気付くと海璃ちゃんが
私をじっと見つめてた。


♡)どうしたの…?
海)…っ
♡)海璃…ちゃん?
海)♡さんは…Tさんが好きなんですか?
♡)えっ?!!
海)…っ
♡)……
K)……
M)急に…どうしたの?w
  好きなのはTさんだよ?
海)そんなの…っ、わかってます!
M)…っ
♡)……
海)♡さんも…好きになったのかなって…
♡)…っ


海璃ちゃんの目が…潤んでいく。


M)海璃ちゃん…大丈夫?
海)変なこと聞いて…っ
  すみませんでしたっ!!

バタバタッッ


M)ちょっと!海璃ちゃん!!


走って出て行った海璃ちゃんを
Mちゃんが追いかけて行った。


♡)……
K)……


これは……


蒼)そうだったんだ…
  海璃、Tさんが好きだったんですね。
♡)えっ……
蒼)修羅場見ちゃったなぁ…w
♡)…っ
K)別に修羅場じゃねぇだろ。
  ニヤニヤ笑ってんな。
蒼)僕は別に。
  ただ…海璃のこと考えると
  彼氏がいるのに毎日Tさんといる
  ♡さんを見るのは
  やるせなかっただろうなぁって。


バン!!

K)余計なことベラベラ言ってんな。
蒼)いい加減、別れないんですか?
♡)…っ


蒼くんが私の薬指を指差した。


♡)……
K)お前に関係ねぇだろ。
蒼)一応あると思ってるんですけど…
  ねぇ、♡さん?w
K)は??
♡)……


蒼くんの言ってることは
どうでもよくて…

私は…海璃ちゃんのことが気になって…


♡)私…歯磨きしてくる…
K)……ん。


なんだか頭がいっぱいのまま
上のフロアに向かった。


♡)……


海璃ちゃん……


「好きっていうか…気になってる人が…//」


あれは…Tくんのことだった?



「興味ありますっっ!!!!!!!」


みんなでランチした時…
ゴルフの話に目を輝かせてた海璃ちゃん。


♡)……



思い返せば
Tくんと話してる時の海璃ちゃんは
いつも顔を真っ赤にして一生懸命だった。


どうして…気付かなかったんだろう。



「Tさんが好きなんですか?」


目を潤ませて私を見つめてた
海璃ちゃんの顔が、頭から離れない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『今日の夜には東京に戻ります。
 会って話せる?』


俺が昼送ったLINEに、返事が来たのは夕方。


『リハお疲れさま。
 気をつけて帰ってきてね。
 今日は撮影が入ってるの。ごめんね。』


三日間ずっと返事も来なかったから
返事が来ただけですごく嬉しくなる。


撮影って…モデルの仕事かな。
歌だけじゃなくて…撮影も入れてんだ。

どんだけ働くんだよ……


ごめんねって…
話す時間がないってこと?
それとも…今日も家にいないってこと?


電話をかけてみたけど
もちろん出なくて…
 

『少しでもいいから会いたい。』


そう送ったLINEには、返事は来なかった。


S)今日は道空いてるな〜〜
直)お、ラッキーーー
E)イエイッ♪


秋田から都内に戻ってきて
帰りの車内。


S)いつもの順番でいいー?
臣)あ!Sさん!俺…っ
S)んーー?
臣)最後でいいから…
  会社、行きたい。
S)……了解。
臣)……


毎回付き合わせて申し訳ないけど
どうしても今日、♡に会いたい。


直)会社って…♡ちゃんの?
臣)はい……
直)……
臣)……


直己さんが少し考えたように口を開いた。


直)会ってどうしたいの?
臣)話したいです。
直)……
臣)俺の気持ち、ちゃんと伝えたい。
直)それは…会わないとダメなの?
臣)え…?
直)文章にして伝えるとか…
臣)文章?
直)メールとか…手紙とか…
臣)いや、直接話したいんで…
直)でも…文章だと見直せるし
  冷静にちゃんと言いたいこと
  伝えられるよ?
臣)……そうかもしれないけど…
  俺はちゃんと顔を見て話したい。
直)……そっか。
臣)…すいません。
直)いや、いいんだけどさ、
  ♡ちゃんはもしかしたら
  そっちの方がいいんじゃないかなとか
  少し思っただけ。
臣)……


メールとか…手紙?
そんなんで気持ちが伝わるのかな。

顔も見ずに自分で口にせずに
文章で…


いや、俺はやっぱり
ちゃんと会って直接伝えたい。


直)頑張れよ。
臣)はい、ありがとうございます。


直己さんは優しく笑って
車を降りていった。

順にメンバーを送って
Sさんと二人になったワゴンは
♡の会社へ向かう。


S)お、空いてた空いてた、定位置。
  よーし、到着ーーw
臣)何回もごめんね、Sさん。
S)気にしないでw
臣)ありがとう…


さっきKにLINEで聞いたら
♡の今日の撮影は21時かららしい。

それまで会社で
仕事するつもりだと思うって言ってたから
俺はKに電話した。


K『もしもし?』
臣『仕事中にごめん、俺。』
K『ああ、今帰るとこだったから
  全然いいけど…どうしたの?』
臣『♡、まだいる?』
K『うん。』
臣『俺、今、会社の前にいるんだけどさ…』
K『え!!うちの?!』
臣『うん。』
K『マジか!!』
臣『♡…連れてこれない?』
K『えっ!♡たった今降りてっちゃったよ!』
臣『え?!』
K『ご飯買いに行くって言ってた。』
臣『マジか!!』
K『うん。出てくると思うから見てて!』
臣『わかった!ありがとう!』
K『あっ…、でも…』
臣『え?』
K『えっと…♡と話したいなら
  今日じゃない方がいいかも…』
臣『なんで?』
K『……』
臣『あ!出てきた!ごめん!切る!!』

ピッ


S)あれ、♡ちゃんだよね?!
臣)うん!!
S)ちょ、臣!!バレないでよ!!
臣)わかってる!!


俺はハットを深くかぶって
車を降りた。


臣)♡!!!!!


俺が名前を呼ぶと
20Mくらい先にいる♡が立ち止まった。

周りをキョロキョロして
また歩き始める。


臣)♡!!!!!


もう一度呼ぶと
やっと♡が俺を見つけて
その場で動かなくなった。


臣)…っ


動かなくなった♡を
走って迎えに行くと、
♡は今にも泣き出しそうで…


♡)…臣…くん…?
臣)来て……
♡)…っ


手を引いて、車まで連れてきた。


臣)乗って、少しでいいから。
♡)(ふるふるっ)
臣)…っ


S)臣、早く乗って!バレたら困る!
臣)あ…っ


俺が車に乗っても、♡は動かなかった。


S)♡ちゃん、乗ってくれる?
♡)(ふるふるっ)
臣)…っ


仕方なくSさんが扉を閉めて
俺は窓を開けて♡に声をかける。


臣)♡、少しでいいから話したい。
  乗って?
♡)……乗らない。
臣)…っ
♡)……
臣)急に…来たりしてごめん。
♡)……
臣)どうしても…会いたくて…
♡)……
臣)話…、したくて…
♡)……


♡は俯いたまま…顔を上げない。


臣)こっち見て……
♡)……


ゆっくり顔を上げた♡は
相変わらず泣き出しそうな顔をしてて…

こんな窓越しじゃ遠すぎる。


目の前にいるのに…もどかしくて…


臣)今日…帰ってくる?
♡)……


♡はまた静かに俯いた。


臣)帰ってきて、頼むから。
♡)…っ
臣)お前まだ…実家にいるの?
♡)……
臣)会社、通いにくいだろ?
  帰ってこいよ。
♡)……
臣)俺が嫌なら俺が他のとこ泊まるから
  お前は帰ってきて…
♡)……
臣)本当に心配だから…頼む。
♡)…っ


何を言っても
♡は俯いたまま答えない。


しばらくすると
涙がぽろっと、頬を伝った。


臣)♡……?
♡)…っ
臣)……
♡)…っ


ぽたぽたと地面に落ちていく涙。


臣)なん…で…


俺はドアを開けて車を降りた。


S)臣…っ


バタン。


臣)♡……
♡)…っ
臣)♡…っ
♡)……


なんで…泣くんだよ……


臣)…っ


抱きしめたい…
こんなところじゃなかったら
今すぐ抱きしめてる。


♡)ひっく…、ぐすっ…
臣)なんで…泣くの……
♡)…っ


次々にこぼれる涙に
たまらなくなって

そっと手を伸ばすと


パシ…ッ


臣)…っ
♡)あ…っ、ごめ…


振り払った自分に戸惑うように
♡が俺を見上げて…

そしてまた、泣き出した。


♡)ごめ…っ、なさ…っ
臣)……
♡)ふぇぇ……っ
臣)……


もう…どうしたらいいのかわからない。


泣かせたかったわけじゃない。
こんな顔を見たかったんじゃない。

でも…泣かせてるのは俺で…


止まらない♡の涙と
もどかしさとやるせなさで

俺まで泣きそうになる。


臣)♡……
♡)……
臣)……
♡)……
臣)別れたいの…?
♡)…っ


俺の言葉に顔を上げた♡の表情を見て

俺はその情けない一言を、
死ぬほど後悔した。


♡)別れたく…なんかっ…ないもんっ
臣)…っ


また溢れ出す、大粒の涙。


♡)ど…して…そんなこと言うの…っ?
臣)…っ
♡)臣くんは…別れたいの…?
臣)そうじゃないっ!!!
♡)…っ


そんな誤解、死んでもされたくなくて
思わず大声になる。


臣)別れたいなんて
  思ってるわけねぇだろ…っ
♡)ひっ…く…


なんで俺がそんなこと思うんだよ。
思うわけねぇだろ!
なんで…
なんでわかんねぇんだよ…!!


臣)俺がいくら
  会いたい、話したいって言っても…
  これだけ拒絶されたら
♡)拒絶…してるんじゃ…ないっ
臣)…っ
♡)どうしたらいいのか…
  わかん…ないんだも…っ
  ふぇぇっ……
臣)……
♡)気持ちが…ぐちゃぐちゃで…っ
臣)……
♡)苦しくて…考えたくなくて…っ
臣)……
♡)もうやだぁっ!
臣)♡……
♡)わぁぁんっっ
臣)♡……!
♡)ふえぇっ、うぇぇんっっ!
臣)……


これじゃあ…あの日と一緒だ。

♡が泣いて出て行ったあの日と…


臣)♡、ごめん。
♡)…っ
臣)ごめん。
♡)…ひ…っく…
臣)……


ダメだ…

俺まで…泣きそうだ…


♡)もう…っ
臣)…っ
♡)こんな私…見ないで…っ
臣)えっ…
♡)…っ
臣)♡…!!


背を向けた♡は
俺の前から走っていなくなった。


臣)♡!!!!!


追いかけようとした俺の元に
走ってきたのはKだった。


K)ちょっと!はぁっ、はぁっ
  声でかいっつーの!ばか!!!
臣)…っ


Kに背中を押されて車の前まで戻った。


K)バレるでしょ!!
臣)…っ
K)こんなとこで叫ぶなっ
臣)……


Kにそう言われて
少し冷静になれた。


K)だから…
  今日はやめた方がいいって言ったの!
  もう…電話切るから…
臣)…なんで……
K)……


「今日は」って言われたって…
じゃあいつなら大丈夫なんだよ。

大丈夫な時なんてないだろ……


K)臣広にしたら…
  死ぬほど長い時間かもしれないけど
臣)……
K)もう少し一人にしてあげてよ。
臣)……
K)……
臣)時間が経てば経つほど…
  離れていきそうで…


待ってるのが怖い。
俺は…
情けないほど臆病で…


K)それでも…今は逆効果だと思う。
臣)…っ
K)……
臣)なんで?
K)……


Kの顔が曇った。


K)…いろいろあったから…
臣)色々?
K)一昨日。
臣)一昨日?……色々って何。
K)…んーー……
臣)……
K)じゃあハッキリ言うね?
臣)……
K)土曜日、あたしたち
  4人で撮影だったんだけど


あ…ロケって言ってたやつか…


K)その時にとんでもない女共がいてさ。
臣)え…?


なんだそれ…
何か…された?!


K)まぁとにかく性格がクソ悪そうな女共で。
臣)……
K)♡とかトリンドルちゃん?とかの悪口を
  ぼろくそ言ってて、
  ♡は嫌がらせとかもされてるみたいで。
臣)なんだよそれ…っ


嫌がらせ?!


K)で、そいつらが
  臣広が昔、遊んだ女だったの。
臣)……
K)……
臣)…は?
K)まぁ臣広だけじゃなくて
  隆二とかの名前も出てたけど。
臣)…っ


どういう…ことだ?


K)結構、下世話な話をしてて。
  ♡はそれをモロに聞いたわけ。
臣)…っ
K)多分…今まで我慢してたのも
  あると思うんだけど…
  泣いて泣いて大変だったの。
臣)…っ
K)撮影も相当無理して頑張ってた。
臣)……
K)だから…さ、そんなことが
  あったばっかりだから…
  タイミングが良くなかったかなって。
臣)……
K)♡のこと心配なのはわかるけど
  何かあったらあたしが連絡するし
  今はそっとしておいてやってよ。
臣)……
K)……
臣)……
K)じゃ、あたし行くね?
臣)……


Kにそう言われて…


臣)…ごめん、ありがとう。


俺は…それしか言えなかった。




ー続ー

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コメント

  1. KY より:

    なんかわからないけど自らこのページに来てしまった~~そして切なくなった笑笑 暗黒は嫌だったけど読み返すとあって良かったと思う(勝手)

    • マイコ より:

      そうそう、なんだかんだで絆深まったからさ(❁´ω`❁)ヨシとしようぜ笑

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