だぼだぼパーカー 〜short story〜

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A)なんでチョコって呼ばれてるんすか?
〇)えっ!!
  …あの、…えっと…///
A)……
〇)わた…し、ものすごく…
  鈍臭くて…おっちょこちょいで…
A)…あ、…それで…
  おっちょこちょいの「チョコ」ってこと?
〇)……ハイ///
A)あははw  かわいーなーw
〇)///
A)…でも、俺は名前で呼びたい。
〇)…っ
A)「〇〇」って…、呼んでいいですか?
〇)////


AKIRAさんにそう言われて、
もう嬉しくて恥ずかしくて

必死に頷くしか出来なかったあの日。


今でも毎日のように思い出す、
あの日のAKIRAさんの笑顔。


T)チョコちゃんおはよーー♪
〇)あ、おはようございます!!
臣)ーーっす。
〇)おはようございます!!


雨宮兄弟のお二人、もう来ちゃった!

早く準備終わらせないと。


男)チョコ〜〜!
  そっちまだか〜〜!
〇)はい!もう少しです!
男)とっととやれよ、とろくせーなー!
〇)はい!すみません!!


今日も映画撮影現場は
たくさんのスタッフが走り回っていて
大忙し。


女)チョコちゃん、昨日確認したあれは?
〇)裏口に揃ってます!
女)チョコーー!
  エキストラの衣装は?!
〇)さっき取りに行ってました!
女)あいよーー!


毎日毎日、汗だくで走り回って
そのうちみんな化粧もしなくなる。

でも私は…
それだけは絶対嫌で。

毎日身だしなみは気をつけてる。


臣)チョコさん、すみません。
〇)はい!!


名前を呼ばれて振り返ると、

ひぃっ!!

雨宮広斗!!

…じゃ、なかった。登坂さん。


臣)俺のバングル知りません?
〇)は、はい?
臣)昨日の撮影で外してから
  どこいったかわかんなくて。
〇)はっ!そうなんですね!
  探しておきます!!
  必ず見つけますのでご安心を!!
臣)え、マジっすか…
  あざっす…


だってこの人、怖いんだもん!

なんか…役のせいなのかもしれないけど…
逆らったらひざ蹴り顔面に入れられそうで…


T)こら〜〜登坂っちぃ〜〜
  チョコちゃんの仕事増やすなよ〜〜
臣)あ、すんません。
T)ごめんね、チョコちゃん。
〇)あ、いえっ!!


TAKAHIROさんは
いつもスタッフにも気遣ってくれる
ムードメーカー。


T)あ、AKIRAさん!
  おはようございまーす!
A)おう!おはよ!
〇)…っ////


その名前だけで、
胸がドキドキ…音を立て始める。


A)〇〇…、おはよ。
〇)おはっ、おはっ…よう…ございます!///


挨拶するだけでも、緊張。


T)えー、チョコちゃんの名前、
  〇〇っていうの?
  知らなかった!
〇)あ、はい…///
臣)そーなんだ。
T)なんでチョコちゃん?
臣)いっつもチョコチョコしてるから?
〇)えっ!


私、チョコチョコしてる?!


T)じゃあ俺も〇〇って呼んじゃおうかな〜


TAKAHIROさんがそう言った時だった。


A)ダーメ。


AKIRAさんがにっこり笑って…


〇)////


ああ…

私、今絶対赤面してる。


やだ、恥ずかしい。


〇)向こうの準備してきます!!///


逃げるように、その場を後にした。


〇)はぁっ、はぁ…っ、///


「ダーメ。」


それって…


名前で呼んでいいのは…俺だけ…とか…
そういう…独占欲…だったり…


〇)するわけないじゃんっ!
  バカバカッ!///


一瞬、自惚れかけて

慌ててその考えを抹消する。


〇)はぁ…///


本当は…

演者さんたちが「チョコちゃん」なんて
あだ名を覚えてくれてる事だけでも
ありがたすぎるのに…

AKIRAさんはちゃんといつも
名前で呼んでくれて…


それに…


「〇〇って…、呼んでいいですか?」


そう聞いてくれたあの日から、
なぜか敬語もなくなって…

フレンドリーに話しかけてくれるし
呼び捨てで呼んでくれるし…


〇)////


その度に私は舞い上がって

どこかへ飛んでいきそうになる。


男)チョコ〜!!
  弁当届いたぞーー!!並べてくれー!!
〇)はいっっ!!!


その後も夜まで走り回って…

今日の撮影は夜中までだから
少しの隙間時間を見つけて仮眠を取る。


疲れ切ってる身体は
どんな場所でもすぐに眠りに落ちる。



ああ…


ほわほわほわ…


ここは、雲の上…?


ほわほわ、柔らかくって…
暖かくて…


「……いつも、ありがとう。」


そんな声が優しく届いて…


どこから聞こえたんだろう。


雲の上…?

あ、違うか。
だって私が今、雲の上を歩いてるんだもん。


ああ、この匂い。

大好きな…あの人の…


〇)…………ん…、


どれくらい寝たのかわからない。

目を覚ますと、肩にかけられている
見慣れないパーカー。


自分のじゃない。


〇)……


暖かいそれをぎゅっと握って、
頭を起こすと…


A)…おはよ。
〇)……


隣には、にっこり笑うAKIRAさんがいた。


〇)……


あれ…?

寝起きで、理解力が…


A)すっげぇ幸せそうな顔して寝てたw
〇)……
A)良い夢でも、見た?
〇)……


私…

えっと…


どうしてAKIRAさんが…ここに…?


次第にハッキリしてくる頭。


〇)////


わ、わ、どうしよう。

え、なんで?


A)むにゃむにゃ寝言言ってたよw
〇)えっ!


私ってば…嘘でしょ?!


〇)変なこと、言ってましたか?!///


パニックになってそう聞き返すと、


A)AKIRAさん、大好きーーーって。
〇)?!!!!


う、嘘でしょ!!???


〇)////


バレた…!!

私の気持ち、バレちゃった!!


その事実に、一気に顔が熱くなる。

恥ずかしい…
どうしよう!!!


A)あ、…っと、ごめん、嘘…///
〇)えっ!??
A)いや、…冗談、///
〇)////


え、嘘なの?

冗談なの?


私、眠りながら
本音を寝言で言っちゃってたんじゃないの?


A)変な冗談言って、ごめん///
〇)////


なんか、気恥ずかしい。


AKIRAさんは冗談言っただけなのに
私が変なリアクションしたせいで…

きっと今も顔は真っ赤だし…

消えたい///


T)どああああ!さっみぃぃーー!!


バタン!!!


私たちのもじもじした空気を
盛大にぶち壊してくれたのは…


臣)手、凍える!寒すぎ!!
T)あ!チョコちゃんだーー!
  あっためてーーー!♡


外での撮影を終えて戻って来た
雨宮兄弟だった。


A)……はぁ。
T)え、なんすかAKIRAさん、そのため息。
A)いや、なんでも…
T)チョコちゃーん!
  手ぇ触らせて〜〜!
  あーー!あったけ〜〜♡


TAKAHIROさんが深い意味はなく、
私の手を握ると…


A)…っ


AKIRAさんが間に入って、
TAKAHIROさんの手を握って…


T)え…?
A)……


見つめ合う、琥珀と雅貴。

なんだろう、この画。


T)…俺、チョコちゃんがいいっす…
A)俺の方があったかい。
T)……
A)……
T)じゃああっためてください。


そう言って抱き合う二人に、


臣)ぶはっっwww


広斗が役では見せないような爆笑をした。


〇)……//


私がそろそろ仕事に戻ろうと準備してると…


臣)あれ、それAKIRAさんのパーカー?
〇)えっ…


あ、そういえば。
寝てる間に私の肩にかかってたパーカー。

後ろを振り返ると…


A)寒いから着てなよ。


そう言って笑ってくれるAKIRAさんがいた。


〇)////


羽織ってただけのそれに、腕を通して…


〇)…あり…がとう…ございますっ////


精一杯のお礼を伝えて、私は部屋を出た。


バタン。


臣)チョコさん、めっちゃ真っ赤。
T)AKIRAさんのこと好きなんじゃない?
臣)ですよね。
A)////
T)……ん?
臣)……
T)…もしかして…
臣)え……
T)AKIRAさんも…好き…なんすか?//
A)////
臣)え、付き合ってるんすか?//
A)いや、違う、///
T)……
臣)……
T)AKIRAさんのめちゃくちゃデカイ服、
  ダボダボで着てましたね。
臣)可愛かったな…
A)……うん///
T)こんなAKIRAさん、初めて見た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日。


__ガチャッ


〇)あ。


頼まれてた登坂さんのバングル。

渡そうと控え室のドアを開けたら、
AKIRAさんもいて…


〇)……///


それだけで、一気に緊張してしまう。


T)あ、チョコちゃんだー♡


お弁当を頬張りながらTAKAHIROさんが
ピラピラと手を振ってくれている。


〇)お疲れさまです。
  あ、あの…登坂さん、コレ…。
臣)おわ!バングル!!
  良かった〜〜〜〜!!
A)ん?何それ。
臣)あ、俺がなくしちゃって。
T)チョコちゃんよく見つけてくれたね!
〇)はい。


めちゃめちゃ必死に探したもん…


A)登坂ーーー
  お前スタッフさんの仕事増やすなよ。
T)あははw
  俺と同じこと言われてるw
臣)すんません…//


それからTAKAHIROさんが
ニヤニヤ私を見て…


T)それ、彼カジみたいだよね、
  かわいーー♡


そう言った。


A)彼カジ…?
T)彼氏の服着てる女の子のことですよ。
  AKIRAさんのパーカー着てる
  チョコちゃん、かわいーなーって。
〇)…っ!!


昨日借りてから、
嬉しすぎて今日もずっと着てる
このパーカー。


臣)あげたんすか?
A)いや、あげてないけど…
〇)!!!!


もらったつもりじゃなかったけど、
図々しく今日も着てた自分を反省。


〇)ごめんなさい!!


慌てて脱いで返そうとすると…


A)あ、いいっていいって。
  着てて。
〇)えっ…
A)…ん、なんか…可愛いから…
〇)えっ?!///
T)俺の服着てて俺の彼女みたいで
  なんか可愛くて萌え〜〜♡だから
  着てていいよだって。
A)変な訳をするな!///
臣)あはははw
〇)////


恥ずかしくて、
どうしていいのかわからなくて…

オロオロしていると
AKIRAさんの手が、脱ぎ掛けのパーカーに
スッと伸びてきた。


A)ん、着てて。
〇)……ハイ///


もう一度、着せられた。


ドキドキ…

ドキドキ…


どうしよう、嬉しくて、口元が緩む。


T)チョコちゃん、お昼はもう取ったの?
〇)あ、これからです。
T)お!一緒に食べようよ!
〇)えええっ!恐れ多いです!!


演者さんたちと一緒に食べるなんて!!


〇)私は外で食べるんで…それでは!


そう言って、背中を向けると…

ぐるんっっ


後ろから腕を掴まれて、一回転。


A)一緒にここで食べようよ。
〇)////


そんなAKIRAさんの笑顔に
逆らえるわけもなく、

私は自分のお弁当を取りに行った。


T)うおーーー!!
  何それ!うまそーーー!!
〇)え…っ
臣)自分で作ったんすか?
〇)あ、はい…//
T)すっげーーー!!
〇)……///


大したお弁当じゃないのに
そんなにマジマジ見られると、恥ずかしい。


T)AKIRAさんの分も
  作ってきてあげてよ!
〇)えっ?!!


突然のその言葉に、目を見開いてしまう。


A)は?!!///


もちろんAKIRAさんもびっくりしてて…


T)だって…食べたくないっすか?
  チョコちゃんの手作り弁当。
A)…っ///
臣)……俺、食いてぇ。
T)お前はいいのっ!
  (空気を読みなさいっ!)
臣)……ちぇっ。
T)一人分も二人分も一緒でしょ?
  うちの主役に、作ってきてあげてよー♡
〇)えっと…///


私なんかが作ったお弁当を…?!

脳内パニック。


T)毎日仕入れの弁当じゃ飽きるもん。
  ね、AKIRAさん。
A)……うん…、///


AKIRAさんが少し申し訳なさそうに私を見て…


〇)////


私はドキドキしながら、
パニックになった勢いで言ってみた。


〇)わた、わたし…っ、なんかので
  よければ…
  作ってきますっ!///
A)えっ!!……ほんと…に?
〇)一人分も二人分も一緒ですから!///
A)////
〇)味は保証しませんが!///
A)ええと…じゃあ…、食べたいです…///
〇)……ハイ///


そんな私たちのやりとりを
雨宮兄弟がニヤニヤしながら見てて…


もうその後のお弁当の味は、覚えてない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それからも過密スケジュールで
撮影は続いて…


ある日の朝。


A)……クソッッ!!


ダン!!!!


〇)…っ


誰もいない倉庫裏で…
壁を殴っているAKIRAさんを見つけた。


話しかけちゃいけないような気がして
私はすぐにその場を離れたけど…


今日は撮影が上手くいかなくて、
早朝から何回もテイクを重ねて

演者さんたちもスタッフも
疲れきってるんだって

あとから先輩に聞いた。


〇)……


AKIRAさん…

きっと一番疲れてるであろう人。


なのに上手くいかないことがあっても
それが例えスタッフの落ち度であっても

絶対周りを責めたりしないし

いつも笑顔で…


〇)……


でも本当は
抱えきれない何かと
闘っていたりするのかな。


何か力になりたい。

私にできることはないんだろうか。


でも。


一スタッフでしかない
おっちょこちょいな私に
何かできることなんて、あるはずないのに。

私、バカだな。


〇)はぁ…、


作ってきたお弁当を、渡せる雰囲気でもないし…

どうしようかなと思っていたら…


男)ふざけんな!!
  お前ら、ほんっと使えねぇな!!!


廊下から聞こえてきた、怒鳴り声。


女)本当に…ごめんなさいっ…
男)申し訳…ありませんでした…


怒られているのは…
うちのチームの新人二人だ。


男)謝りゃいいと思ってんのか?
  お前らほんと足手まといなんだよ!
女)…っ
男)…っ


泣きそうになりながら
必死に頭を下げ続ける二人。

私は慌てて駆け寄った。


〇)申し訳ありませんでした!!
  すべて、私の責任です!!
男)ああ?
〇)本当に申し訳ありません!!
男)ああ、こいつらお前の下の奴らか。
  おっちょこちょいな奴が教えるから
  無能な人間しか育たねぇんじゃねぇの?
〇)はい、すみません。
  ご迷惑おかけして申し訳ありません!


必死に謝罪すると、
男の人は言いたいだけの文句をぶちまけて
外に出て行った。


女)〇〇さん…っ
男)僕たちのせいで…すみません!


今度は二人が私に頭を下げるから、
私は慌ててそれを制止した。


〇)やめてやめて、大丈夫だからw


顔を上げた二人は
やっぱり泣きそうな顔をしていて…


〇)あのね、二人がいつも
  すごく頑張ってくれてること、
  本当に感謝してるの。
女)…っ
〇)いつも一生懸命走り回って…
  変更内容にも誰よりも早く対応してくれて
  休憩もろくに取らずに
  準備してくれてるでしょ…?
男)…っ


全部見てるから、知ってる。

二人がどれだけ頑張ってるか。


〇)二人の頑張りに助けられてること、
  本当にたくさんあるんだよ?
女)…うう…っ、ぐす…っ
〇)スケジュールがハードだし…
  みんなミスも出てきたりするかも
  しれないけど…
男)…っ
〇)何かあったらフォローするから!
  残り二週間、一緒に頑張ろう?
男)…ありがとう…ございます…っ


この現場に来なきゃよかったなんて
絶対思わせたくない。

体調を崩して途中で辞めていく子も多いけど
できれば最後まで一緒にやり切りたいから…











それから廊下の備品を片付けて、
控え室のドアを開けると…


A)あっ…
〇)あっ…


少し疲れた顔で、椅子に座ってる
AKIRAさん。


〇)お疲れ…さまです。
A)お疲れさま。


それ以上、何も言えなくて…

さっき届いたお弁当を、テーブルに並べていく。


A)良い先輩だね、〇〇。


優しい声が、背中から聞こえた。


〇)え…?


そっと振り向くと…


A)あの子たち、
  先月辞めちゃったスタッフの代わりで
  穴埋めで来た子たちでしょ?
〇)あ、はい。うちの新人で…


さっきの、聞こえてたんだ…


てゆーか…
AKIRAさん、すごい。

スタッフのこと、そこまで見てくれてるんだ…


A)みんな疲れて…ピリピリしてるから…
  あんな言い方されちゃって
  不憫だったけど…
〇)……
A)〇〇がああ言ってあげてるのが聞こえて
  ほっとした。
〇)……


AKIRAさんの優しい表情に
ぽわーーん…と見惚れてると…


A)わ、危ないっ!


私の手から落ちそうになったお弁当を
AKIRAさんがキャッチしてくれた。


A)はははw
〇)……すみません//


AKIRAさんはそのまま…
お弁当を並べるのを手伝ってくれて…


A)〇〇は…いつも…一生懸命頑張ってて…
  そんな姿見てると、
  俺も勇気もらえるんだよね。
〇)…っ


AKIRAさんの優しい口調に
耳までほわほわして…

私は気付けば動きが止まってた。


A)俺から見てたら
  全然おっちょこちょいなんかじゃない。
〇)……
A)頑張り屋さんだし…
  頼もしい先輩、だよ。
  …って、さっきの子たちも思ってるよ、
  きっと。
〇)……///


穏やかに話してくれる
AKIRAさんの言葉が、

スーーーッと、胸に溶けていく。


〇)私、自分がおっちょこちょいだから…
  ミスしちゃった時のショックが
  人一倍、わかるんです…
A)え…?


「お前はほんと使えない。」
「お前みたいな奴、いない方がマシだ。」

そんな言葉、何度言われてきたかわからない。


でも…


〇)あの子たちは、本当に一生懸命だし…
  一つのミスで、今までの自分を
  全部否定するような気持ちに
  なってほしくなくて…
A)……
〇)結果が全て、って…
  そう言われるかもしれないけど、でも。
  失敗や間違いのせいで、
  自分が今まで積み重ねてきた努力や結果が
  消えてゼロになるわけじゃないから。
A)……
〇)だから…、…っ


__言葉の途中。


一瞬、何が起きたかわからなかった。


〇)…っ


脳より先に理解したのは、
私の心臓。


バクバクとうるさく音を鳴らして…

今。

AKIRAさんに抱きしめられてるって、
そう教えてくれた。


〇)////


顔に一気に集まる熱。


身体中が、心臓になったみたい。


大きな身体に…
あたたかい胸に…

ぎゅっと、抱きしめられて。


〇)……AKI…RA…さん…?///


震える声で、

名前を呼ぶだけで、精一杯。


〇)……あ…の…、
A)…うん……
〇)……
A)少しだけ…、充電…させて…
〇)……


静かに返ってきた言葉に

それ以上返す言葉はない。


抑えようと思っても抑えれらない
心臓のバクバクを

必死にぎゅっと閉じ込めながら

AKIRAさんの腕の中で
AKIRAさんの匂いと温度に、包まれてた。


……ああ、ダメ。

やっぱり、

ドキドキで死んじゃいそう////


A)失敗しても…間違えても…
〇)え…?
A)努力が消えて…
  なくなるわけじゃない、か…。
〇)……


AKIRAさんが静かにそう呟いた瞬間、

ドアがバーン!と開いて…


岩)腹減ったぁぁぁ!!
健)今なら弁当2個いけるわ!!


A)!!!
〇)!!!


慌てて離れた、私たち。


A)////
〇)////


思わず顔を見合わせて、俯く。


残りのお弁当をパパッと並べ終えた
AKIRAさんの袖口を

小さく握って…


〇)あの…///


勇気を出して、伝えた。


〇)お弁当、作って…きました…///


ガヤガヤ賑やかになる控え室の中で
届いたかわからない私の声。


ドキドキしながら
そっと顔を見上げると、


A)食べたい…///


すっごく嬉しそうに
くしゃっと笑ってくれるその笑顔に、


〇)////


また心臓が、壊れそうになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私のお弁当を
美味しい美味しいって

本当に嬉しそうに食べてくれるAKIRAさんに

それからも何度かお弁当を渡して。


でもあっという間に二週間。


今日は、AKIRAさんがクランクアップの日。


大きな花束をもらって
みんなに笑顔で挨拶をして…

撮影はまだ少し残ってるけど、
AKIRAさんはもう現場に来ないんだって思うと

すごく寂しくて…


でも、
本当に過酷なスケジュールで
お疲れさまでしたっていう気持ちもあって


もういろんな感情がこみ上げてきた私は
裏で一人、泣いてた。


〇)ぐす…っ、ふぇ…っ


大好きな人。


一緒にいればいるほど惹かれて…

どんどん好きになっていった。


立場が違いすぎる私にも
AKIRAさんは本当にいつも優しくて…


〇)ぐすっ…


ぶかぶかの袖口で
涙を拭って、ふと気付いた。


〇)これも…返さなくちゃ…


毎日大切に着てた、AKIRAさんのパーカー。

これを着てるだけで、
なんだか嬉しくなって
仕事も頑張れたの。


〇)…っ


もう、今日で最後。

会えなくなるんだよね。


〇)ぐすっ…


そう思うと、またこみあげてくる涙。


こんなに好きになっちゃって、
私、どうしたらいいんだろう。


__ガチャッ。


ドアの開く音に、慌てて涙を拭いて
後ろを振り返ると…


〇)…っ


バタン。


そこに立っていたのは…


A)なーんで泣いてんのw


いつものように優しく笑う、
AKIRAさんだった。


〇)…っ


ダメ、また泣いちゃう。


涙を見られたくなくて、
私は急いで背中を向けた。


A)〇〇…?


そんな私に…

ゆっくり近付いてくる優しい声と、足音。


〇)…っ


返事が出来ずに、顔を覆っていると…


ふわり。


後ろから、包み込まれた。


〇)…っ


何がどうなったのか一瞬わからなくて、

それを私に教えてくれたのは

また脳よりも先に暴れ出した心臓だった。


ドキン…ッ

ドキン…ッ


〇)////


振り向けずに硬直している私を

優しく包み込んでくれる大きな腕。


A)〇〇……
〇)////


私の名前を呼ぶ、

溶けそうに甘い…優しい声。


A)今日まで、本当にありがとう。
〇)…っ


その言葉に、また視界が滲んでくる。


A)〇〇がいたから、俺…頑張れた。
〇)……そんな…っ…、私なんて…っ
A)黙って…聞いて…
〇)……///


抱きしめられたまま
私は言葉を飲み込んだ。


A)この間も言ったけど…
  俺…さ、〇〇が頑張ってる姿に
  ほんとに勇気もらったんだよ。
〇)…っ
A)俺らより忙しくてハードなのに…
  それでもいつも笑顔で頑張ってくれてて…
〇)……
A)弱音も文句も吐かずに
  いつも一生懸命で…
〇)……
A)俺の心が折れそうな時も、
  〇〇の言葉ですごく救われたんだ。
〇)……


穏やかにそう話す、AKIRAさん。


A)……これは、顔見て言いたい。


AKIRAさんの両手が
優しく私の肩に触れて…

背の高いAKIRAさんを、そっと見上げると…


A)今日まで…
  本当に本当に、ありがとう。


過去一甘い、とびっきりの笑顔で
そう言われた。


〇)////


眩しすぎて、見ていられなくて
思わず俯くと、


A)で、〇〇はなんで一人で泣いてたの…?


甘い声で、優しく覗き込むように
私の頬に触れた大きな手。


〇)…っ///


その手が、優しくほっぺを
なでなでしてる。


A)ん…?
〇)////


優しい声色に、溶けてしまいそう。


何も答えられない私は、
またAKIRAさんの腕の中に閉じ込められて…


A)〇〇はさ、もっと甘えてよ…
〇)…っ


思いがけない、言葉。


A)いつも一人で頑張ってて…
  周りのこと助けてあげて、守ってあげて…
〇)……
A)ずっとそれじゃ、疲れちゃうよ…
〇)…え…?
A)たまには誰かに…
  甘えて、頼って、守ってもらいなよ。
〇)…っ


そんなことを言われても
今までこうして生きてきたから
全然イメージできなくて…

また返事が出来ない私。


しばらくすると…


A)あーー、…今のは…やっぱりダメ。
〇)え…?


AKIRAさんの困ったような声に
腕の中からそっとその顔を見上げれば…


A)「誰かに」…じゃ、なくて…
〇)……
A)甘えたり、頼ったりするなら…
〇)……
A)……俺に、して…///


照れくさそうに、そう言われて…


〇)////


焼けるように、熱くなる頬。


A)……何か…あったら…
  俺が、守るから…
〇)…っ
A)俺に、甘えて…
〇)////


抱きしめられて、
今度は頭までなでなでされて…

鼻血を出しそうになりながらも…


私は一生懸命、言葉を紡いだ。


〇)……泣いて…たのは…、
A)……
〇)AKIRAさんに…会えなく…なるのが…
  さみしいな、って…


言葉に出すと、
思っていたより恥ずかしくて…


〇)////


抱きしめられているのをいいことに、
そのままAKIRAさんの胸に
ぐりぐりと顔を埋めた。


〇)ううう…///


恥ずかしいよぅ……


A)////


AKIRAさんの腕は、
より一層私をぎゅっと抱きしめてくれて…


〇)…これ、返したく…ない…///
A)え…?


そんな我儘が、口からこぼれた。

AKIRAさんに借りてる
だぼだぼの大きなパーカー。


A)欲しいの…?これ…


AKIRAさんが私の頭にポンと手を置いて…


〇)……///


私はコクリと頷いた。


〇)だって…///
A)……
〇)AKIRAさんが…ぎゅって…
  してくれた…パーカーだもん…///
A)…っ
〇)返したく…、ないです///
A)////


これを着てると、いつも…

AKIRAさんに包まれてるみたいだった。

だから…


A)いいよ、あげる。
〇)…っ///


嬉しくて、顔を上げると…


A)でも、


また頬を包む、大きな手。

今度は顔全体を、両手で包み込まれた。


A)なんでもう会えないことに
  なってんの…?
〇)……えっ…
A)今日で会えなくなるとか、
  俺…、無理なんだけど…
〇)////


真っ直ぐに、重なる視線。


A)だって…
  〇〇の弁当もう食えなくなるとか、
  無理だしっ…///
〇)////


その言い方が、少し可愛くて…

胸がキュウって音を立てた。


A)ああ、…ごめん、違うな。
〇)……え…?


またAKIRAさんが、
私をじっと見つめて…


A)弁当も…だけど…、
  〇〇の笑顔をもう見れなくなるのが
  一番、無理。
〇)…っ
A)ほんと、無理…。
〇)////


切なそうに、そう言われて。


A)だから…


ドキッ


その瞳に、男の色気を感じて
思わず息を飲む。


A)これからも…会ってくれる?俺と。
〇)////


嬉しすぎて…

言葉が、出てこない。


A)これ着てる時じゃなくたって…
〇)…っ
A)いつだって…
  抱きしめたいんだけど…
〇)////
A)////


ドキン…

ドキン…


見つめ合う瞳に、言葉が出てこなくて。


でも…

吸い込まれそうにじっと見つめていると…


言葉なんてなくても、
もう気持ちは通じてる気がして…


ただただ、見つめる視線に
想いを込める。


A)あーー、…ちょ、ヤバイ…///


AKIRAさんがそう言って
ふと視線を逸らしたその時だった。


ガターン!!!


健)いってぇ!!!
臣)ばっか!岩ちゃん重いから!!
岩)俺じゃねーし!
  TAKAHIROさんだし!!
T)だって見えねーんだもん!!


A)……
〇)……


将棋倒しになって
気まずそうに私たちを見上げる4人。


A)お前ら、何やってんのかな…?w
T)…えへへ……//


ぺろっと舌を出すTAKAHIROさん。


A)えへへじゃねーよ!///


怒るAKIRAさんに、
開き直るTAKAHIROさん。


T)だって!!結末を見届けなきゃ
  気になって気になって!
臣)うん。
A)馬鹿野郎!//
T)で、結局両思いなんですよね?
岩)ですよね、今の流れだと。
健)俺らが失敗せんかったら
  絶対チューしてたで。
臣)だよな。俺らめっちゃ邪魔者。
T)じゃあもう俺らの前で
  チューしてもらお。
岩)あはははw
臣)それいい!!
健)お願いします!AKIRAさん!!
A)はぁ?!!!
〇)////


急な展開に、
困ったように私を見つめるAKIRAさん。

でも、そんな姿さえ愛しくて、
私はニッコリ笑って
AKIRAさんの手を小さく握った。


A)えっ、いいの?!///
〇)えっ…


はっ!!

そういう意味!?////


T)チュー!チュー!♡
健)チュー!チュー!♡


私がオロオロしていると…

ゆっくり近付いてきて、

ほっぺに優しく触れた、柔らかい唇。


〇)////


ボンッ!!!

と、顔に火がついたみたい。


臣)ほっぺかよ…
岩)やり直しじゃないっすか、コレ。
T)そんなのキスじゃない!
健)そうや!


好き勝手言う人たちを
ちらっと横目で見て

その次に、私を見て。


色っぽく目を細めて


A)こっちは二人の時ね、


そう言って
私の唇にそっと指で触れて、笑った。


〇)////





ーendー

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コメント

  1. 明日花 より:

    AKIRAさんの話もいいですね♪

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